表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真の光と影  作者: 夜那
3/15

恨み

海を心から慕い、優しく海のように広い心の持ち主だった兄を見殺しにした国王と娘が憎らしくてたまらなかった。悲痛と怨念が宿った目で、

「のうのうと生きやがって。兄上じゃなくてあなた様が死ぬべきだった!」

 腹から絞り出すような声に李梗は胸をえぐられるような痛みを感じた。

李梗は、その事を姉に話すと、水蓮は怪訝な顔をしていた。

「なんと無礼な者だ! 罰を与えねばならぬ」

語尾を強くして怒りをあらわにしていた。予期せぬ言葉に李梗は慌てて、

「よっ、よいのです。それだけはおやめ下さい」

必死に頼むと水蓮はため息をつき、

「そなたがそう言うなら此度ばかりは不問にしよう」

と、納得した。

冴が非道な扱いをされたら余計、胸が痛む。李梗は早く冴と仲睦まじくなりた

いと心の中で呟いた。

そのとき扉があいて誰かが入ってきた。

「それで、李梗は元気がなかったのですね」

室に入ってきたのは王妃だった。

王妃は二十八歳。十五歳で王妃に選ばれたが子が授からず、苦労したが二十歳のときに待望の子を授かった。それが李梗である。色白で微笑む姿は天女のようだと言われていた。

「母上様」

李梗は屈託のない笑みをあいた。水蓮は立ち上がると王妃に席を譲った。

「母上様、どうぞ」

水蓮にとって王妃は生母ではないが、国の母であるため、母上と呼ばなければならない。水蓮が王妃に茶を入れているとき、

「母上様、私は冴に何をすればよいのでしょうか」

李梗は、しおしおとした声で訊いた。冴のことで気が休まらなかった。

「冴は今、ひどく心を痛めて孤独と戦っているはず。そなたが側にいて諦めず、接しておあげなさい。さすれば、心を開いてくれるに違いない」

王妃は、穏やかな微笑を浮かべ、李梗の頭を優しくなでた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ