【エピローグ】
【エピローグ―ルシアンの場合―】
またもや……着替えなくてはならなくなった。
時に、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵にて。
時に、ゴビ砂漠の夜。
時に、アイスランド・ヨークルスアゥルロゥン氷河湖の氷山の上……。
神の慈悲深き観心を、無垢なる人間の魂に私が祈りを捧げる。
素晴らしい務めを果たし続けてきた。
そして私は“ルッキズム”を遂行する為に……!
そう、大天使ガブリエル様のお手を煩わせないよう、ヴェネツィアのクローゼットに自ら戻って来たのだ。
クローゼットを開けて、一番右のスーツの上下を手にする。
その瞬間、私は新たなスーツに着替え終える。
ふと見ると、クローゼットの右下にはルチアーノから渡された香水の入った白い小箱が置かれている。
あの時、ガブリエル様が突然天界に戻られてしまい、私も帰るべきか迷っていたら、突如ルチアーノがベラベラと話し出して来た。
内容は……
――意味が分からない。
ただ、分かったことは、この箱には香水が入っていて、金色の文字は日本語で『友情―それはジャパンの米よりも白く、立つ』という単語の羅列であるということ。
だが、以前ガブリエル様はルチアーノが私に香水瓶を見せた瞬間に砕かれたことがお有りになる。
だから、私も砕くべきか天界に戻って確かめてみた。
すると……ガブリエル様は、驚くべきことに――
「その香水は天上界に相応しき香りを持つ。
だが、地獄の王ルチアーノ制作とあっては天界には置けぬ。
そなたが管理するように」
と、おっしゃられた!
何という慈悲深いお言葉……!!
地獄の王の香水にさえ、情けを掛けられるとは……!
しかも流石、ガブリエル様。
あの瞬間、“臭気”をお持ちでいらしたとは……!
しかし……。
――どこに置けば良いのだろう?
私が常に常備すべきだろうか?
だが、これらはルチアーノが作ったとはいえ、紙とガラス、液体だ。
私が祈りを捧げる場所は過酷ゆえに尊き場所が多い、この半年。
だから、このクローゼットに置くことにした。
ルチアーノもこの小箱を私に渡した時以来、クローゼットを覗きに来ては物凄く喜んで小躍りしているが……。
――意味が分からない。
【エピローグ―ガブリエルの場合―】
驚いた!驚いた!驚いた!
あの美しく上品な小瓶から放たれた香り……!
正に天界の花園に匹敵する香りだった!
私は神に祈った。
どうか私の告白をお聞き下さいと。
すると、神からの啓示が――そう!
私の目の前に雷が走った!
私は一瞬で悟った。
私は大天使。
“臭気”を持っていない……!
では、なぜ、あの時、あの香りを感じられたか……!?
私は地上を見た。
すると――あの忌々しい魔女……イレイナと目が合った!!
なんと!
あの時の“臭気”は、イレイナのまじないだったのだ!
私がルチアーノの前に立ち、あの香水を吹き付けられた瞬間に発動するまじないに……この私、大天使ガブリエルは掛かっていたのだ……!!
くっそー!!
イレイナめ!!
……しかし、まあ、アレだ……うん。
イレイナと地上で戦うのは……大変……じゃなくて……面倒くさい……でもなくて……。
そう!無垢なる魂を持つ人間に悪いかなっ!
と、折角神に問われた答えを導き出した時――。
ルシアンが来たーーー!!
本当、タイミング悪いな、お前は!!
しかもルシアンめ……またルチアーノが話した記録を私に話し出して……。
こっちはそれどころじゃ無いんだよ!
神の雷が走ったの!
目の前に!
私が消されそうなの!
困るでしょ!?私が消えたら!?歴史が困るでしょ!?
だから、私はピシャリと言った。
「その香水は天上界に相応しき香りを持つ。
だが、地獄の王ルチアーノ制作とあっては天界には置けぬ。
そなたが管理するように」
……うん!素晴らしいな私!
大天使の質問小僧発動を防ぎつつ、香水問題からも手を引けた。
そうして私、大天使ガブリエルは、次に控える大天使の報告を聞くのだった。
【エピローグ―イレイナの場合―】
秘書とタンゴを踊り、心地よい疲労をジャクジーで流したイレイナは、ピンクのドンペリを注いだシャンパンフルートを手にしていた。
セレニス州の夜景が窓いっぱいに広がる。
ロクシー……。
あんたは人間にしては頭が切れるけど、所詮は小娘。
私があの香水事業に投資した理由が、単なる金儲けだとでも思っているのかしら?
否。
あんたが権利をどこぞの大金持ちに売り払うことまで、私は計算済み。
契約書に刻まれた投資者の権利――あれが消えることはない。
つまり、これからも利益は私に入り続けるのよ。
加えて。
大天使ガブリエルがルチアーノの香水を砕いたという事実。
そして――彼が認めざるを得なかった、あの一瞬の陶酔。
その光景を、水晶玉はしっかりと記憶している。
ブランドとは、物そのものではなく“語られる物語”で価値を増すもの。
香水だけじゃない。
あの映像を見たい人間たちが、これからいくらでも金を積む。
イレイナは冷ややかに笑った。
「香水の狂騒など、ただの余興よ。
本当の舞台は――セレニス州で始まるのだから」
そう呟き、妖艶にシャンパンフルートを傾けた。
〜fin〜
エピローグ…いかがでしたか?
イレイナ様…怖っ!!
そして…重大発表〜♪
この大天使ガブリエルが主人公の外伝を、明日から新連載スタートします☆
タイトルは
「大天使ガブリエル、地上に爆誕!〜神の命がふんわりすぎて、祈ろうとしたら迷子になりました〜」
です(^^)
新たな外伝を楽しんで貰えると嬉しいです!
明日の更新は17時です☆
これからも毎日17時更新です!
どうぞよろしくお願い致しますm(_ _)m
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