3枚 依頼の難易度がレベチ
〈登場人物〉
朝倉 悠斗 高2
石田 玲汰 高3
シオリ 高1
6月の終わり。
今日の天気予報は、3日ぶりの晴天……と言われていたが、ただいま放課後の天気は
「土砂降りじゃねぇーか!」
「アハハ」
朝はあんなに天気よくって1日晴れるんかと思ってたのに、5限目辺りから急に……
『ゴロゴロ・・・・・ピカーン』
(⁉逆じゃね)
そう思ったのもつかの間、いっきに雨が降り始めた。
「ハァ。雨ってなるとそろそろ梅雨入りか~?」
俺とセンパイはいつもの部室で噂の依頼人を待っている。
武壮野高校は、スマホが使用できるので天気予報を改めて確認すると、
梅雨入りが発表されていた。
「うわ~梅雨入りか……俺雨に濡れるの嫌いなんだよ」
「あー……悠斗たしか。台風の日に外出て、翌日インフルエンザになって幼稚園最後の遠足出席
できなかったんだっけ?」
「わざわざ人の嫌な思い出をほじくり返すなよ」
半泣きの俺と思い出し笑いに浸っているセンパイ。
2人で机に座っていると、部室の扉がノックされた。
センパイが立ち上がり扉を開ける。
俺も立ち上がって、お茶の準備をする。
ガチャっと扉のあく音がすると、やはりそこには依頼人の姿があった。
「どうぞ。シオリさんですね。お待ちしておりました」
「し、失礼します!」
センパイは扉を閉めて、椅子を引く。
シオリさんは頭を軽く下げて、その席に座った。
「緑茶です。良ければどうぞ」
「ありがとうございます」
シオリさんが今回の依頼人だ。
この高校ではリボンかネクタイの色で学年が割り出せるようになっており、
『1年が黄色・2年が赤色・3年が緑色』
で、シオリさんは黄色だから1年生だと分かったのだった。
だが、制服のスカート、ズボン。リボン、ネクタイの選択は自由のため、
見た目だけで性別は判断ができないのだ。
まぁ、正直男だろうが女だろうが、俺はどーでもいい。
俺とセンパイも席に着き、依頼人が話し始めた。
「私の名前はシオリです。今回はポスターに書いてあった写真の依頼をしに参りました」
「はい。じゃあ、今回の被写体について教えてください」
「はい。今回お願いしたいのは、紫陽花です」
そう言って、スマホの画像を提示してくるシオリさん。
「これは……」
俺がスマホを見つめると、その画像には押し花があった。
「これは、私が作っている押し花です。それをよく本のしおりとして作り変えているんです」
「ほぉ。その押し花を今回俺たちに撮って欲しいと?」
センパイが質問すると、シオリさんは急いで訂正する。
「違います!あの……」
シオリさんは机の下に自分のスマホの画像を置いて話し始める。
長話になりそうだな……
「私。昔から花が大好きで、でも生け花とかお花を取っておく方法が試してもうまくいかなくて……
だから、押し花にすることにしたんです。
けど、色はすぐに落ちてしまうし、何よりきれいに保存が効かない。
だから、今回写真部の方に頼みに来たんです。お願いします」
シオリさんは勢いよく頭を下げる。
それだけ、花に対する思いが強いのだろう。
センパイは迷わず答えた。
「分かりました。ご依頼承ります」
その後、どこの紫陽花かや天気はどうするかなども話し合い、俺がメモを取ることになり。
数分間話し合った結果のメモを見るといつの間にか、このようになっていた。
【被写体】
アジサイ
【時間】
夕方(夕日の見える時間)
【天気】
雨あがり
【場所】
花弁公園(入ってすぐの花だん)
「――」
俺がメモと睨めっこをする中で、センパイはまだ話している。
「では、期間は7月中旬頃でお願いします。
できましたら、1年2組の連絡ボックスに茶色い封筒に包んでお渡しする形でいいですか?」
「はい。よろしくお願いします」
「では、今日はもう遅いので、お帰りになられて結構です。ありがとうございました」
「ありがとうございました」
「雨ですのでお気を付けて~」
そうして、部室のドアが閉まったことを確認すると、俺は勢いよくセンパイに質問した。
「センパイ!どーすんの⁉雨上がりっていうことはずっと外にいなくちゃじゃん!」
「まぁまぁ落ち着いて」
「俺雨嫌い!濡れるの!き・ら・い・!」
すると、センパイは溜息をついてから、俺の肩に手を置く。
「そもそも、俺が外にずっといるとでも思うか?」
あ。そうだった。元からこの人インドア派だった。
改めて言おう。
センパイは昔から室内を好んでおり屋外は目の不自由さが際立つといって好んでいないのだ。
そうして、俺は左腕で頭を掻きながら右手のメモを見つめる。
「はぁ~じゃあどーするよ。雨上がりのしかも夕方。花弁公園なんて。
クッソ駅の近くで、俺らの家の7㎞も先じゃねぇか!」
「こればっかしは神頼みだな。頑張って夕立の日を狙うしかない」
そう言って、部室の鍵と荷物を持って廊下に出たセンパイ。
俺も、自分の荷物を持って電気を消してから廊下に飛び出す。
「部室閉めるってことはもう帰るんすか?」
「この後雨がひどくなるらしいからな。スマホ見てないのか?」
俺が急いでスマホを見ると、『大雨注意報発令』とホーム画面にデカデカと書かれていた。
「はぁぁぁァ」
俺が深いため息をつくとセンパイはクスっと笑ってから、昇降口へと向かっていった。
「ちょっとでも、止まないかな……なぁんて甘えかな」
天気はしっかりと雨であり、もう苦笑いしか出ない。
センパイは隣で自分のカバンをガサゴソとあさっている。
何かを手に持ち、それを俺に渡してきた。
「悠斗お前、折り畳み傘とかねぇだろ。俺の使えよ」
「え?センパイは?――俺センパイと相合傘とかしちまったら、
明日女子たちに腹刺されちまいますよ~」
そう一人でボケをしているさなか、センパイはもう一つ傘を取り出す。
「ほら。さっさと帰るぞ」
傘を広げて、速足で校門へと向かうセンパイ。
――ホント容赦ねぇな
だが、そんな俺のボケをスルーしてくれるセンパイが俺は小さいころからとても好きだ。
「センパイー!待ってー……って走らないで!」
「アハハ~」
ちなみに彼らの中の『好き』は友情の方です。
幼稚園の遠足に行けないのは悲しすぎる(´・ω・`)
今回も読んで頂きありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ