第17話 「必死に訴えるカイン」
夜遅く、仕事を終わらせた後、
カインが、エリシアの部屋の前に立っていた。
扉をノックしようとして、手を止めるカイン。
エリシアは、俺を信じてくれるだろうか。
あの状況で。
証拠もなく。
信じてくれと言っても…。
カインは、拳を握った。
くそ…。
リリアーナの罠に、まんまとはまった。
エリシアを、傷つけてしまった。
許せない。
自分が。
リリアーナが。
全てが。
覚悟を決めて、
こんこん、と
カインは、扉をノックした。
「エリシア」
返事がない。
「エリシア、開けてくれ」
まだ、返事がない。
「頼む…話をさせてくれ…」
カインの声が、震えた。
もうダメだと思ったその時、
がちゃ、と
扉が、開いた。
エリシアが、そこに立っていた。
目が、赤い。
泣いていたんだ。
俺が、泣かせたんだ。
「カインさん…」
エリシアが、小さな声で言った。
「エリシア…」
カインが、エリシアを見た。
エリシアが、ゆっくりと口を開いた。
「カインさん…リリアーナちゃんと…結婚した方がいいと思います…」
「何を言っている!」
カインが、声を荒げた。
「だって…」
エリシアの目から、涙が零れた。
「リリアーナちゃん、とても美しいですから…」
「カインさんが好きになって…結婚したくなる気持ち…分かります…」
「約束したからといって契約結婚しなくても、私は大丈夫です。
幸せになってください」
「違う!」
カインが、叫んだ。
「俺は、お前しか…」
「カインさんが幸せなら…それでいいんです…」
エリシアが、涙を流しながら言った。
「私は…13年も幽閉されていたし、
令嬢として不完全ですから…」
「エリシア!」
カインが、エリシアの肩を掴んだ。
「俺の話を聞け!」
でも、エリシアは静かに首を振った。
そして——。
扉を、閉めた。
ばたん。
カインは、扉の前で立ち尽くした。
拳を、扉に当てる。
「エリシア…」
小さく、呟いた。
扉の向こうで、エリシアの泣き声が聞こえた。
カインの胸が、締め付けられた。




