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未来警察の取り調べは翌日まで続いた。眠らせてもらえずに朦朧とする意識のなか、おれはかたくなに黙秘を続けた。訊問のなかには気になる言葉がいくつもあった。「おまえはなぜ紙飛行機に乗れたのか。この世界でどうしてそんな芸当をやってのけたんだ」とか、「ハワイを目指していたのはわかっている。タイムマシンが目当てだったのだろう。どこへゆくつもりだった。過去か未来か、あるいは天国か地獄か」とか、おれの目的を知っているともとれるような質問を投げかけられ、その都度おれはダンマリを決めこんだのだ。
時刻を訊くと、もうじき二日目に突入することがわかった。ああ、このまま取り調べから解放されなければ、すぐに三日の期限が過ぎてしまい、おれに死刑が執行されてしまうではないか。
「どうした。おまえ、泣きそうになっているな」
「け、刑事さん。お願いです。おれ、いや、わたしを解放してください。でなければ、わたしは死刑にされてしまう」
「ようやくしゃべったと思ったら、死刑の心配をしていやがる。安心しろ。SF基準法に違反したぐらいじゃあ、死刑になることはない」
「で、でも。わたしはある種の脅迫を受けたんです。何者かから、SF世界に革命を起こすように、と。さもなければ死刑にするぞ、と」
「おッ。ついにゲロしはじめたな。その調子でどんどん吐いちまいな。楽になるぞ」
「それでわたしはファンタジーを使用しました」
このとき、おれの脳裏にファンタジーという存在が、はっきりと浮かび上がった。そうだ、そうだった。おれがファンタジーを知っているのにはわけがある。……刑事もうっすらと笑みを浮かべた。
「おまえ、やっぱりファンタジーを使ったんだな。そいつは今、どこにある。言え! 言うんだ!」
すごみのある顔。その刑事はよく見ると、ハードボイルドから飛び出してきたような顔をしている。おや? なぜおれはハードボイルドなる言葉を知っているんだ。
「ファンタジー取締法違反は十年以上の懲役刑、ということは知っているだろう。知っててやったんだな? おまえ、その顔はどう見ても人間じゃあ、ない。生粋の人間さまには見られない顔だな。言え! おまえの正体は猿だろう。猿がどうしてファンタジーを使ったんだ。猿ならSF、と相場が決まっているんだぞ。そうか、わかったぞ。おまえ、ひょっとすると、西遊記に登場する孫悟空の親戚だな。それでファンタジーを使えたわけか。……すると」
刑事はおれの身元が割れるのは時間の問題だと脅した。おおかた、どこかの猿回しにでも仕込まれたのだろう、とも言った。このままじゃあ、猿回しの滝田に累が及ぶ、と思ったそのとき、
――おい、おまえ。それ以上、何も話すな。
と、どこからともなく頭のなかに語りかけるものがあった。おれにはそれが誰だかすぐにわかった。光の狂吉だ。あいつが時空を超えて語りかけてきたのだ。
――おれは今、光と化してあらゆる世界を飛び回っている。三日目が終わるまでには必ず、SF世界を革命してやるから、それまで我慢していてくれ。おれを信じていてくれ。いいな?
「わ……わかった」
おれの口からもれた言葉に刑事が食ってかかった。
「何がわかった。すべて白状する気になったのか? よし、さあ、言え。どこでファンタジーを手に入れた。言うんだ!」




