雪城冬香
本作は自身や身近な人々の体験を元に、“非現実の中に垣間見える現実”の世界を描いた作品です。物語が進行するにつれて徐々に明らかになっていく真実と共に、登場人物達の心理描写や価値観にも注目して読んで頂ければ幸いです。
子供時代は好奇心に溢れていて、変わったことや新しいことに出会うと心が躍っていた。分からないことは必ず調べる習慣のおかげで一般常識から雑学まで知識が豊富な大人になった。
初対面の相手と話すのは恥ずかしかったけれど、誰とでも仲良くしたい気持ちが強かったので勇気を出して声をかけているような少女だった。
完璧主義な負けず嫌いで決めたことは必ずやり遂げるまで諦めないという執念深さには自信があった。
人より要領が良く何事も習得が早かったため、上司から認められる分妬まれることも日常だった。実際祝ってもらうよりも呪われることの方が多かった。
仲間の成功をいつも自分のことのように喜び、悲しみは自分の傷として一緒に涙を流していた。人間はそういうものだと思っていた。
合理的に問題解決の策を練ることが得意だから何かと頼られていた。
第六感に優れていて、相手の第一印象で関わるべきか否かを判断できる洞察力を持っていた。
現在の私は周囲の人間とは常に一定の距離を保って付き合っている。他者に自分の家庭環境や生い立ち等を赤裸々に話すことは決してない。
理に適わないと判断した場合は例え権限を持った存在にも屈しなかったので、弱点のない怖い物知らずだと噂されている。
そんな自分のことは今もこれからも好きであり続けようと思う。
学生時代は日々学業とアルバイトに時間を費やした。現在は朝からアパートのフロント、夕方からは空港の案内係の仕事を掛け持ちしている日々だった。フロントには徒歩で出勤できるのがかろうじて救いだけど、さすがに1日の合計拘束時間が長い。身体を休められる時間は極めて少ないから、自由時間が取れれば寝て過ごした。休日に遠出をして買い物や外食を楽しむなどという発想はとっくの昔に遥か遠くに流されていた。それだから貯金はできている方だと思うのに、数年後の将来どころか数日後の未来についても計画を立てる余白が頭になかった。
というよりも、頭に余白があるといつも黒く塗りつぶされてしまうから嫌いだった。「先のことを考えられない」よりも「考えないように過ごしている」という表現が正しいのかも。
1作目を読んで頂きありがとうございます。長編連載作として更新していきますので今後とも宜しくお願い致します。次回から冬香の不思議な体験の数々をお楽しみください。