プロローグ
人が突然いなくなる。事件が起きたのは一ヶ月前の事だった
日頃見ている世界は、現実なのだろうか、それとも非現実なのだろうか俺はそんな事を考えていた。
一ヶ月前に起きた事件は不可解な事ばかりであった。あの事件が起きた後、消えていなくなる人がどんどん増えて大混乱していた。消えると言ってもだれも消えていなくなる所を見たわけではないが。もちろん警察が何もしていないわけではない、全力で事件にあたっている。しかし、一向に事件の手がかりを掴む事ができない。証拠品も消えていった人の指紋も髪の毛も目撃証言もでてこないのだ。
この不可解な事件が始まったのは一ヶ月前だった。一ヶ月前は4月8日で今日は5月15日だ。つまり37日経っていた。
被害者は、どんどん増えている。今現在の被害者数は55人だ。このところ毎日のように事件は起きていてみんな外に出られない状況だ。
恐怖で動けない、でもこの不可解な事件は収まる様子はない。それどころか増え続ける一方だ。最初は一日一件だったのに4月8日以降は2件以上起こる。さらに最近は朝でも昼でも起きる。まさに逃げられないといった状況だ。
起こる場所もさまざまである。関連性などない。
どうして人が消えるんだろう、誰が誘拐しているのだろうか、だとしたら犯人は同一人物で間違いないだろう。俺はそんな事を考えていた、もちろん事件を解決したいからだ。
俺の名前は、六林六郎、よく苗字と名前がにているねと言われる。幸い俺と関わり合いのある人は一人も消えていない。不幸中の幸いと言うやだろうか。でも俺も俺と関わり合いがある人もいつ消えていなくなってしまうか分からない。早くこの事件を解決しなければと思った俺は、外を出歩いて事件の調査を行っている。この行為は決して正義感などからではない、人が消えていなくなってしまうと日常がおかしくなってしまう。なので俺は事件を調査している。俺意外に外にいるのは警察ぐらいだ。
4月8日の事件から2ヶ月たった。しかし、今もまだ被害者は増え続けている。そして、今だ一向に手がかりが掴めない。だれも信用できない、内部崩壊も起こっている。俺も他人事ではない。もう一ヶ月知り合いにあっていない。学校もずっと休みだ、ていうかあってもだれも行かない。教師も生徒もだれも何もしようとしない、生きる希望を失っている。どこへ行っても店は開いていない。だから食べ物ない
俺は一ヶ月粘ったけどもう限界だ、生きる事もできなくなりそうだ。どんどん悪い方向に向かっていく、けれど良い事は一つも起こらない。いや違うかもしれない、良い事があっても、それすらも悪い事に思えてしまう。俺の周りの人間もそうだ、生きる気力を失っている。でも被害はでていない、しかし、いつ人が消えていなくなってしまうのかわからない。いっそ消えてしまったほうがマシだと言う人もたくさんいる。でも俺はそうは思わない、この事件を解決したいと思っている。警察も諦めて事件の捜査を打ち切ったけど俺は諦めない。絶対に解決してみせる。俺は今も外にいて事件の捜査し続けている。捜査を怠った日なんて一度もない。みんながもう無理だと諦めたときも、警察が捜査を打ち切ったときも、テレビが流れなくなったときも。
しかし、悲劇は突然起きた。俺は家族をみんな失った。残されたのは俺だけ。俺は絶望した、生きる気力を失った、絶対にこの事件を解決してやると意気込んでいた自分がバカらしく思えた、事件を捜査する事もやめた。時間だけが過ぎていった。
家族を失ってもう三ヶ月。俺は生きる事には困らなかった。家庭菜園をやっていたからだ、つまり野菜だけで生きていた。いつ殺されるか分からない、俺は死にたいと思っていた、自殺しようとも考えた、でもできなかった。
俺は野菜だけで生きて生きているので動く事もままならない。いつ死んでもおかしくない状況だった。でも外にでた。さすがに野菜だけでは生きていけないと判断したからだ。外は、もうだれもいない、まるで死後の世界にきたみたいだ。異様な雰囲気だった。でも俺は食料がないか必死に探し回った、何時間も探し回った。でも見つからなかった。俺はその場で倒れこんでしまった、意識を失ったわけではない、絶望したのだ。
でも俺は気づかなかった。自分の影の中に何かいる事を、そして俺はこの世から消えた。いや影の中に引き込まれた。現実世界に俺はいない、でも俺が消えた事にもう誰も気づかない。
俺は影の中にいた。真っ暗で何も見えない。でも、歩き回る事にした。影の中の世界ではお腹もすかない、歩いても歩いても疲れない。俺は何時間も歩き回った。そして、小さな家を見つけた。その家は赤い光でできていて不気味だったが家に入ってみた。家の中も赤い光に照らされていて外とは全く違う異質の空間のようだった。でも、外よりは居心地がよかった。