14話 割れた眼鏡
〈登場人物〉
朝倉 悠斗 高2
石田 玲汰 高3
瀬名 輝香 高2
センパイとの勉強会から一夜明けた今日。
昨日は朝。
瀬名に促されてみた天気予報の通り雨は夕方3時ごろには止んでしまい、
俺とセンパイがお開きになる直前。4時ごろにグループルインがまた動いた。
その内容とは瀬名が写真が撮り終わったという事で、その写真は今日の部室で見せてくれるとの事だ。
正直、瀬名の腕前がどのくらいかは俺は分からないしそれはセンパイも同じだ。
だからか、今朝のセンパイのカバンの中には念のためかカメラが入っていたのが見えた。
そうして、いつも通り授業を終えてから部室に向かった。
俺はいつも部室に行くのが遅いから、先にセンパイが部室にいる。
「お疲れさまーッて。瀬名かよ」
「なんだ。先に来ちゃ悪かったか?」
そこにはセンパイではなく瀬名が先に部室に来ていたのだ。
センパイ以外の人が部室にいるとなんか変な感じだ。
そうして、荷物をロッカーに入れて俺は瀬名の正面の椅子に座った。
瀬名は大切そうにカメラの手入れをしていた。
俺は窓側に体を向けて足を組んだ。
――静かだ。
普段センパイと2人だけの部室では俺が話をジャンジャン振るから
こんな静かな部室にいるのはどこか居心地が悪かった。
そんな空気に耐えられなくなった俺は自分から独り言のように呟いた。
「お前のカメラ。アクションカメラだろ。意外とアウトドアとかするのか?」
俺が急に話し始めたからか、瀬名は最初は驚いていたがカメラに目を落とした後。
小さく口を開くと答えた。
「僕は家族で行くことはないけど撮影だとよく山とか川とか自然と触れる機会があってね。
その合間に記念撮影とかで使うから、防水性とかコンパクトな感じが気に入ったから買っただけ」
「――撮影?」
昨日俺とセンパイで話してた時も出てきた違和感だ。
日常生活内で使う言葉ではない。
俺の投げかけに瀬名は下を向いたまま何も答えなかった。
まぁ人間話したくないこともあるか……
「スマン。聞いちゃ悪かったか……それにしてもいい色だなお前のカメラ」
「えッ?」
瀬名は俺を輝いた目で見つめた。
淡いピンク色のカメラを持ったままの瀬名と俺は反射的に部室の扉がガラガラと音を立てて開いたのと同時に立ち上がった。
「すまん遅れた」
俺が目線をやると、少し息を切らしたセンパイの姿があった。
俺は椅子から立ち上がり、センパイに話しかけた。
「センパイ~どうしたんすか?遅刻なんて珍しい」
そう言ってセンパイの顔を見るとすぐに異変に気付いた。
センパイの顔にいつもあるはずのあの青色の眼鏡が無いのだ。
「眼鏡!センパイ!メガネ!」
俺が驚きのあまり語彙力をなくしているとセンパイは俺をゆっくりと席に座らせた。
その後、またセンパイも席に着いた。
そして深呼吸を置いた後、説明を始めた。
「取り合えず、本題から言うと、俺の眼鏡が壊れた。
なんでかって言うと、階段から落ちたから。
落ちた理由は、また眼鏡の度が合わなくなったみたいで一瞬前がボヤけて見えなくなったから」
「やべぇじゃん。眼鏡ないってことは……」
俺が言葉を詰まらせると、センパイは小さく頷いた後。
「今俺はほぼ目が見えてない。左目は元からだけど、最近右目も視力が落ちてきてたんだ」
「替えの眼鏡はないんですか?」
瀬名が不安そうな声でそう聞いた。
センパイは瀬名の声が聞こえた方向に顔を向けた後、ニコッと笑って。
「一応眼鏡の替えはある。あるんだけど、それが4階にある俺のリュックの中なんだ」
「じゃあ僕取ってきます!石田さん、3-3の4番でしたよね?行ってきます!」
質問しておきながら確信を持ったような顔で瀬名は部室を飛び出していった。
センパイも半笑いの状態で、部室の出入り口を見つめていた。
「俺。俺のクラスとか出席番号とか輝香に伝えた覚えないんだけど」
「ホント。どこで調べてんだか」
俺がまた悪寒を感じて震えるとセンパイは、いつも通りのトーンで話した。
「今はどうでもいい話なんだけど一応伝えておく。今度。父さんが1日休みを取ってくれるんだ。
それでその日に俺の家で輝香の入部記念パーティーでもしないか?」
「え?」
俺はセンパイの言っている事と帰ってくるという言葉の意味が分からなかった。
「いや。折角だったら、家族で過ごしなよ!
センパイパパだってお休みの日に家が騒がしいの嫌だろうし!」
するとセンパイは微笑むと優しい声で
「父さんの性格知ってるだろ?人が多い方が楽しむ人だし、呼んでくれって頼まれたんだ」
「そっか~なら少し考えとく」
俺が顔をしかめながら考え込んでいると、瀬名がセンパイの眼鏡ケースを持って入ってきた。
「これで合ってますか?」
「大正解。ありがとう」
そう答えるとセンパイはいつもの様に眼鏡をかけてニコッと微笑んだ。
輝香の情報網の恐ろしさと玲汰の落ち着いた雰囲気がかけて珠雷は満足です。
輝香の歓迎パーティはどのような行い方をするのか楽しみです。
今回も読んで頂きありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ