【世界観05】記憶を食べるホテル「ノスタルジア」(ジャンル:幻想×エモ×ヒューマン×微ホラー)
【世界観05】記憶を食べるホテル「ノスタルジア」
そのホテルは、世界のどこにもないはずの場所に建っている。
ふと迷い込んだ森の奥。
閉鎖された駅のホーム。
夢と現の境界線。
「ノスタルジア」は、忘れたい“何か”を持つ人の前にだけ現れる。
このホテルには、特別なルールがある。
――滞在料金は、“記憶”で支払うこと。
チェックインのとき、宿泊者は「どの記憶を差し出すか」を問われる。
忘れたい過去。忘れたくない想い出。
支払った記憶は、そのまま“料理”にされ、他の宿泊客のディナーとなる。
愛された記憶は甘いデザートに、
怒りの記憶はスパイスの効いたスープに、
後悔は苦みのあるコーヒーに姿を変える。
「思い出を喰らい、誰かの心に触れる」。
それが、このホテルでの“癒し”の形だ。
主人公・レンは、「唯一の記憶を差し出したい」と言ってホテルを訪れる。
それは亡き恋人との最後の時間。
彼はその記憶を捨ててでも、“前に進む力”が欲しかった。
だが、ホテルの支配人はこう言った。
> 「お客様のその記憶には、“まだ宿る者”がいます」
「一度差し出せば、もう二度と“その人”に会うことはできません」
迷いながらもレンは滞在を続け、他の宿泊客の“記憶の料理”を味わいながら、自分の過去と向き合っていく。
このホテルには、奇妙な宿泊者たちが集まる。
・自分が誰かも忘れた老婆
・過去に置き去りにされた少年
・記憶を食べ過ぎて、他人の人格を持ち始めた料理人
そして、“過去を喰らいすぎて”壊れた部屋も存在する──
「忘れすぎた者の末路」は、誰にも語られない。
このホテルでは、忘れることと、生き直すことは、同じ意味を持つ。
レンが最後に選ぶのは、
「記憶を捨てること」か、「記憶と生きること」か。
(ジャンル:幻想×エモ×ヒューマン×微ホラー)
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