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第5話:世界の扉と隠された代償

渋谷のガラス張りオフィスは、朝から異様な熱気に包まれていた。ゲート・ソリューションズは、日本政府とフランス政府から試験的運用の特例措置を受け、初の海外イベントをパリで開催する準備に追われていた。悠真は大舞台を前に期待と緊張でいっぱいになっていた。そんな状況でも時折、胸の奥で鈍い痛みが走る。ゲートの代償は、利用者が増えた今も悠真の生命力を削り続けていた。


会議室では、スタッフの田中亮介がタブレットを手に説明する。亮介は元戦略コンサルタントで、大手ファーム時代に政府や国際機関とのコネクションを築いた男だ。


「佐藤社長、パリのイベントは日仏両政府の特例措置で実現しました。ゲートのデータはリアルタイムで両国に共有されますが、ビザや航空規制は免除。移動はゲートで0秒です。」


悠真は目を丸くする。

「亮介さん、マジでどうやったんだ? 政府動かすって、漫画じゃねえぞ。」


亮介はニヤリと笑う。

「前職で経済産業省やEUの連中と飯食ったツテです。ゲートがCO2削減や経済安全保障にどう役立つかを、数字とビジョンでガツンとプレゼンしました。政府も、ゲートが日本の看板技術になるって気づいたんです。」


美咲が横から口を挟む。

「でも、佐藤社長、データ共有とか監視とか、大丈夫ですか? 体、気をつけてくださいね。」


悠真は笑顔で誤魔化す。

「平気、平気。亮介さんが政府を動かしてくれたんだ。パリでゲートの未来、見せてくるよ。」


特例措置の背景には、亮介の戦略があった。

彼はコンサル時代に培った経済産業省や外務省との信頼関係をフル活用し、ゲートを「国家戦略特区」の一環に位置づけた。フランス側の外務省および環境政策担当者と直接交渉し、ゲートのCO2削減効果を訴え、試験運用の承認を勝ち取った。


結果、「ゲート技術試験運用特例(仮称)」が両国に外務大臣名で発令されたのだ。これにより日仏間の二国間に限られ、さまざまな制限のもとであるが、合法的にゲートを用いて海外渡航することが可能になった。


その夜、健太がオフィスを訪れた。ヨレヨレのスウェットとリュック、研究室のコーヒー臭を引きずる姿は、中学生時代のまま。悠真は懐かしさに胸が熱くなる。


「よお、社長。ビル派手すぎだろ。」


「健太、相変わらずの研究室臭だな」と悠真は笑う。

二人はゲートのロゴ入りマグカップでコーヒーを飲み、ソファで語らう。窓の外には渋谷のネオンが瞬く。


「ゲート、結局何なんだ? 量子テレポーテーションの理論じゃ説明つかねえ。エネルギー収支が破綻してるぞ。」


健太の目は真剣だ。悠真は言葉に詰まる。ゲートの核心――寄生虫のような「何か」との契約? 生命力の吸い上げ――を話すわけにはいかない。


「企業秘密ってことで。健太の頭なら、いつか解明できるだろ?」


健太は「ふーん」と鼻を鳴らし、「お前、顔色悪いぞ。寝てんのか?」と続ける。悠真は笑って誤魔化すが、胸の奥で寄生虫の目が疼く。


翌日、パリでのイベントが開催された。会場はルーブル美術館近くの特設ステージ。ゲートの青い光がスポットライトのように輝き、観客席には海外メディア、投資家、フランス政府関係者が詰めかける。


人気ユーチューバーのジェイク(登録者500万人)がゲートで東京からパリへ飛び、エッフェル塔前で「No way! This is insane!」と絶叫。ライブ配信は2000万視聴者を突破。


続いて、フランスのモデル、アナタ(フォロワー800万人)がパリから渋谷へ移動し、スクランブル交差点で自撮り。「C’est magique!」と投稿。#GateGlobalが世界トレンド1位に躍り出る。


悠真はステージで宣言。

「ゲートは国境を消す! 日仏の特例措置で、今日、世界への第一歩を踏み出した!」


会場は拍手と歓声に沸くが、悠真の視界が揺れる。スタッフに支えられ舞台裏へ。美咲がStreamStarのタブレットを手に駆け寄る。


「佐藤社長、顔真っ白ですよ! 無理しないでください!」

彼女のラベンダーの香水が漂う。悠真は無理に笑う。

「美咲さんのサポートでイベント成功したよ。ちょっと疲れただけ。」


美咲は眉をひそめる。

「StreamStarとしても、私としても、佐藤さんが倒れたら困ります。約束ですよ、無理しないで。」


その言葉に悠真の胸が締め付けられる。彼女のプロ意識と温かさに、代償を隠す罪悪感が募る。


…………

イベント後、オフィスに戻ると、テレビがニュースを報じていた。


「ゲート・ソリューションズのパリイベントは成功を収めたが、政府の規制議論が過熱。経済産業省はゲートの安全性を検証中。運送・航空業界のロビー活動が影響か。」


画面には、ゲート教団のデモ映像。青いTシャツの集団が「悠真様の意志を!」と叫び、警官隊と衝突。


キャスターの声が重い。

「ゲート教団は全国で数万人規模に拡大。専門家は『社会不安の増大』と警告。」

悠真はリモコンを握り、画面を消す。胸の痛みが強くなり、ソファに崩れ落ちる。寄生虫の目が脳裏で光る。


その夜、美咲からメッセージ。

「佐藤さん、今日体調悪そうでしたが、その後は大丈夫ですか? 体気をつけてくださいね。」


彼女からのメッセージに、悠真は微笑むが、すぐに顔を曇らせる。

美咲さんには全部話したい。でも、まだダメだ。」


スマホを握り、渋谷の夜景を見つめる。ゲートの青い光が、ビルのガラスに反射していた。


一方、健太は研究室でゲートのデータを解析していた。ノートに数式とメモが並ぶ。「悠真、何か隠してるな。絶対突き止める。」

彼の目には、友情とライバル心が混じる。


…………

翌朝、オフィスに黒スーツの男たちが訪れる。名刺の所属先には「内閣府」とだけあった。

もっとも役職が高いと思われる男が冷たく告げる。

「佐藤社長、ゲートの技術資料を提出してください。国家安全保障上の問題です。」


悠真はスーツを正し、ニヤリと笑う。「資料? 頭の中にしかないですよ。」

男たちの目は鋭さを増す。部屋の空気が凍りつく。

 

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