1LDK
次に目が覚めると、そこはアパートかなにかの一室のようだった。まだ視界がぼやけるが、ありゃコタツか……?床に寝っ転がっていた体を起こすと、コタツに白い髭を蓄えた爺さんが座っていて、湯呑で緑茶を飲んでいた。
「フォッフォッフォ起きたかの。」
「……?ここは?」
「まぁ、とりあえず座るといい」
見ると爺さんの向かいにはもうひとつ湯のみが置いてあり、とりあえずそこに座った。何が何だか分からない。俺の最後の記憶は轢かれた……はずなのだが。
「お主は死んだんじゃよ。今は魂が生前の記憶を元に体を作っておる。」
……益々わけが分からない。
「死んだと言われても……こう、病院で自分の肉体を上から魂状態でみてるとかなら実感が湧くんですが、、、ここアパートの一室ですよね?」
「違うぞ。窓の外をみてみぃ」
半信半疑ながらも白いカーテンをめくると、周りは空で雲の上に乗っているという状態でなんともおかしな夢のような光景が広がっていた。
「……なんだ……これ……」
今日はなんだかおかしい。脳の処理が追いつかない。
「ここはワシが生み出した部屋の一室じゃな。さて、混乱してるところ悪いがお主に話さなければならないことがある。」
「……はぁ。」
「おぬし、ライ〇ノベルとか電〇文庫って分かるかの?」
「分かります。」
「おや、あんまり取り乱さないのぅ」
「訳分からん、という気持ちはあるんですが自分にはこの状況をどうにも出来ないですし、貴方から害をなされるという感じもしませんし……。よくて夢かなって。」
「残念ながら夢ではないのぅ」
そう言って胸あたりまで伸びた白髭をまた右手で触る。どうやらあれはクセらしい。
「で、なんでライ〇ノベルなんです……?」
「あー説明するのに知っているととても楽でのう。お主にはその話でもよくある、異世界転生……?いや転移をしてもらわなくて行けなくての。」
「あー……剣と魔法の世界ってやつですか?モンスターとか魔物がいる世界に。」
「簡単に言うとそうじゃの。」
「なんでまた?しかも俺ですか。勇者の素質とかそんなもんは無いと思うんですが。」
「申し訳ないがたまたまなんじゃよ~ほれ、昔あったじゃろ、"ネット"で。"キリ番"とか。そんな感じでたまたまじゃ。賭けでまけ……ゴフンゴフン」
「今賭けって言いませんでした!?」
見事に爺さん目を逸らす。漫画かよ。
「誤魔化してないんじゃ~気のせいじゃよ~✌️」
「……(イラッ)」
ブイサインごまかし爺さんにほんの少しだけイラッとして色々問い詰めたところによると、爺さんどうやら他の世界の神に賭けで負けたらしい。賭けで負けたら地球の魂1個受け渡すという条件で。
「原則、ほかの神の世界を別の神が覗き見してはならんことになっておるのじゃ。だから担当の世界しか覗き見できんのじゃ。破ると"神の創造神"にぶん殴られるんじゃよ……。」
「え、あ、物理で殴られるんですね?」
神様に物理攻撃とか効かないと思ってたよ。
「神を創った創造神にな……だが、ワシらもその世界の行く末を見て毎日過ごしていると大変につまらんので刺激が欲しくなったのじゃ。」
「……つまり?」
「ほかの世界を覗くのがダメなら1人ぐらい連れてきて自分の世界で見る分には良いよね!?作戦じゃ。だからお主には今から、わしとの賭けに勝った神の世界に行ってもらわねばならん。」
色々ツッコミ所はあるけど……
「それって"神の創造神"様に怒られないんですか?」
「娯楽が少ないというより、ずっと存在しておると遊びにも飽きるからの……1000年に1度魂の譲渡は許可されておる。」
……だからって良いのかなぁ。
俺次はのんびり生きたいんだけどな。それこそ人のいない所で。
「そろそろ譲渡の時間じゃ~。もう暫くここで待っておると"彼奴"が来るからの〜」
そう言って地球の神様の爺さんは立ち上がり杖をつきながらドアに進む。
「えぇ……」
困惑している俺を置いてでていってしまったので、1LDKの部屋の窓から外を見る。爺さんは雲に飛び乗り、その雲が切り離されるとふわふわと飛んでいってしまった。
「えぇ……」
2度目の困惑と、急に襲ってきた少しの不安。考えても仕方ないか……ととりあえずコタツに座って緑茶をすすることにした。
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
キリ番懐かしいです。今はわかる人が少ないかもしれませんね。
当時は個人サイトを作るのが流行っていて、そのホームページに入ると、貴方は○○人目の来訪者です。ゾロ目になったら"キリ番"と呼ばれるもので掲示板等で教えてください。等と書かれていて
報告するとなにか特典が貰えたりしました。