ある冒険者の極秘任務 part.5
「いえ、謝らなくてもいいですよ。こっちも悪かったんですから」
くっ、なんていい人?なんだアイリスとやら。
「ありがとうございます。許してくれて。僕は本当に嬉しいです(ニコッ)」
「いえ、こっ、こちらこそ」
おぉ、照れてる照れてる。
まぁ、今の俺の顔イケメンだしな。
「ごほん…それで、レイさん、やはり、お父様の依頼ははやはり…」
王女さんが俺に尋ねてきた。
「あぁ、はい、僕にきた依頼は、『ガルデリアの第一王女を連れ戻す』ーー」
「では、お帰り下さい」
いやいや、なんでだよ。
「私は、あの国にはもう帰りません」
「なぜですか?」
「あの国の王や貴族は、身勝手すぎるのです。自分達のために民に莫大な税を払わせたり、それに、知らないでしょうが、今回の勇者の扱いなど酷すぎます。自分達の勝手で召喚しておいて、使えないと分かればすぐに処刑する。そしてそんな人間などいなかった事にする。王女である私でさえこの事を知ったのはついこの間なんです。あまりにも酷すぎると思いませんか?」
確かに酷いよな、自分の都合が悪かったらすぐに殺そうとするなんて。でも……
「だからって、逃げる理由にはならないんじゃないんですか」
「どうしてですか⁉私はもうあの国には失望したのです‼」
分かってない。この人は分かってない。
「あなたは、自分の立場をわかってるんですか?あなたは、国の代表でしょう。逃げるんじゃなくて、変えなければいけないんじゃないでしょうか?」
おぉ、王女さん悩んでる、悩んでる。
「あなたの言う事はもっともです。ですがーー」
「僕も手伝いますよ。できる事は少ないと思いますが……」
ここまで言えばいいだろ。さぁ、戻ると言え、というより、言って下さい。
「わかりました。私は国に帰りましょう」
よし、来た‼
「あなたならそうおっしゃると思ってました。さぁ、いますぐ、帰りましょう」
王女さんが、アイリスの方を向いて言った。
「アイリス、聞いていたと思うけど、私は国に帰るわ。だから、ここでお別れね。今までありがとう」
いや、その言い方一生の別れみたいになってるぞ……ほら、アイリスとやらも困っているじゃん。
「あ、あの私も着いて行ってもいいですか?」
なんですと⁉
「私、今まで外の世界をみたかったんです。でも、一人じゃ怖くって。でも、今は、フレイ様もいるし、レイさんだっています。だから…お願いします、フレイ様」
断れ、王女さん。
「わかったわ。いいですよね、レイ様?」
嫌だよ、嫌だけど……
「はい、もちろんです」
断ったら変に思われるじゃねぇか……
「よろしくお願いしますね、レイさん。私は、黒竜のアイリスっ言います」
「こちらこそよろしくお願いします、アイリスさん」
もう泣きたい。
「そういえば、レイさん。どうやって、ガルデリアまでもどるんですか?」
……考えてないぞ。どうする…
テスト期間中なのに……