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ローランドの興味


 ああ、やってしもうた!!!!!

私は部屋に戻りベットの上で悶えていた。よりによってローランド公爵に物申してしまった!!いやその前に会ってはいけない人に会ってしまった!!!頭に葉っぱ乗っていた!!


アイリスは数々のミステイクを思い出し発狂しそうになっていた。


 しかし正直言って少し傷ついた。いつも紳士でいた執事のクリフが私を突き飛ばしローランドを守ったことだ。私は彼らにとって厄介で縁起がわるいのか、、、。この世界に来てみんなとうまくやりはじめた途端これだ。


やっぱり私は異世界の人間でクリフをはじめ全員が私を警戒している事はわかってはいるが、その現実を目の当たりにすると悲しくて仕方がない。


 この世界でも独りぼっち。私はやっぱり独りぼっちなんだ。涙が溢れてきた。私は声を殺して泣いた。



 ……「今日の感謝祭は昨年よりも規模が大きかったですね。」ローランドの護衛騎士アンドリューが馬車の中でローランドに話しかけた。アンドリューは護衛騎士だが普段は騎士団の訓練でローランドに付き添う事があまりない。


公的な時だけ護衛騎士としてローランドに付き添っている。ローランドの家系は元々騎士だったので実はローランドの腕はアンドリューをも凌ぐ。しかしその腕前を隠すことも駆け引きの一つだ。

 

 「そうだな、なぜあんな規模だったのか気にはなるな」ローランドが答えた。王家の財産はさほど無い。サウザリー公爵家は王国の金庫番と呼ばれるほど潤沢な財産があり、国王を支えている。その国王がサウザリー公爵家に頼らず開催する感謝祭で昨年より規模を大きくするとは考えられないことだ。


「何かがおかしい」ローランドはアンドリューに調べるよう命じた。



 ローランドは邸宅に帰り窓の外を眺めながら今朝のことを思い出した。真っ直ぐ見据える強く意志ある瞳。異世界の乙女アイリス。


大切にしている楓を許可なく触り、剣を突きつけても気にしないあの態度、クリフに突き飛ばされてドレスや髪に葉っぱがついても気にせず立ち上がる姿、命を懸けて楓の病気を治すと言った覚悟、姿形を変えても大切なものは変わらない,大切の仕方は一つじゃ無いと言う言葉、言いたいことだけ言ってサッと立ち去る度胸。


 真っ赤な紅葉の中でグリーンのドレスと紺色の髪が輝いていてとても美しかった。髪についていた真っ赤な葉が彼女の意志の強さを表すように見えて持って帰らずにはいられなくなった。ローランドはアイリスに興味を持った。




 あーー最悪の目覚め。昨夜大泣きをしたおかげで目が腫れてしまった。私は目を冷やそうと思いジャネットを呼んだ。


 「アイリスお嬢様本日よりお仕えするシルビアと申します。」初めて見るメイドが挨拶をしてきた。「ジャネットは?」と聞くと「ジャネットは昨日お嬢様の付き添いをせずローランド様とお嬢様を会わせてしまった罪で鞭打ちの上解雇となりました。申し訳ありません」シルビアは顔色を変えず言った。


「え?」

 全身の血の気が引いた。私の勝手な行動のせいで何の罪もないジャネットが罰せられる?理不尽よ!怒りで体が震えてきた。寝巻きのままだったが飛び起きてジャネットを探そうと部屋を出る寸前に誰かがドアをノックし入ってきた。


制服を着ていてもわかるほどの筋肉質で身長が高く、赤い髪をしたベビーフェイスの男性が部屋に入るなりシルビアに声をかけた。


「何事だシルビア」

「ヘンリー副団長様、アイリス様が取り乱したようです」シルビアは慌てて姿勢を正し報告した。その男性はゆっくりとアイリスの方を見て言った。

「アイリスお嬢様、本日よりクリフ執事の代わりにお仕えするサウザリー騎士団副団長のヘンリーと申します。何か慌てているご様子ですが何かありましたか?」声は優しくあるけれど力強く有無を言わせない圧力があった。


「ジャネットを連れてきてください」私は言った。「アイリスお嬢様、ジャネットは罪を犯したのでその罪を背負わなければなりません。どうぞお構いくださるな」ヘンリー副団長は少し呆れた顔をしながら私に言った。


 ああ、話にならない、ジャネットが何の罪を犯したの?感覚がここまで違うと分かり合えることは何一つないわ。

私は突然全力疾走で部屋を出た。階段を降り中央にあるエントランスを駆け抜けて別邸から本宅に裸足で走っていった。


この世界の淑女は寝巻き姿で靴も履かず素足で走って表に出る事は絶対にしない。だからアイリスの行動はあまりに突然の出来事でヘンリーもシルビアも動けなかった。「まずい!」ヘンリーは慌ててアイリスを追いかけていった。

 

 アイリスは本宅の正面ホール入り口前でヘンリー副団長に追いつかれた。「アイリスお嬢様!!何をされる?!!」ヘンリー副団長は鬼の形相でアイリスの腕を掴かんだ。寝巻き姿で走って髪が乱れているアイリスの姿は不思議な迫力があった。「ローランド様!ジャネットを返して下さい」」アイリスは必死になって叫んだ。


 ジャネットは、最初は私の事を怖がっていた。恐ろしい異世界の人間の世話を押し付けられて震えながら紅茶を出してくれたあの日から、一生懸命に仕えてくれた。特に会話なんてしなかったが紅茶を出す手が震えなくなったのを見て本当に嬉しかった。何か特別なことは出来ないけど、一人でゆっくりする時間をあげたいと思いあの時もお供するといったジャネットを無理矢理休ませた。それがこんなに罪になるなんて。。「ごめんジャネット、私が悪いんです!」私は泣きながら言った。


「アイリスお嬢様、あなたはここに来ていい人間ではありません。今すぐに別宅にお戻り下さい」ヘンリー副団長は怒りを抑えながら私に言った。「戻りません。私も罪を犯したので彼女と一緒に罰を受けます!」涙を流しながら私はヘンリー副団長を睨み一歩も譲らない姿勢を示した。ここで負けたらジャネットと二度と会えない。


 そんな頑なアイリスに嫌気が差したヘンリー副団長はとうとう感情を爆発させてしまった。

「あなたが居るせいでみんなが迷惑をしているのがどうしてわからないのだ!!」

私はその言葉が胸に刺さって何も言えなくなった。


「何事だ!」


 突然本宅の入り口が開かれクリフ執事とローランド公爵が現れた。

「ハッ」ヘンリー副団長とシルビアは姿勢を正しローランドに頭を下げた。


「一体何があったんだ?」クリフはヘンリー副団長に尋ねた。ヘンリー副団長はことの経緯を説明した。

 ローランドは黙って寝巻き姿で泣いているアイリスを見ている。


 クリフが「ローランド様お出かけ間際に失礼致しました。こちらで処理をいたしますのでこのままお出かけ下さい」そう言ってローランドをアイリスから遠ざけようとした。ローランドは微動だにせず黙ってアイリスを見ている。


 私は悲しくて悔しくて泣いていた。大粒の涙が頬を伝わり地面に落ちてゆく。

「この世界は貴族が正義なんですね。ジャネットが悪い?悪いのはここに突然現れた私です。私さえいなければ。。こんな世界こちらから出て行きます」私は大粒の涙を流しながら震える声で言った。出てゆく方法がわからないけど死んだら終わる。私は近くにいるヘンリー副団長に近づいて腰の剣を取ろうとした。この剣で胸を突けば死ねる。


「アイリスやめなさい」今まで黙って見ていたローランドがアイリスに近づきその手を掴んだ。「ここから出て行かないでください」ローランドはアイリスの目をみて優しく言った。


「あなたはこの公爵家で尊重されなくてはならない人だ。私を守ろうとするあまり家臣達があなたを追い詰めるようなことをしてすまない。責任は全て私にある。もし今後もあなたを傷つける人間がいるならば私があなたを守ります。ジャネットはあなたの元に返します。どうか数々の無礼をお許しくださいアイリス」


 ローランドはアイリスの手を自分の額に当ててアイリスに跪き許しを乞った。

アイリスは突然のことに驚いて言葉が出てこなかった。


 その姿は公爵家当主として責任を取ろうとしている姿だ。一番私を避けてもおかしくないローランドが、私を守ると宣言した。クリフをはじめヘンリーは慌ててローランドの後ろで同じように跪いて私に対する無礼を詫びている。


 ローランドは、大粒の涙を流しながら「はい」と頷くアイリスを見て不思議な気持ちになった。この世界にこんなに綺麗な涙はあるのだろうか。


ポロポロと地面に落ちてゆく涙がもったいなく思えてアイリスの顎先にふれ下に落ちようとする涙を指先で拭った。ハッと我にかえり慌ててポケットからハンカチを取り出しアイリスの手に持たせた。


アイリスは一瞬何が起きたのかわからなかったが、渡されたハンカチで涙を拭いて恥ずかしさを誤魔化した。ローランドはクリフの方を向き、ジャネットの件を指示し、ヘンリー副団長に「ご苦労だった」と声をかけた。


そしてもう一度アイリスの方を振り返り微笑みかけて待たせてある馬車に乗り込んだ。

 

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