8
どこをどうさまよっていたのか、気づいたときには滝田の腕のなかにいた。
「おッ、目を覚ましたか。四代目、おれがわかるか」
「ききッ」
「どうした、四代目。何か、しゃべってくれよ」
「きききッ」
「四代目……」
しばらくのあいだ、滝田はじっと、おれを見つめていた。おれはもう、それが滝田という名前だったことも忘れかけている。ただ、その昔、長いあいだ、とても優しくしてくれた人間だということだけは、かろうじて憶えていた。
「あの抗ウイルス薬はおれたち人類に害をなしていたタイプのウイルスだけでなく、おまえたち猿に知能を与えていたタイプのウイルスにも効いてしまったんだ。四代目……、狂吉……、おれの言っていることがわかるか?」
「ききッ」
「……わかるのか?」
「…………」
突然、その人間は何かを思い出したように立ち上がった。
「こうしちゃいられない! おまえが行動を起こすように、おまえが受け取ったという紙を書かなくては!」
その人間は机に向かうと何かを紙に書き記し、
「タイムマシンで三日前へ!」
と叫んで家を出ていった。
(了)
この作品はかなり前に何度か投稿したことのあるものなので、もしかしたら再読になってしまった方もいらっしゃったかもしれません。それでもお読みいただいた方には、本当に感謝しかありません。……また、この四代目・車狂吉が活躍する小説は他にも完成していますので、そちらも楽しみにしていただけたら嬉しいかぎりです。本当にどうもありがとうございました!




