2024年2月
2月も今日は何の日!お題はこちらを使います。
https://shindanmaker.com/1182361
「ただいま」「おかえり」遅くまで仕事をしてきた貴方は複雑なにおいがする。タバコ、誰かの香水、インク、もちろん貴方自身の体臭も。
——何か辛いことがあったの?
強がりな貴方には聞けないけど知ってるよ。そんな日は匂いが違うの。笑顔で赤色のスコップを握る休日の貴方はお日様みたいな匂いなの。
2月1日はニオイの日です。【赤色のスコップ】
言葉少なにパートナーを思いやる人の胸の内。心身の調子によって人間の匂いは変わります。口には出さないけど、ストレス臭さえ愛しい。でもやっぱり幸せを感じている時の匂いが好き。
相性が良い相手は匂いでわかると言いますが、どうでしょう?人間だって動物ですものね。
「お、白髪」
「うっさいな!」
「おっかねぇ」
俺の嫁さんにすると宣言して十五年。そりゃお互いに老いのサインも出るだろう。
お前は白髪を見つけると抜いてしまうけど、俺には髪に輝く星に見える。艶やかな髪に見え隠れるそれが増える度に、俺たちの重ねた時間の長さを噛み締めてるの知らないだろ。
2月2日は夫婦の日です。【髪に輝く星】
夫夫の日ということにもしましょうか。
1月31日のチューリップの日に書いたケンカップルの二人のその後です。いつまでも可愛い自分でいたいから老いを隠したいと白髪を抜く泣き虫と白髪すら愛しいと思っているけど言わない俺様。結局は仲良くケンカをし続ける二人でした。
「28……29……」
真剣な顔で豆を数えながら食べる横顔がカッコいい。
「今日大豆の日か」
「いや、そこは節分だろ」
呆れた顔をされてムッとする。
「いいじゃん別に。じゃあお前はちゃんと節、分けてんの?」
「屁理屈」
「どっちが」
何年いても阿吽の呼吸でズレる俺たちはある意味相性バツグンか。
2月3日は節分で大豆の日です。【阿吽の呼吸でズレ】
昨日に引き続きケンカップルの二人。軽薄な俺様なくせに歳の数だけ豆を食べる感じ、絶対おばあちゃん子に違いない。仲直り後は二人で巻き寿司を食べます。丸齧りしようとする泣き虫の分も容赦なく輪切りにするでしょう。「喉に詰まったら危ないだろ」実は心配性です。
一人用の宇宙船が急に騒がしくなる。
船内を赤く染めるエラー信号と瞳の彗星に愕然とした。これなんだ?
ドーム型の窓に自分の瞳を映せば、左目の中には確かに美しい尾を引く星が光る。
窓の向こうに笑顔で漂う不思議な男がいた。
「初めまして西から来ました。お近づきの印です」
瞳の中の彗星が⁉︎
2月4日は西の日です。【エラー信号と瞳の彗星】
西のに行くと幸運がある日であり、西から来た人と仲良くなれる日だそうです。
宇宙に行ったら方向感覚が狂ってしまいそうですね。(西から来たと言われましても……?)瞳の中に彗星まで飛ばされて、大混乱中の宇宙飛行士。真っ暗な宇宙の中で急に人が漂っていたら心臓に悪い。
朝から晩まで勉強、勉強。留学生だから仕方ないけど、最近の恋人は忙しすぎる。
「宿題大変?手伝ってあげようか?」
「だいじょうぶです。じぶんでやります」
「見せて?」
「だめです!みないでください!」
ごめんね、パソコンの画面見えちゃった。
検索欄「好きだよ」「伝える」「バレンタイン」
2月5日は日本語検定の日です。【検索欄「好きだよ」】
今日、このお題が出て嬉しかったです。外国人に「日本語でアイラブユーはどう言うの?」と聞かれることが多いので。愛してるとそのまま言うのも良いけど日本語勉強中の人が自分らしい言葉を求めて他の表現を一生懸命探していたら、すごく嬉しいんじゃないでしょうか。
言の葉の呪いを信じる?
見えないのに、いつの間にか縛られている。
貴方を見ていると言の葉の呪いを信じ始めてしまう。
あれがやだ、これがやだって言葉が貴方を蝕む前に、私が愛で包んであげる。
『いつもブログを拝見しています。今度、ご自宅に伺います。今のままでは私の思いが十分届かないので』
2月6日はブログの日です。【言の葉の呪い】
愚痴ブログの主にロックオンしたストーカーが甲斐甲斐しく世話をしますが、別に前向きにしたいわけじゃない。ストーカーの正体は現代詩が好きな国語の先生。「この怨念のこもったリズム感が最高です!特に先週のここなんか……」「ヤメロ声に出して読むな!恥ずかしい!」
「これがフナ」
ビチビチ動くものが手に押し当てられた。
「うお、ぬめる。ほんとだ。フナはヒゲがない」
「ちゃんと心の美術館にしまっとけよ」
ぶっきらぼうに呟く柄にもない言葉がくすぐったい。
「意外とロマンチストだよな」
「は?」
「お前のそういうとこ好きだよ」
顔赤いぞ。見えないけど。
2月7日はフナの日です。【心の美術館】
盲目の男をデートに誘った男が自分が好きな魚釣りのことを一生懸命説明してフナを触らせています。フナと鯉の違いはヒゲのあるなしで区別できるそうです。魚がビチビチはねて両手がぬめるムードのないデートだって好きあっていれば大丈夫でしょう。見えない男の方が大胆です。
「武士の家に椿は植えないんだ」
真似っこ上手の君は新聞紙で作った刀を手に元気に跳ね回る。時代劇に夢中かな。
「椿は花が落ちやすいからね。椿の花を落とさぬように優しくしてください、と言うこともあるんだよ」
君が怪我をする前に大人しくさせようと言っただけだったんだ。
おや、顔が赤いね。
2月8日は椿の日です。【真似っこ上手】
Rシーンを描かずに椿の花が落ちる絵だけを載せてある漫画を見た時には感動しました。
少年はこの表現を知らなかったのでしょうが、頭ごなしに怒ったりせずに雅な事を言うお兄さんに心を掴まれてしまいました。初恋の思い出に椿。いつか思いは成就して花は落ちるのでしょうか。
移動教室の授業中、机に描いた落書きは力作で消すにはもったいない出来だった。シャーペン書きだし嫌なら消してくれ、とそのままにしておいた。
翌週俺の力作は残っていた。
『ライオン上手すぎ。漫画家になったらサインくれ』
吹き出しの中に書かれたメッセージがくすぐったい。
「ポメなんだけどな」
2月9日は漫画の日、治虫忌です。【消すにはもったいない】
高校生が選択授業で移動した先の教室で落書きをした話。吹き出しのメッセージになんと答えるのか。それともイラストを足すのでしょうか。
漫画もイラストも言葉なしに語れるところが素敵だと思います。
他人の金で生きて行く。
若い時に決めた通りの人生を歩んできた。
抱いて抱かれて、ヘラヘラ、楽しく、気持ち良く。
そんな俺に本気の恋をしたのは扇風機頭の男だった。酒も飯も望むまま。なんでもくれるアイツに「苗字ちょうだい」って言ったらどんな顔するかな。
いや、待てよ。あれは苗字か?
2月10日はニートの日です。【苗字ちょうだい】
自作短編「ヘラヘラ遊び人が扇風機男に会ったなら」よりhttps://novel18.syosetu.com/n6440ii/
3/10J.Garden55にて書き下ろしを加えて同人誌を発行予定です。
「食べ過ぎた。絶対これ血管まで蕎麦が詰まってる」
「動静脈に蕎麦が流れる?」
「あ、待て。医者脳は黙ってろ。そういうのいらん」
「キラキラと光輝く蕎麦があなたの体内を巡る様子は絶景でしょうね」
「引っ込め、変態脳。医者のがまだマシ」
「血管に蕎麦が流れたら即詰まります」
「うっせ!」
2月11日はわんこそばの日です。【静動脈キラキラと】
わんこそばを食べ過ぎた男の恋人は変態医師。男を溺愛しています。表現上の矛盾が気になる専門家ならではのツッコミっていいですよね。
お題は静動脈ですが、動静脈が正しい言葉のようなので変更しました。また二つに分解してあります。
『日本で最高の食べ物に出会ったよ。君にもぜひ食べて欲しいんだ。知ってるかな?』
会社を経営する米国人の恋人は僕にそう言って、午後0時、迎えにきました。
すき焼きかな、焼肉かな、お寿司かな?
きっと彼のことだからご馳走を用意してくれる筈と期待していました。まさか、レトルトカレーとは。
2月12日はボンカレーの日・レトルトカレーの日です。【午後0時、迎えにきました】
アメリカではあまりレトルトの食品を見かけません。代わりに冷凍食品が充実しています。冷蔵庫が2台ある家とかザラです。私はパスタソースやカレー○シェを気に入って持ち込んでいましたが、米国人は「何これ美味しい……」と驚いていました。
僕の大切な人は生まれてくる性を間違えた。
もう気にしていないというけど貴方を傷つける刃はそこらじゅうに潜んでいる。アンケートの性別欄なんて無くなってしまえばいいのに。
「いつか好きな性を選べる日が来るといいね」
「君の姓かしら?」
目を丸くする僕に貴方は舌を出す。
本気にするからね。
2月13日は苗字制定記念日です。【君の姓かしら】
結婚後に互いが同じ苗字を名乗る文化とそうではない文化がありますね。米国で出会った韓国人の方は「アメリカ式にしたの!」とお揃いを喜んでいました。一緒でも違っても、それぞれが幸せに生きていける方法があることを願います。姓も性も。どんな人にでも幸福を。
幼馴染?腐れ縁?同居人?
関係を聞かれると答えに困る男はアレが欲しい、コレが欲しいとすぐに強請ってくるのに俺があげたいものだけは絶対に欲しがらない。
——指輪はいつくれるの?
夢の中のアイツは素直にそうせがむけど、現実は違う。色々したって恋人じゃないもんな。
もう勝手にはめちゃうかな。
2月14日はバレンタインデーです。【指輪はいつくれるの】
ズルズルと居心地の良いただれた関係を続けているヘタレ男とズルい男の話。指輪だけ強請らないのは、なぜなのか早く気がついて。心底欲しいからに決まっているでしょう。恒例のデパート催事で買う高級チョコレートと一緒に指輪も用意してしまえ、ヘタレ男。
↓アイツの視点です。
律富さん@_rittonに描いていただいたこの子のイメージです。
(https://x.com/aomannen1108/status/1757549043709092249?s=20)
いくらなんでも鈍感すぎる。
欲しいものはなんでも手に入れる俺が、理由もなくずっとお前と一緒にいると思ってるの?
残念ながら時間切れ。
お前の告白チャンスは、もうありません。
ダサいとか派手だとか文句言うなよ?
俺の選んだ指輪はお前の左手薬指専用だからはめとくね〜
ホワイトデーが楽しみ。
「絶対オレのこと忘れんなよな!」
春から東京の大学に通うから離れ離れになるとわかっていたのに、新幹線のホームでは周りの視線を集めて大号泣した。
「毎日連絡してくんなきゃ小指を切る!」
「先輩、受かってから言ってください」
「冷たい!薄情者!!」
春一番が先輩の追い風になりますように。
2月15日は春一番名付けの日です。【小指を切る】
泣き虫先輩×落ち着いて見える後輩。本当は後輩だって気が気じゃありません。先輩の努力を知っているから受かってほしいけど、浪人したら同じ学年だと想像したこともきっとあるでしょう。そんな邪念は春一番が吹き飛ばしてくれますように。がんばれ受験生とその家族
何の相談もなく姿を消したお前は俺のことを何にもわかっちゃいない。
老舗和菓子屋の跡取りなんてお前といるためにならいくらでも投げ出したのに、勝手に身を引くな。
飴と一緒に打銜むのは、やりきれない気持ち。
休憩中の腑抜けた俺に「納品です」と訪ねてきた寒天屋の新人は懐かしい声をしていた。
2月16日は寒天の日です。
‘俺’のことをよくわかっていたからこそ、今ある立場を捨てさせずにどうにかして側に居ようと考えて寒天屋に就職した恋人が会いに来る話。本当は悲しくて寂しくて’お前’が恋しいけど、耐えきれないので怒りに変えて耐えていた‘俺’の涙腺が崩壊するまで、あと五秒。
【飴と一緒に打銜む】
打銜
くくむ①口に入れてのみこまずにいる。ふくむ。②恨みに思い、忘れずにいる。
[古語」つつむ。くるむ。
新選国語辞典第十版、小学館発行より
姿虚ろで触れた感触さえないが確かに存在していた。私の情熱の全てと言ってもいい。寝る間も惜しんで向き合った時間さえ幻というのか。否。そんなことは絶対に受け入れられない。
「何もしてないのに……」
「バックアップは取られていないということですね。残念ながら作業データは残っていません」
2月17日は電子書籍の日です。【姿虚ろう→虚ろに変更】
電子書籍発行のための作業データが飛んでしまった人と問い合わせを受けたカスタマーセンターの人の話。ユーザーエラーの一種にPEBMAC(モニターと椅子の間にある問題)という言葉があるそうです。この場合は「何もしてない」のが問題というやつですね。マメな保存大事。
「タバコ臭い」
「さっき吸ったからな」
「俺と会うのに?」
「お前と会う前だったから」
「最低」
「口寂しかったんだからしょうがないだろ?」
「わ!」
あっという間に壁に押し付けられると煙の匂いに囲まれる。
「やめろ」
息の仕方もわからないのは俺が嫌煙家だから。それ以外に理由なんてない。
2月18日は嫌煙運動の日です。【息の仕方もわからない】
果たして喫煙家の口寂しさは解消されるのか。
タバコの匂いが嫌いなのは、一人でいる時に男と同じタバコの匂いが他人からするとドキッとするからというのは秘密です。どちらも捻くれ者の男友達以上恋人未満の二人は牽制し合うだけで素直に気持ちを伝えられないまま。
可愛い恋人といれば吸い寄せられるように顔を近づけてしまう。吐息がかかるほどの距離で静止すれば、すぐに柔らかい感触が唇に触れた。もっと深く、と求めれば絡みつく舌の味がいつもと違う。
「この味嫌い」
「あなたが仕向けたんじゃん。嫌ならやめる?」
まさか。いつもの味になるまで舐めるだけ。
2月19日はチョコミントの日です。【あなたが仕向けたんじゃん】
チョコミント味は苦手な人と大好きな人にぱっくり別れる味の一つではないでしょうか。このカップルもそんなふたりです。好きな人とのキスはなぜか甘く感じて大好きなのにチョコミントに邪魔されて不機嫌な男。いつもより執拗なキスになります。きっとくせになる。
——早く●●でおくれ
若いからと押しつけられた蔵の片付け中に見つけた古い書き付けに背筋が冷えた。肝心なところは掠れていたがそこに入る二文字は不幸を願うものだろう。
「選んで?かな。告白の答え待ちかもね!」
手元を覗き込んだ君が能天気なことを言うから緊張が緩んだ。
「君が伴侶で良かった」
2月20日は夫婦円満の日です。【早く●●でおくれ】同じものを見ても全く真逆の方向に想像が膨らむ夫夫の二人。違うタイプだからこそ一緒に幸せになれる、と互いの違いを愛せるのなら豊かな人生になることでしょう。鏡合わせのように似たもの夫夫か凹凸がピタリとハマる真逆の夫夫か。ベストカップルの形は様々ですね。
——×××
「それ、何?どういう意味?」
聞こえないふりはもうやめる。
時折お前が口の中でそっと呟いているその言葉は一体何なのか。ずっと気になっていた。
「人の名前、っぽい」
「誰?」
「大切な人だったのは覚えてる……でもわからない」
嘘つき。
その言葉を言うとお前は空っぽな顔になるんだよ。
2月21日は国際母語デーです。【大切な人だったのは覚えてる】
自分の育った言葉、母語が通じない世界に行ったなら、自分で呟くしか懐かしい音を聞く方法はありません。異世界に転移して言葉がわからない中で健気に頑張る男とそれを見守る男の話。大切な人とは誰なのか。言語の壁がある異世界転移の話は切ないものになりそうです。
欲しくて欲しくて堪らない。
夢でも現でもなんでもいい。
俺は子宮が欲しくて堪らなかった。
もしも子どもを宿すことができたなら、α王の寝所に上がり人生一発逆転の好機に恵まれるのだから。
βで男の俺が「子が出来ないなら丁度良い」と王弟に目をつけられ慰み者になった途端「あなたはΩです」だと?
2月23日妊婦さんの日で夫婦で妊活の日です。【夢でも現でも】
後継者問題を複雑にしない為に、王弟αには子作りを認められていない国の話。運命の出会いにより子を成さないはずの王弟の相手がオメガになったとしたら悲劇の始まりでしょう。共に運命を感じ絶対に手放せないと思いながらも甘い香りは漏れ出してしまう。
番いたいがうなじを噛んだらオメガとバレて、きっと有無を言わさず引き離されてしまいます。番を失ったオメガのことなど国は少しも気にしないでしょう。それより平和な世が大切ですから。薬を秘密裏に調達し、ヒートを誤魔化し、子が出来ないように王弟とオメガは細心の注意を払います。
もちろん番いたい、子を成したいという本能はありますが、それを諦めることこそが二人が一緒にいるための愛の証でした。しかし、なかなか子が出来ない王に焦れた王弟は代わりにオメガと子を成そうとします。避妊薬もなく襲われたことに、オメガは裏切られたと思うでしょう。
もう関係を終わりにしたいなら、はっきりと言って欲しかったと傷ついたオメガは脱走を図ります。フェロモンを抑える抑制剤もなく、煌びやかな服を着て、街を彷徨う世間知らずの訳ありオメガなど裏社会の人間から見れば、恰好の餌食です。
「綺麗なうなじの御貴族オメガ様を嬲りたいやつに高く売ってやるよ。成り上がりのゲスな商人か、マフィアの妾か。せいぜい可愛がってもらえ」奴隷商が勿体ぶってオメガの売値をつりあげる間に王弟アルファはオメガを救えるのでしょうか。ヒートが来たら他のアルファの番になってしまいますから急げ。
「かわいい時計。お子さんが好きなの?」
いい年の男が月光仮面の描いてある時計なんかしていると大抵そう言われる。
「いえいえ…」
曖昧な言葉で濁しながら捲っていた袖で時計を隠すが、それは恥ずかしいからじゃない。
時計の文字盤にのせているヒーローは俺だけのものだから。見せたくないだけ。
2月24日は月光仮面登場の日です。【文字盤にのせて】
イラストレーターの恋人にねだって描いてもらった絵を時計にした男の話。月光仮面に似せてあるけど、本当はイラストレーターの恋人の似顔絵になっています。指輪よりも恋人の描いたヒーローに見守られていたいのでした。
朝から晩まで働いて、週末がきたってどこかへ出かける余裕もない。そんなギリギリの生活だって、追われることもなく、お前が隣にいるからそれで良い。やっと俺だってまともになれたと思ったのに「母さん元気?」と電話するお前の声に夢心地が覚める。そうだ、違う。俺とお前は似ているようで違うんだ。
2月25日は親に感謝の気持ちを伝える日です。【夢心地が覚める】
今は二人で同じ境遇にあるが自分にはない親からの愛情が‘お前’にはあるのだと思い出し、打ちのめされる男。同じでなければいけない、なんて誰も言っていないのに少しずつ後ろめたくなっていきます。自分は相応しくない、という思い込みが邪魔をします。
学校帰りに見る夕焼けを素敵な眺めだと思っていたのに、いつの間にか色褪せてしまった。
「大人になんてなるもんじゃないね」
久しぶりに会った君にそう言えば、僕を振り返って笑った。
「お前はちっとも変わらないぞ?」
あぁ、やっとわかった。
君と重なる景色が好きなんだ。君が包まれているから。
2月26日は包む、ラッピングの日です。【重なる景色】
やっと自分の恋心に気がついた‘僕’の話。
景色が素敵に見えるほど魅力的な笑顔を‘君’が浮かべているのはなぜなのか、気がつくにはもう少し時間がかかるかもしれません。
真似っこ上手な君はなんでも素直に吸収してくれるから、時に私の悪い心が暴走してしまいそうになる。
近所のお兄さんと言うには親しくなりすぎた私との関係をなんて呼べばいいのかなんて聞いちゃいけない。
「僕のことすき?」
「もちろんだよ」
「じゃあこいびとだ!」
無邪気に笑う君を手放せない。
2月27日は冬の恋人の日です。【真似っこ上手】
大人から見ると子どもは無邪気で眩しく感じますが、子どもだって企む心を持っていると思いませんか?大人には責任があるから、と葛藤するお兄さんとは裏腹に‘僕’は無邪気を装って攻め込んでいきます。年齢差は一生埋められないけど、心の距離は詰めていってください。
実らない恋ばかりしてるから好きな人に想いを告げることはない。ぼんやりと愛しい姿を眺めて楽しむくらいが精一杯。
あなたが見ているのは春か、未来か、あの人か。その先に自分がいないことだけはわかる。
「バカヤロー!」
思いきり叫んだら、初めてあなたが振り返った。でもこの思いは秘めたまま。
2月28日はバカヤローの日です。【春か、未来】
良いことも悪いことも繰り返せば人は慣れていってしまいます。恋の先には失恋しかないという考えが染み付いてしまった人に起きた変化の行く末はどうなるのでしょう。想いを秘めた視線を受けて始まる恋だってあるかもしれません。
慎重な自分と勢い任せの彼が四年も続いたのが奇跡みたいなものだ。互いの仕事が忙しくなれば二人の違いは不協和音に変わった。
「次はもっと合う人を見つけなよ?」
「あぁ」
結婚指輪と一緒に返したはずの婚約指輪を持って跪く。
「結婚してほしい」
舌の根も乾かぬうちに何を言ってるんだよ。ばか。
2月29日は円満離婚の日です。【舌の根も乾かぬうちに】
すれ違ってしまった関係をやり直したいとお互いに思っていた二人の話。'慎重な自分'は無視のいい話だと言えませんでしたが、'勢い任せの彼'は別れの辛さを堪えきれずにその場でプロポーズをしました。二度目の結婚ならうまくいくかもしれません。重ねた経験を味方に。