2、地響き
俺は背後がガラスの窓になっている古いエレベーターに乗り込む。
それから背後に見えるエレベーターの窓から13年前の景色を噛みしめていた。
オレンジ色の世界を。
すると「おにーちゃんさ」と声がしてきた。
俺は花蓮を見る。
「なんだ?」
「かなり大人っぽいんだけど。どうかしたの?」
「かなり大人っぽいとは?」
「いや。朝と雰囲気が違い過ぎるから不気味っていうか...その」
「?」
「...か、格好良いっていうか」
恥じらいながらモジモジする花蓮。
俺は赤面するのは意味が分からないが...(ああ。確かにな)と納得はした。
何故なら...自殺時に30歳超えていたしな。
大人っぽいのは事実だろう。
「花蓮の方が格好良いぞ」
「え?私?...どれだけ強くなっても女だからさ」
「それはな。...だけど俺より輝いているよ」
「?」
間違いなく俺よりかは。
サラリーマンの摩耗した砥石の様な俺よりかは輝いている。
間違いなくな。
そう思っていると俺の手を花蓮がそっと握った。
それから俺を見上げてくる。
「あのね。おにーちゃんも輝いている」
「...花蓮?」
そこまで聞いてから花蓮を見ているとエレベーターは4階に着いた。
手を離しドアが開いて直ぐに飛び出して行く花蓮。
そして踵を返して「じゃあね。おにーちゃん」と大きく手を振る。
俺は意味の分からないままだが花蓮を見送る。
何だってんだ?
☆
13年前の部屋を見つつ眠りについた俺。
気が付いたのは...俺も制服姿だったという事か。
やはりここは13年前の世界らしい。
ならば。
そう思って起き上がる。
「...もう二度と後悔はしない」
そう吐き捨ててから俺はベッドから降りる。
それから俺は顔を洗い。
朝食を食べて歯を磨いたりしてから玄関から表に出る。
するとそこに...眼鏡をかけた美少女が居た。
2つ編みにしてある髪の毛。
本、鞄、黒の長髪。
これはこれは。
「鏡花じゃないか」
「...お兄。おはよう」
花蓮と鏡花。
つまり...これで姉妹が揃ったが...何をしに来たんだ?
そう思いながら俺は「鏡花。どうしたんだ?」と聞く。
すると鏡花は「ん...その。もーにんぐさーびす」と答える。
「...ああ。そういう事か」
「そう。お兄はいつもこの時間で...学校に行っている」
「そうだな。...ありがとうな鏡花」
「ん」
それから鏡花は本を仕舞ってから俺を見上げる。
俺は「?」を浮かべて泣き黒子のあるその顔を見る。
しかし13年後もそうだが13年前も美少女だな。
美人から変わってない。
「...お兄」
「なんだ?」
「...いや。何でもない。悩んでる?」
「悩んでいるかって?そうだな。まあ...テストの事とかな」
「ん。そうなんだね」
鏡花は俺に天使の様な微笑みを浮かべながら視線を逸らす。
それから歩き出した。
俺はその姿を追う様に歩き出す。
変わらない日々だ...が。
13年間の記憶がある部分は変わる日々だ。
さて...。
☆
それから俺は鏡花と一緒に学校に登校する。
そして鏡花と別れてから教室を思い出しながら向かう。
すると「おーす」と声がした。
鈴木天満だった。
坊主頭のそばかすの青年である...ああ違うか。
今は少年だ。
小学校時代からの友人である。
「お前どうした?」
「は?何がだ。天満」
「いや。なんだか...悩んでいる様な?」
「それは鏡花にも言われたぞ」
「悩んでるのか?」
「...いや。つまらない悩みだ」
俺はネクタイを締め直してから肩をすくめる。
天満は「?」を浮かべながら「そうか」と返事をしながら俺と肩を組んだ。
それから「教室行こうぜ」と言ってくる。
俺は「だな」と返事をしながら歩く。
「そういやさ」
「...ああ。どうした」
「優菜さんとはどうなのよ?」
「!...ああ。アイツか」
「優菜さん。...女神だよなぁ」
「...」
女神ね。
いや。
中は屑の極みだ。
だから...女神と称されるもんではない。
そう思いながら俺は歩いていると「優」と声がした。
顔をゆっくり上げ階段の上を睨む。
そこに...竹本優菜が居た。




