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第13話 龍声紋の威力

深い青色の瞳をこちらに向ける龍。


寝ぼけてるのかどうか分からないけど、龍はぼんやりとこちらを見てるように見えた。


どれくらい見つめあってたのか分からないけど、そのうち他の龍たちも目を開き、首をもたげてこちらを見てきた。


どの龍も青い目をしていたが、龍によっては緑がかっていたり紫色に近かったり、水色のように薄い目の色の龍もいた。


でも一番最初に目を開けた龍の目が、一番深い青色をしていた。


龍たちにじっと見つめられて、すごく圧を感じる。


さすがの高坂さんも言葉もなく黙っていた。


そこでリョウガさんが静かに話し始めた。


「ここには5頭の龍がいます。このように龍が固まって過ごしているところを龍合地と読んでますが、他に3か所あって、全部で18頭の龍がいます。この世界で唯一、龍が繁殖するのがこのカムラギ山地。

ある程度成長するとほとんどの龍が自立して世界に出て行きますが、一生をここで過ごす龍もいます。シオガでは1頭ずつ記録を取り成長を見守っています。ここにいる龍は、比較的若い龍が多いですね」


へえ…。


説明も上の空で、私はただただ龍を見つめていた。


すると斎藤さんが1枚の紙を渡してきた。


「早川さん、これを読んでみてください」


渡された紙には「サライ・ミナ・トゥエナ」と書かれていた。


どこかで見たような…と思っていると、斎藤さんは続けて言った。


「そんなに大きな声でなくてもいいです。龍に聞こえれば」


それで思い出した。


これは面接のときに読まされた、あの文の冒頭だ。


「これを読むんですか?」


「はい、その確認のために来たんです」


そういえば、私の龍声紋がどれくらい龍に効くのか確認するとか言っていたな。


具体的にそれが何を指すのかよく分からないけど、それを思い出した私は軽い気持ちで「サライ・ミナ・トゥエナ」と読み上げた。


その瞬間、龍たちにピシッと緊張感が走った。


まるで見えない何かに縛り上げられてるような金縛りにあってるような感じで、龍たちは目を見開きかすかに震えながら苦しそうな表情で硬直している。



え?何!?


おっとりしていた龍の雰囲気が一変して、私は訳も分からず戸惑った。


するとリョウガさんの部下の人が、思わず声を漏らした。


「すごい…、これが龍声紋か…」


え?と思っていると、徐々に龍たちの緊張感がほどけていき、またもとののんびりとした雰囲気に戻っていった。


ただその順番は龍によってまちまちで、最後まで緊張感を保っていたのは、あの深い青い瞳をした龍だった。


それを見ていた斎藤さんは、いつになく満足そうに言った。


「龍たちが初対面の人間にここまで落ち着いてるのは、滅多にないですよ。おまけに龍との相性も良さそうですね」


そうなの?


何かただならぬ雰囲気だったと思うけど、想定内だったってこと?


斎藤さんは、こちらを見て微笑んだ。


「早川さんの龍声紋の威力が分かりました。期待以上です」



─────────────────────



今日はこれまでにしておきましょう、とリョウガさんに促され、私たちは帰ることになった。


来るときは少し苦労した山道だったけど、帰るときは私はそれを気にしてるどころではなかった。


あの龍たちに走った緊張感は、何だったんだろう。


斎藤さんの笑顔も初めて見た気がするけど、何が期待以上だったの?


そもそも龍声紋って何に利用するわけ?


祷雨の巫女って、何をさせられるんだろう?


そんな考えが頭の中をぐるぐるしている。


帰りの車の中で、リョウガさんが部下の人たちと何かをしゃべってるのが聞こえた。


「一番反応が強かったのはメイリンですね。その次はライタンでしょうか。サンライも対象になりそうです」


「そうだな。でも今回使うのはメイリンが順当だろう。あの中でも一番若いし性格も素直だ」


耳には入ってくるけど、理解しようとは思わなかった。


私の声は龍に悪影響をもたらすものなのかもしれない。


そう考えると前向きにはなれなかった。



─────────────────────



施設に戻ってくると、もう夕方だった。


車を降りたあと、リョウガさんは


「今日はもうお疲れだと思うので、また話は明日にしましょう。ただアユミさんには是非メイリン、あの最後まで反応していた龍と関係を深めていただきたい。それが祷雨の巫女の役割ですので」


「あ、あの」


我慢できず私は声を上げた。


「私は龍たちに負担を強いるのではないですか?あの反応は、龍たちのためになるとは思えないのですが」


「それは大丈夫です」


きっぱりとリョウガさんは言った。


「あの文言は龍の反応を見るものです。それ以外の言葉は龍の負担にはなりませんよ」


そうなんだろうか?


信じきれずにいると、隣にいた斎藤さんも続けた。


「龍と信頼関係を結ぶと言ったでしょう。これからは高坂さんと一緒にあそこに通って、龍と仲良くなってください。龍も懐くとかわいいですよ」


15話まで毎日更新予定


アユミの持つ龍声紋は龍に大きな影響を与えるようです。

この力が後々どのような意味を持つのか?


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