表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

第1話 ハローワークで異世界求人

異世界で働きませんか?


契約期間は半年

報酬は500万円

仕事内容は主に龍の世話と儀式の補佐




ハローワークで仕事を探していたところ、目に入ってきたのはこんな文言だった。


異世界?龍の世話?何これ…


明らかに怪しい冗談かと思ったけど、ここはハローワーク。

モニターに映るフォーマットに従った求人票。

雇用主は日本でも名だたる大企業が明記されている。


呆気に取られながら私はモニターを見つめた。



──────────────────




「お姉ちゃん、私結婚決まったよ」


ある日、妹のヒロミから届いたLINE。


ある程度予測していたとはいえ、一瞬頭がフリーズした。


ヒロミには付き合って3年になる彼氏がいた。

なかなかプロポーズしてくれないとぼやいていたが、この間の誕生日におしゃれなレストランで「結婚してください」と言われたのだと言う。


「よかったね。20代のうちに結婚したいって言ってたもんね」


そう返すとヒロミは嬉しそうに返事を返してきた。


「かなりプレッシャーかけたからね。29歳の誕生日で何も言ってこなかったら別れるって匂わせたから焦ったみたいよ」


ヒロミは実の妹ながらしっかり者で自分の意見をはっきり持っている。

3つ下だけどいつも現実的で私とは大違いだ。


「お姉ちゃん、再来月でダメな日ある?今度家族で食事会開きたいと思ってるから、是非出席してほしいんだけど」


「今のところ週末なら大丈夫だよ。日取り決まったら教えてね。改めておめでとう!」


最後にスタンプを添えて会話は終わった。



スマホを置いたあと、私は一気に脱力感とむなしさに襲われた。


ヒロミが結婚かあ…


ついに妹にまで結婚を抜かされた。

最近は友達の結婚出産報告が重なっている。

周りはどんどん女性の幸せをつかんでいっている。


なのに私は置いてきぼりを食らってる感がどうしてもぬぐえない。


もちろん結婚が幸せの全てではないし、おひとり様を楽しんでいる人もいる。


でも…の考えが頭のなかで堂々巡りだ。


実家の両親は特になんとも言わないけどヒロミが結婚が決まったことで私にたいして何を思ってるんだろう。

余計に気を遣わせるのではないか、と思うと気が重くなる。


このままずっと1人なのかな…


その不安がどうしても抜けなかった。



──────────────────



「え、人員整理?」


お昼休みに洗面所で化粧直しをしてると、隣の部署の女性たちがヒソヒソ話しているのが聞こえてきた。


思わず耳をそばだてる。


「ほら、この間の新規事業、採算が取れなくて撤退になったでしょう?あれで大幅に赤字が出て、財務的にかなりやばいみたい。多分部署の整理とか、早期退職を募る可能性もあるって」


「やばいじゃん…そういうのって事務とか総務が真っ先に対象になるんじゃないの?確かにここのところ見通しが暗い話は聞いてたけどさ」



あまりじっくり聞いていても不審に思われるので、私は化粧直しも適当に切り上げてその場を離れた。



確かに経営不振の話は私の耳にも入っていた。

この間のボーナスは大幅に削減されたし、部署全体もどんよりとした雰囲気が漂っている。

大きな部署ではないのに先月は2人も自己都合で辞めた。



結婚できる宛もないなか仕事は頑張りたいと思ってたけど、この会社にしがみついたとしても未来は暗いかもしれない。


会社が早期退職者を募り始めたのを機に、私は仕事を辞めることにした。




そしてハローワークで仕事を探し始めた私が目にした求人票が冒頭のものだったわけだ。


──────────────────



正直就活はかなり苦戦していた。


世の中人手不足だとは言うけれど、私が希望する事務や総務は倍率が高く書類選考で落とされる。

やはり企業は若い人の方がほしいのかもしれない、思いきって異業種に飛び込むか…

そう考え、検索項目から事務をはずした結果、異世界の文字が飛び込んできたのだ。


思わず周りをキョロキョロ見渡す。


ここは何度も来ているハローワーク。

窓口に座ってる人も、係の人もいつもの人だ。

私は今確かに現実にいるはず。


でもこの求人気になる…


思わず私はこの求人票を印刷していた。


相談窓口にドキドキしながら求人票を渡すと、係員の人は顔色を変えず淡々と事務処理を始めた。


「紹介状を発行しますね。それを添付してこちらの住所に履歴書と職務経歴書を送付してください。事前連絡は不要とのことなので」


今まで何度もやり取りされた手続き。


あまりにも普通で私はいつも通りの就活と変わらない気がしてきた。


でも私が応募しようとしている就職先は異世界なのだ。



8話まで毎日投稿します。


応募した企業から連絡があり、面談を受けることになった主人公は?

続きは明日19時投稿です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ