笠松卓
俺達の攻撃がまともに直撃したのは良かったが、その後が問題だった。
「何で攻撃しても、ほんのちょっとしか壊れないのよ」
「それはね中堂さん、アジトが大きすぎるからだよ」
「じゃあ、この作戦は失敗って事」
「いや、違いますよ中堂さん。大失敗です。見てください、アジトから大量のシャドンドが出てきてるでしょう」
アジトからシャドンドが大量に出てきていた。しかも、こっちに向かって。
「ちょっと本当にやばいじゃない。早く逃げないと」
「そうね、早く逃げましょう」
そう言って、ある人物だけは逃げ出した。
「僕は、ここに残ります」
「何言ってるの笠松」
ちなみに笠松と中堂さんの立ち位置は、どんどん遠ざかっていて、今50メートルくらいだ。
「僕が時間稼ぎしている間に、みんなは逃げて」
「笠松いっしょに、この世界から出るって約束したじゃない。どうして、こんな所で立ち止まってる場合じゃない」
いや、あなたは踏み込みすぎだろ。笠松を説得するなら、もっと近くででしょう。なんで10メートル以上離れてんの。感動シーンじゃなくなるでしょう。
「ふっふふっふう」
ついに何を言ってるか聞こえない所まできた。だが俺は笠松に大声でしゃべりかけた。
「笠松、お前の事は絶対に忘れないから」
もう、見捨てているけどね。俺のも感動シーンの要素は全くなかった。
僕の名前は笠松卓デストデレクションの一員だ。僕は今、危機的状況に陥っている。僕は、よくアニメや漫画や小説を見ている。だからアニメのセリフみたいな事を言ってしまいたくなる。いや、言ってしまった。だから僕は危機的状況に陥っている。まあ、自業自得だ。でもどうしても「僕が時間を稼ぐから、みんなは逃げて」と言いたかったんだもん。だってピンチで追い込まれた時にヒーローがそうしているところを見ると一度でいいから言ってみたいと思うじゃない。それでも、みんな酷いよ。こういうときは(だめだ。だめだ)と最後までとめるでしょう。でも、僕の事を簡単に見捨てて言っただもん。
「ふん、お前一人残ったところで何ができる」
「色々できる」
「色々ってなんだよ。教えろや」
「生憎僕は敵に情けはかけない派でね」
僕は敵に情けをかけない。たしかに、そういう情けをかけるヒーローもかっこいいけど、結局裏切られるでしょう。だから情けをかけずに躊躇なく攻撃する。
「むかつくやろうだな。でも、この状況を考えろ。お前今数えきれないほどの敵に囲まれてるぞ」
「それがどうした。むしろ、そっちの方がカッコイイだろ。敵に囲まれても全く動じないで戦うヒーロー方が」
「さっきから、ヒーロー、ヒーローうるせいぞ。ヒーローなんて現実にいるわけないだろう」
僕はシャドンドの言葉にそうとう腹がたった。
「なら、僕がヒーローになってやる。ヒーローになって、みんなを助けてやる」
これも僕が言ってみたかったセリフの一つだ。
「できるもんならやってみろ。まあ、無理だろうけどな」
「それは、やってみないと分からないだろう」
ちなみに、これも言ってみたかったセリフの一つね。
「無理だと言ったら無理だ。お前の内緒話を絶対にはかせてやる」
何言ってんだコイツ。あ、あの事か。(あの事とは笠松が色々できるって言った事である)
「うりゃーうりゃーうんぎゃー」
シャドンドはそう言いながら僕に襲いかかってきた。てか最後のは赤ちゃんのマネか。
「笠松流奥義、千万槍刺し」
とは言っても応戦しないわけにもいかない。僕は、すかさず反撃した。
「く、やるな。ではこれでどうだ」
そう言ってシャドンドは妙な動きを始めた。
「ふん、そんな脅しになんてのるか」
「くそ、ばれたか。何も秘策も作戦もない事が」
こいつバカなの。いや、大バカだ。
「ふざけやがって、笠松流奥義、千本槍刺し」
今度は、まともにシャドンドに当たった。
「くそー、秘密を聞き出せなかった」
そう言いながらシャドンドは消滅した。
「いやーおみごと、おみごと」
「何だと」
「あなた、おかしいとは思いませんでしたか。こんなにシャオドンドがいるのに一固体しか攻撃してこないのが」
へえーシャドンドって一固体って数え方なんだ。
「それはですね。さっきのシャドンドに手出し無用と俺達に言ってきたからですよ」
「ふん、だからどうした。一固体だろうが二固体だろうが数で僕に勝てると思うなよ」
これも言ってみたセルフセレクション。
「生意気な、すぐにしゃべれなくしてやるよ。お前らやれ」
リーダーらしきシャドンドの一声で一斉にシャドンドが僕に襲いかかってきた。
「笠松流奥義、円形刺し」
僕は一生懸命に反撃したが、とうとう倒れしまった。
「ふん、ここまでのようだな」
シャドンドが俺にとどめを刺そうとした。その時
「ふおー」
一斉にシャドンドが倒れ始めた。
「何だ。お前いったい何をした」
「僕は何もしていない」
僕も何がおきたか理解できなかった。
「サーレイン」
「サレイン砲」
「六林第三の奥義、早斬り」
「扇風斬」
そこで僕は何がおきたのか理解した。
「敵に背を向けるとは随分余裕だなあ。まあ、背中があるかしらねえけど」
中堂さん、やっぱり口悪いなあ。俺は六林六郎だよ。
「助けにきたぞ笠松」
「みんなー」
やっぱりこうだよね。これが絆ってやつ。
「どうもありがとう。おとりになってくれて」
やっぱり違った。
「名づけて笠松おとり作戦。立案者は今回も六林六郎です」
「やっぱりか、絶対に許さねえぞ六林」
「そう怒らないでくさい。今回の作戦は笠松さんがピンチだったから立てたんですからねえ」
「その言葉信じてもいいんだなー六林」
「はい、いいですよ。元々笠松さんがピンチにおちいる事は予想できていましたから」
「おのれ六林絶対に許さねえ」
「許さないってピンチにおちいったのは自分のせいでしょう」
「てめえら、さっきから俺の事を無視してるだろう」
「うるせええ」
みんなでそう言ってシャドンドを消滅させた。
「笠松さん、俺どうしても言っておきたい事が」
「なんだよ」
「もう今回みたいな事はしないでくださいね。仲間を失うのはつらいですから」
「六林、お前そんなに仲間の事思っていたのか」
僕は本当に泣きそうなった。
「あたりまえですよ。一人でもかけたら俺の作戦に不具合が生じてしまいますから。そしたら、みんな俺に責任おしつけてくれますよね。俺そんな事されたら、とてもつらいから」
「結局自分のためか」
「あたりまえです。俺は正義感で動く人間ではありませんから」
「じゃあ、もう帰れ」
「ええ、帰りますよ。方法が分かったら」
こいつとは話しになれねえ。結局現実ってこういうものかなあ。なんだか、この一件は後味が悪いものとなった。最後の語り手は笠松卓です。




