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第1話:裂けた夜空と力の代償

初作品 第1話です。

拙いところも多いと思いますが、よろしくお願いします。

gw中に10話程度投稿する予定です。

2025年4月30日、夜10時17分。

1人のサラリーマンが副流煙が染み付いたスーツの匂いを気にしながら、狭い自宅への帰路についていた。


佐藤悠真(ゆうま)、25歳、東京の零細IT企業で働く会社員。今年は有給をうまく使うと10連休らしいが、俺には全く関係がない。

給料は手取り20万円、ワンルームマンションの家賃7万円を払うと、残りはコンビニ弁当と発泡酒で消える。

大学時代の就活は全滅、夢見た大企業は遠く、零細企業で一般的には価値がなさそうな、ある企業のある部署の特定の業務に対してのみ有効なマクロの作成依頼を受けてExcelを叩く日々。

趣味は動画配信サイト「StreamStar」でゲーム実況を眺め、コメント欄で「すげえ!」と盛り上がること。

「いつか一発当てて、俺も億万長者になれればなぁ……」

そんな呟きが口癖だ。


コンビニのビニール袋をぶら下げ、自宅への近道になる路地裏に入っていった。

ネオンの明かりが濡れたアスファルトに反射し、遠くで酔っ払いの笑い声が響く。


ふと空を見上げると――世界が裂けた。


夜空に紫色の亀裂が走り、まるで宇宙の布を引き裂いたかのよう。

ギザギザの傷口から眩い光が溢れ、悠真の全身を飲み込んだ。肌がチリチリと焼ける感覚、耳鳴りが頭蓋骨を震わせる。


「うわっ! なんだこれ!?」


視界が真っ白になり、意識が遠のく。

次の瞬間、ドンッと背中に衝撃。

見慣れたワンルームの床に倒れていた。

路地裏から家に帰るまでの記憶がない。

カーペットの埃っぽい匂い、窓から漏れる街灯の光。


「はぁ、はぁ……何だ、今の……?」


額を伝う汗が冷たく、シャツがびっしょり。

心臓がバクバク暴れ、呼吸が浅い。

立ち上がろうとしたその時、頭の中に声が響いた。低く、脳の奥底を這うような、異質で冷たい声。


『ゲートを授ける。お前の意志で、世界を繋げ。だが、代償を忘れるな。』


「誰だ!? どこにいる!?」

悠真は耳を塞ぎ、部屋を見回す。

6畳の狭い空間には誰もいない。

声は頭蓋骨の内側で反響する。


『お前の命は、数日の猶予しかない。多くの者に使わせ、負担を分け合え。さもなくば、消える。』


声が消えた瞬間、奇妙な「感覚」が広がった。

空間が液体のよう に揺らぎ、目の前に透明なドアが浮かんでいるような錯覚。

空気が重く、かすかな振動が肌に響く。

直感的に手を伸ばすと、指先が空気を切り裂き、青い光の輪が広がった。


その輪――「ゲート」は、水面のような光を湛え、波紋が揺らめく。触れると冷たい空気が指先にまとわりつき、微かな電流のような痺れ。悠真は震える声で呟いた。


「瞬間移動……? マジかよ……」


試しに「隣のコンビニ」と念じると、ゲートが揺らぎ、向こう側に蛍光灯の白い光と陳列棚。普段は気にしていない冷蔵庫の低いうなり声。

「本物だ……!」


意を決してゲートをくぐると、ふわりと浮遊感。足元が宙に浮き、見慣れたコンビニの中に立っていた。ゴミ箱の横で、店員がゴミ袋を開く音。季節外れのおでんの匂い。現実だ。


「す、すげえ! これ、めっちゃすげえ!」

興奮が胸を突き上げる。店員に気が付かれる前に、部屋に戻った。頭は夢でいっぱいだった。

「物流、旅行、医療、なんでも革命だ! 俺、億万長者になれる!」


だが、ゲートを閉じた瞬間、猛烈な疲労が襲ってきた。膝がガクガク震え、視界が一瞬暗くなる。

肋骨の奥で鋭い痛みが走り、胸が締め付けられる。額に冷や汗が滲み、指先が冷たい。

「なんだ……これ……体が、鉛みたい……」


再びあの声。

『ゲートは、お前の生命力を喰らう。所有するだけで、数日で死ぬ。多くの者に使わせ、負担を分散しろ。さもなくば、お前は消える。』


悠真は床にへたり込んだ。心臓が暴れ、冷や汗が止まらない。鏡を見ると、目の下に濃いクマができ、肌が青白く、唇が微かに震える。まるで一晩で10歳老けたよう。

「ふざけんな……こんなチート能力、命削るのかよ!?」


気を失う怠さ中、今の考えを残したいと思い、一心不乱にノートを手に取り、震える手で計画を殴り書いた。


- ゲートをStreamStarで公開 → バズる

- クラウドファンディングで資金 → 物流会社設立

- 利用者増やして生命力負担を減らす


気が動転してたといえ、無茶苦茶短絡的な内容だった。

気分が落ち着いた後、メモを見返すとどれだけ自分が追い詰められていたかがよく分かる。


ふと、親友の健太の顔が浮かんだ。中学時代、サッカー部で一緒に汗を流し、テスト前には互いの家で徹夜で勉強した。いや、勉強に付き合ってもらっていた。健太はいつも簡単に応用問題を解き、「悠真、頭使えよ」と笑った。大学で再会した時、健太は量子力学の研究室に所属し、悠真にはさっぱり分からない「量子テレポーテーション」の話を熱く語った。今も研究室に籠もり、論文を書いてるらしい。 先月もベルギーで開催された国際学会に参加したと言っていたな。


「健太なら、このゲートの仕組み、解明できるかな……?」

悠真はスマホを手に取るが、「いや、こんなヤバい話、話せねえよ」と首を振る。健太の頭脳を尊敬するが、ゲートの代償を隠したい気持ちが勝る。


色々考えたが埒が開かないから、心身の怠さに任せて眠ることにした。


その夜、夢の中で見たものは忘れられなかった。無数の目を持つ、黒い寄生虫のような影。

ぬめぬめした触手が空間を這い、粘液のような光沢を帯びた身体が脈打つ。目の一つ一つが悠真をじっと見つめ、心臓を抉る恐怖。


『お前は我々の器。試練を乗り越え、拡大しろ。』


悠真は叫びながら目覚め、汗でびっしょり。ベッドシーツが湿り、部屋の空気が重い。


「くそ……何だよ、こいつ……ただの夢だろ?」

悠真はベッドに沈み、スマホを握りしめる。

書き殴ったメモを見ながら、StreamStarのアプリを開き、「本当に配信してみるか」と呟く。


今まで読む側でしたが、書く側って結構大変ですね。

ルビ振るのこんなにめんどくさいなんて。

当分はルビなしでいきます。

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