4枚 兄登場
〈登場人物〉
朝倉 悠斗 高2
石田 玲汰 高3
石田 優太 24歳
学校が終わり、部活が終わり……雨の中俺と悠斗は家路についていた。
俺はスマホを触りながら、傘を片手に歩いている。
隣では、悠斗が
「歩きスマホ、ダメゼッタイ!」
と、連呼している。
――別に危なくなったら悠斗が助けてくれるしいいや。
と考えを放棄した俺はスマホで調べ物を続ける。
俺が数分前から調べていること。それは、
『高3の部活動について』だ。
俺の入っている部活は、文化部の写真部であり、部員は俺と悠斗の2人だけだ。
そこから、俺の部活関連の悩みが2つある。
1つ目は、『大学への受験勉強』だ。
中3の頃も俺は部活を3学期の始めまでやっていた。
だが、とある事件をきっかけに俺は部活に行かなくなった。
まぁ、それほど俺は受験に危機感があまり持てない行事なのだ。
周りの奴らはもう部活を辞めると言い出している。
そこから重なってくる悩みが2つ目の問題だ。
2つ目は、『写真部のこれから』だ。
うちの高校は部員が最低でも2人いないと、『廃部』にされてしまう。
だから、俺が今の写真部を出て行ったら、悠斗は部活を新しく探さなければいけない。
――だが、俺は悠斗なら大丈夫だと思っている。
今でも運動部からの勧誘は止まないし、助っ人のお誘いまで来ている。
だけど、あいつは全て断っている。なぜだ?
俺が考えに浸っている間、悠斗は心配そうにこちらを見てきた。
「――センパイ?なんか考え事?らしくないね」
「え?そんな顔に出てた?」
俺が自分の顔を指さして言うと、悠斗は〈こんな顔しながら〉とかいいながら、顔を歪ませた。
「センパイ。こんな顔で地面を見てたよ?そんなにやると、せっかくのイケメンが台無しだよ?」
顔を戻して、笑顔で言ってきた。
多分、今の顔は大げさにやってフォローをしてくれたのだろう。
なんだか、少し心が軽くなったように感じた。
「ありがとな……あ、そうだ。明後日俺の家で勉強会やろう」
「え?イキナリナニ言ってるんすか……」
悠斗は目を合わせようとしてこない。
そりゃそうだ。
悠斗は昔から運動は誰よりもできるが、勉強はそれと反比例にとてもできないのだ。
だが、俺はどうにか悠斗を誘うために思い出す。
〈最近。高1の復習問題が授業中出てて、俺死にそうなんだけど〉
「お前復習問題出てて死にそうだって言ってたじゃん
――何とかなってんだったらいいけど~」
俺がそう問いかけると悠斗は悔しそうな顔でこちら向いてゆっくりと頭を下げた。
「勉強を足し算から教えてください」
「それは俺が面倒だわ」
俺は笑いながら悠斗の言葉に対してツッコミを入れる。
そして、悠斗のルインに、
『土曜日、俺の部屋に11時。集合!』
そう情報を送り、悠斗がそれを見ると、ビシッと敬礼をする。
「了解した!」
そして、俺はスマホをしまい、玄関のかぎを開ける。
それに気づいた悠斗も慌てて自分の家の鍵を取り出す。
俺があえてそんな悠斗を待たず、いつもの挨拶を始める。
「じゃあまた明日な」
そう笑いながら言うと、悠斗も笑いながらドアに手を掛けこっちを見てくる。
「おう。また明日!」
そう言って、2人同時に家に帰った。
あの挨拶は、幼稚園の頃から俺がきっかけで始まっている。
さかのぼること14年前。
〈はいはい。悠斗。そろそろお家入るわよ~〉
悠斗は母親に背中を押されながら家に入っていこうとする。
俺も父さんに背中を押される中、何を思ったのか俺は大きな声で
〈またあした!〉
そう声を掛ける、住宅街を響き渡る勢いで声を出したからか、あの時は俺も驚いた。
(だれにいってるんだろ)
そう一回冷静になり、家に入ろうとする。
すると左隣りから同じく大きな声で
〈うん!またあした~!〉
そう返ってきたのだ。
顔も柵のせいで見えてなかったが、確実に悠斗だ。
そう確信できたことにも驚いている。
そんな、回想は置いておいて、俺は玄関の近くの棚にある鍵かけに鍵をかけ、靴を脱ぐ。
それと同時に、普段は点いていないリビングの電気が点いている事に気づいた。
俺が帰ってくる時間帯は必ず父さんは帰ってこれない。
――じゃあ誰だ?
そう疑問に思った俺は少し大きな声で
「ただいま!」
と声を掛ける。
すると、廊下の突き当り。リビングの扉が開いた。
「お。玲汰じゃん。おかえり」
そこに、いたのは俺の兄だった。
「優兄!久しぶり」
俺と6個離れた兄。石田 優太。
俺が今年で18になるから、優兄は24歳だ。
優兄は高校卒業と同時に家を出て一人暮らしをしている。
年に1度はここに帰ってきており『いつの間にか家にいる』なんてことが日常茶飯事だ。
「夕飯はうどんでいいか?家あさったら賞味期限近めのやつがあってさ」
「いや。食糧管理担当してんの俺じゃねぇし」
俺は笑いながら訂正した。
朝ご飯は父さん。
夜ご飯は俺が作ると決まっているが食料を調達するのは父さんなのだ。
すると、優兄もニヒッと笑った。
「じゃあ、着替えてこい。一緒に作ろうぜ」
そう言われた俺は、自室にカバンを置き、着替えをタンスから引っ張り出して1階に戻り、
リビングの机横で制服から私服に着替えた。
すると、優兄はキッチンの方から苦笑いしながらこっちを見てくる。俺が
「なに?」
と聞くと優兄は
「いやぁ……もしも、異性の人が家に上がってくるってなったら、そのリビングで脱ぐのやめろよ」
「?」
「その……まぁいっか」
そう言っている間に俺は私服に着替え終わると、優兄が手招きしていることに気づいた。
俺は手を洗い、優兄の方に行く。
「うどんって言っても色々あるけど、何系食いたい?」
「アハハ。そんなん、栄養管理士に任せるしかないでしょ」
優兄は中学校の栄養管理士をしており、『料理をする』なんて朝飯前だ。
だから、優兄が帰ってくるときは、基本ご飯は任せっきりである。
「じゃあ、つけうどんにでもするか~雨で体も冷えるしな」
そうして、夜の料理教室が始まった。
次回も玲汰目線で話が進むと思いますがよろしくお願いします
料理回になるかも…?
今回も読んで頂きありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ