第4話:ゲート・ソリューションズと美咲の温もり
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ゲート・ソリューションズの設立が本格化。
悠真は渋谷のガラス張りビルにオフィスを借り、スタッフ5人を採用。オフィスはモダンなデザインで、ガラスの壁に東京のネオンが反射する。
オフィスはゲートの将来性を見込んで、財閥系不動産デベロッパーが即日かつほぼ無料でワンフロアを貸してくれた。
返礼の約束はしていないが、お近づきの印ということだろう。
スタッフは配信サイトStreamStar経由で応募があった5名だ。
それぞれ履歴書上は優秀で、旧帝大もしくは海外有名大学を卒業し、大手企業で出世頭しているような人材だ。
ハイエンド人材が、ぽっと出の会社に来るなんてよほど酔狂だと思ったが、金を稼ぎ終えたエリートにとっては給料の多寡は問題ではなく、どれだけ心が躍る仕事ができるかというらしい。
だが、実際はそうではないことも理解している。
大企業がゲートの起こす前代未聞の社会変革に少しでもついていくべく、優秀な人材を産業スパイという形で送り込んでいるのだろう。
優秀な人材達には申し訳ないが、自分がゲートの全容を理解できていない以上、情報は漏れるはずがないのだ。
むしろ優秀な頭脳を使ってゲートを解明し、説明して欲しいくらいだ。
オフィスのデスクにはゲートのロゴ入りマグカップ、壁には「物流革命」のスローガン。青い光の輪を模したロゴが蛍光灯に輝く。
悠真はスーツにネクタイを締め、鏡に映る自分に「社長っぽいだろ」とニヤリ。
スーツは副流煙を纏った吊るしのスーツではなく、オーダーメイドだ。
スーツにこだわりはなかったが、やはり数日前とは気分が違う。
優秀なスタッフがさまざまな調整してくれてはいるが、ゲートが属人的な技術である以上、悠真が直接出向く必要が多くなる。投資家とのミーティング、メディアの取材、事業計画の立案で睡眠は3時間。加えて、ゲートの使用で生命力も削られているため、時折胸が痛む。
「忙しいけど、生きてるって感じ!」
健太からのメッセージへの返信はしていなかったが、「今夜、オフィス行く」と追撃メッセージが入った。
悠真は一瞬顔を曇らせる。健太の研究室生活を想像する――深夜まで論文を書き、コーヒーをがぶ飲みしながら量子テレポーテーションの数式を睨む姿。
悠真は就活に失敗し、零細企業でExcelを叩いていた自分と健太を比べて、劣等感を感じていた時もあったが、今はその感情が全くない。今なら中学生時代のようにフラットに健太と話すことができると思い、訪問を快諾する旨の返信をした。
さて、今日は引き続きインフルエンサー戦略を展開だ。
すでに親交のある人気配信者「マックス」(登録者300万人)やモデル「リナ」(インスタフォロワー150万人)が演者となり、ゲート体験イベントが開催される。
会場はガラス張りの会議室を改装し、ゲートの青い光がスポットライトのように輝く。
壁には#GateRevolutionのバナーが飾られ、スタッフがタブレットでSNSを監視。
マックスがゲートで北海道・札幌へ飛び、ライブ配信で「マジすげえ! 0秒で札幌! さすがに雪はもう残ってないか!」と絶叫。時計台をバックにポーズ。
視聴者数が100万人を突破し、#GateRevolutionがトレンド1位。
リナは沖縄・那覇へ行き、国際通りで自撮り。「移動0秒! 沖縄の海風、最高! これ、物流も観光も革命!」と投稿。ハイビスカスの花を髪に飾り、投稿は数百万いいねを獲得。
悠真はカメラに向かい宣言。「今は国内だけど、ゲートは理論上、世界中どこでも行ける! ハワイもパリも、未来は無限だ!」
利用者が数百人に増え、生命力の負担が軽減され、肌の青白さが薄れ、胸の痛みも減った。
「この調子で利用者を増やせば死なずに済むな!」
イベントの後は配信サイトStreamStarサポートスタッフの美咲さんがオフィスを訪れることになっていた。
ゲート専属スタッフになったと言っていたが、まさかリアルで会うことになるとは。
彼女とはこれまでチャットしかしていなかったが、プロフィール写真の第一印象は好印象で、チャットでの距離感も丁度よかったため、リアルで彼女を見て落胆する可能性を憂慮しながら待っていた。
定刻2分前。
受付スタッフから美咲さんが来社したと連絡が入る。
応接室に向かうとそこにはイメージどおり美咲さんが座っていた。
ショートの黒髪が蛍光灯に輝き、柔らかいラベンダーの香水が漂う。白いブラウスにスカート、首元に小さなシルバーのネックレス。シンプルだが安心する印象があった。
「リアルでは初めましてですね。佐藤さん。いや、佐藤社長。StreamStarのゲート専属スタッフの桜美咲です。」
声も仕草のイメージどおりというか、理想のそれであり、思わずドキっとしてしまった。苗字が桜と名前と相性が良いなぁと考えていたら、一瞬間が空いてしまった。
「テスト配信時からお世話になりました。佐藤悠真です。改めてよろしくお願いします。」
雑談を含めた、今後の配信戦略の話が終わったのは打ち合わせ開始から2時間が経ったところだった。
お互いに有意義な話ができ、今後の戦略も纏まってきた。
別れの挨拶の前に美咲がゲート使用直後の悠真の顔色を気遣ってきた。
悠真は笑顔で誤魔化すが、美咲は首を振る。
「StreamStarとしても、私個人としても、配信者の健康や安全性とか、気になります。佐藤さん、大丈夫ですよね? 私でよければ何でも言ってくださいね。」
彼女の言葉に、悠真は代償の隠蔽を思い出し、胸が締め付けられる。だが、美咲のプロ意識に好感を抱く。
「大丈夫ですよ。でも、StreamStarのサポート、頼りにしてます。」
美咲は少し笑って頷く。
「ふふ、じゃあ、期待してます。変なことしたらBANですよ! でも、ほんとすごいことやってるなって、ちょっとワクワクします。」
その笑顔に、悠真は「良い子だな……もっと話したい」と感じる。だが、初対面の距離感を思い出し、自制する。
イベントの成功を祝うため、スタッフが近くのカフェで軽いランチを提案。
美咲も「運営として今後の配信プラン聞きたいです」と参加する。
カフェは渋谷の雑踏から少し離れた静かな店で、木製のテーブルにサンドイッチとコーヒーが並ぶ。窓から差し込む陽光が美咲の髪を照らし、ネックレスがキラリと光る。悠真はサンドイッチを頬張りながら、美咲に話しかける。
「美咲さん、StreamStarの運営ってどんな感じなんですか? いつも忙しいの?」
「うーん、配信者のトラブル対応とか、結構バタバタかな。佐藤さんの配信、運営でも話題なんですよ。『瞬間移動ってマジ?』って、みんなびっくりしてます。」
美咲の軽い口調に、悠真は「へえ、運営でもバズってるんだ」とニヤリ。
「でも、瞬間移動って夢みたいですよね。札幌や沖縄、0秒で行けるなんて。佐藤さん、どうやってるんですか? 企業秘密?」
美咲の好奇心に、悠真はゲートの真実を隠す罪悪感を覚える。
「まあ、秘密ってことにしとくよ。けど、世界を変える第一歩だ。見ててくれよ。」
「楽しみです! でも、無理しないでくださいね。運営としても、佐藤さんの配信応援してますから。」
美咲の笑顔はプロとしての激励だが、どこか温かい。
悠真は「この子、仕事熱心だけど、なんか話しやすいな」と好感を抱く。
ランチの最後、コーヒーカップを手に美咲が言う。
「佐藤さん、ゲート・ソリューションズ、ほんとすごいと思います。次回の配信、運営にも事前に教えてくださいね。サポートしますから!」
「サンキュー、美咲さん。頼りにしてるよ。」
悠真は彼女の笑顔を見て「もっと彼女知りたい」と思うが、初対面の壁を感じ、「まあ、徐々にだな」と自分に言い聞かせる。
………………
その夜、テレビのニュース番組が渋谷のネオンを背景に報じた。
「佐藤悠真氏のゲート・ソリューションズが展開する『瞬間移動技術』が、引き続き経済に深刻な影響を及ぼしています。東京の地価は昨日からさらに5%下落、運送業界の株価は軒並みストップ安。不動産業界では『オフィス需要の崩壊』と悲鳴が上がり、運送会社は同社の運送業界への進出を予想して、採用控えとリストラを加速。経済評論家の山田教授は『ゲートは物流革命だが、社会的混乱は避けられない。』と警告。」
画面には札幌の時計台、沖縄の国際通り、そして渋谷のゲート・ソリューションズのオフィス映像が映し出される。キャスターが続ける。
「一方、SNSでは"ゲート教団"を名乗る団体が急増。渋谷のスクランブル交差点では、信者らが『転移の神、佐藤悠真様』と書かれたビラを配布。青いシンボルのTシャツを着た集団が『救済の時が来た』と叫ぶ姿も。専門家は『カルト化の兆候』と警鐘を鳴らします。」
映像が切り替わり、ビラのクローズアップ。ゲートの青い光を模したイラストと「悠真様」の文字が不気味に輝く。SNSのスクリーンショットには、青い円のアイコンで埋め尽くされたコメント欄。
キャスターの声が低く響く。
「佐藤氏は『理論上、世界中どこでも移動可能』と主張しますが、技術の全貌は不明。政府の調査が進む中、ゲート・ソリューションズの動向に注目が集まります。続いて、気象情報です。」
悠真はリモコンを握り、画面を消す。渋谷のオフィスから見える夜景が、ゲートの青い光に染まる気がした。
胸の奥で、例の寄生虫の目がじっと見つめる感覚が疼く。
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