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止められぬ恋心

ローランドは意識を失っているアイリスを見つめていた。怒りや憎しみや悲しみやさまざまな感情を制御する事は慣れている。


 十歳の頃両親を失った時から感情のコントロールをして生きてきた。だけど今は怒りの感情を隠しきれなかった。守ると約束したアイリスがこんな姿になってしまったのだ。


 騎士の報告によると事件を起こしたあの男、ダノン男爵はカレン子爵令嬢に言い寄っていた。しかしカレン子爵令嬢は男爵が嫌いだったので冷たくあしらいそれに傷ついたダノン男爵が激昂し、カレン子爵令嬢が席を外した時に拉致し、たまたまアイリスに発見されたそうだ。


 カレン子爵令嬢の話によるとアイリスはスコップを手に戦っていたらしい。アイリスはどうしてこうなんだ。。ローランドはため息をついた。無事でよかったものの,万が一があれば私はどうするのだろう。。ローランドは考えるのをやめた。答えのない問いかけは神経をすり減らす。


「うっ」うめき声と共にアイリスの意識が戻った。

 


アイリスは目を開けるとローランドに似た天使が心配そうにこちらを覗き込んでいるのが見えた。


「ああ、神様、、哀れな私にこんな素敵な方をお使いくださって感謝します。」アイリスは呟いた。


 冷たい池に落とされて自分は死んでしまったと思っていた。だか善行を行ったアイリスに神がローランドの姿をした天使でサービスを行っていると思っているのだ。アイリスは手を伸ばしずっと触ってみたかった金色の髪に触れた。


「一度触ってみたかった、、柔らかい。キラキラして綺麗。うふふ」私は天使様の髪を触りながら天使様を見つめた。陶器のような白い肌に吸い込まれそうになる程綺麗な青い瞳。


こんなイケメンをこんな近くで見たことが無かった。私は天使様の頬に手を当てた。「天使様は暖かいのね」頬を優しくで触っていたら天使様の顔が赤くなってきた。可愛い!天使様が照れるなんてなんだか人間的!ニコニコしながら何かおかしいと思った瞬間天使様が私の手を握ったのだ。


「えっ?!天使様?」私は目を見開いた。天使様じゃなく目の前にいるのはローランド公爵だった。

 

 アイリスは握られた手を見つめそしてローランドを見た。ローランドは笑い始めた。

「アイリス、やはり君は予測不可能だね」


全く訳がわからない。まさかここは天国じゃなくて現実。。。あまりの衝撃に私は後ろに倒れそうになった。右手はローランドが握っていたので左手で体を支えようと動かしたら激痛が走った。

「痛っ!」慌ててローランドがアイリスの体を支え「アイリス、腕が折れているから動いてはだめだ」と言った。

 

 距離が近い、私が後ろに倒れないようローランドが腰に手を回し抱きしめるように支えてくれている。目の前にいるローランドはキスが出来るほどの至近距離で私の腕が折れている事を教えてくれたのだが、そんな事はどうでも良くなるほど目の前にいるローランドは美しいくカッコよかった。私は今死んでも満足だと思った。

 

「トントン」ドアをノックする音がして「ローランド様クリフでございます」とクリフ執事がドアの向こうで声をかけて来た。「入りなさい」ローランドはクリフの入室を許可しクリフが入ってきた。


私は体を支えてくれているローランドを振り解き恥ずかしさのあまりシーツに中に隠れてしまった。シーツの中で息ができないほどローランドにドキドキしている。ローランドに抱きしめられた私は痛みを忘れるほど幸せを感じた。


クリフはシーツの中にいるアイリスの様子が気になったがローランドが付いていたので大丈夫だと思いローランドに報告をはじめた。


 「パーティーは無事閉会しました。ローランド様がいらしゃらない間はコンラッド様がお客様をおもてなしくださってお客様も大変満足されておりました」


 「コンラッドには貸しができたな」ローランドは笑いながら言った。「コンラッド様はローランド様に次ぐ美男子の従兄弟様でございます。ご令嬢達も満足しておいででしたから貸しも良いのではないでしょうか?」クリフも笑って答えた。


「さて、ダノン男爵の件ですが、、、貴族裁判にかけるとカレン子爵令嬢が言っておりましたが、その場合アイリス様の証言が必要になります。いかが致しましょう?」クリフはいきなり重い話を始めた。


 アイリスはシーツの中であの男を思い出して身震いをした。腕を捻じ曲げられ蓮池に投げられたことを思い出し恐怖に体を丸めた。ローランドはシーツの中のアイリスがダノン男爵を思い出し怖がっている事に気がついた。


「クリフ、その話は今する事ではない」ローランドはダノン男爵の話を止めた。ローランドはシーツに潜って丸まっているアイリスの頭に手を置き「何も心配することはない。今日はゆっくり休みなさい」と言ってシーツにくるまっているアイリスの頭を撫でた。

 


 あれから三日三晩高熱と痛みにうなされたアイリスは四日目に初めてスープが飲めるようになった。ジャネットはそんなアイリスを見て「私がアイリス様のおそばにいればこんなことにならなかったのに」と言いながら涙を流した。


私は折れた左腕をさすりながら数ヶ月庭園のお手入れがままならない事にショックを受けていた。サウザリー公爵家にお世話になっていて働きもしていないのに衣食住を提供してもらっている事を気にしていた。少しでも働いてお返ししたいと思っていたのにこの様だ。


私は途方に暮れてしまった。それにあの日ローランドが冷たい睡蓮池に飛び込み私を助け、この部屋まで運んでくれたと聞いた。覚えていないことなので(天使様以外)仕方のない事だがこれは問題になる問題だ。


 腕が使えないアイリスは毎日散歩をするようになった。最近邸宅の東にある花畑がお気に入りの場所だ。冬でも日があたると暖かいこの場所は丘のようになっておりそこには年中白いマーガレットのような花が一面に咲き乱れている。


遠くからみるとその花が雲のように見えとても幻想的な風景になる。その丘からはお城が一望出来る。そのお城の主はサウザリー公爵家の宿敵と聞いた。初代サウザリー公爵の父が長引く戦争を終わらせ王位につく前日に実の弟に暗殺され、その末裔が今の王家だと聞いた。


本来ならローランドが正統な王家の末裔であのお城の主なのだ。その話を聞いとき納得をした。ローランドの存在感は王そのものなのだ。


 それ以来サウザリー公爵家と王家はお互いに一瞬の隙を見せれば潰される不安定な関係が千二百年続いているそうだ。

 

アイリスはローランドの毎日がそんな不安定な状態でいるとは思っていなかったので何か力になれたら、、と思っている。だけど結局なんの力になれない事が残念だった。


 私は王城に向かって「王家を呪う祈り」なるものを行った。内容はその王冠はサウザリー公爵家のものだから返しなさい。返さなければ異世界の乙女の不幸を王家にもたらす!という勝手に作った特製の呪いだ。私は花畑に来るたびにその呪いの祈りを行った。

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