2024年1月
1月も今日は何の日!お題はこちらを使います。
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毛皮と中身が合わないとか言うが、昔いた犬がそうだった。木で爪を研ぎ、水浴びは嫌い、呼んでも知らん顔。俺が幼稚園の時に虹の橋を渡った。本当はそんなことすっかり忘れていたが、初詣のお札売り場にいた男を見て不意に思い出した。すみません、と言う俺を横目でチラリと見る様がポチそのものだった
1月1日は新年の1日目、元日です。
毛皮を間違えて生まれてきちゃう子なら、人間になっちゃうこともあるかもね?
昨年から書き始めた140字ですが、書けば書くほど魅力は増すばかりです。
今年も楽しく書いていきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。
【毛皮と中身】
私の薬局は年中無休だが、物流はそうもいかない。薬を送り出すことも材料を受け取ることもないからぼんやりと年末年始を過ごした。
キッと新年最初の車が到着する音に瞳を輝かせてしまう。
扉の向こうから意地悪な声。
「悪魔に惚れるなんて一生の汚点だね?」
黒猫印の配送業者が笑った。うるさいな。
1月2日は初荷の日です。
異世界の運送業にも黒猫印の会社があり、従業員はみんな悪魔です。働き者の薬剤師さんは神職についていましたが、悪魔を好きになり引退を決意。思い出を胸にひっそり生きていこうと薬局を開いたところ配送担当が好きな人でした。もちろん全部悪魔の企み。毎日会っています。
【悪魔に惚れるなんて一生の汚点だね】
せっかくの記念日なのに、毎年お前は不安そうな顔をする。しがらみから逃れ、二人がやっと結ばれた日なのに。
「後悔していない?」
そう呟く硬くなった身体を抱きしめる。
(それはお前だろう?)
「もちろん、一度もしたことない」
俺の言葉で緊張が弛むならいくらでも言ってやる。
嘘も方便ってね。
1月3日は駆け落ちの日です。由来の壮絶さに驚きました。こちらの二人も駆け落ちをしたカップルです。"俺"は"お前"が辛い顔をする度に駆け落ちを後悔します。身分を捨てさせ、生まれて初めての苦労に顔を歪める様を見れば、もっと自分が何かを出来たんじゃないか良い方法があったのではと思うのです。
【嘘も方便ってね】
幼い頃から人には見えないものが見えた。神社の倅だし、不思議はなかったが、まさか石造狛犬に求婚されるとは。
「石を美味しそうと思う人なんていないでしょ。食欲と性欲は比例するんです。無理無理。ムラムラしない相手とは結婚できません」
「ほう?」
人型に化けたら色気増し増しなのズルくない?
1月4日は石の日です。
好きな人のことは食べちゃいたい!と思うくらいの溺愛BLが好きです。神や人ならずものに好かれる倅はチョロい子なので、狛犬は早々に勝負に出ました。思春期の多感な時に目に毒なほどの色気で迫りつつも、清い関係のまま成人になるのを待ちます。極上に熟れる瞬間を楽しみに。
【食欲と性欲は比例する】
パチンと碁盤を打つ音しかない日常だった。
「お茶です」
いつの間にか住み着いた男は、最低限しか話さないくせに俺の頭に居座って邪魔をする。
たった一度だけ掠めるようにした口付けに何の意味があったのか。
睨みつけながら問えば簡単に種明かしをした。
「不本意そうな顔が見たかっただけ」だと。
1月5日は囲碁の日です。
囲碁の世界しか知らないストイックな棋士は、男の言葉をそのまま受け取り、がっかりした自分にイラつくのでしょう。それを見てほくそ笑む男は嫌なやつですね。静かに自分へ溺れていく棋士が可愛くて仕方ないけど、見ているだけ。棋士が恋心に気がつき縋る日を待っています。
【種明かしと不本意】
唯一の肉親を失っても、味覚を失っても、生きる意味があったから何も辛いことはなかった。
小さな命をこの身体に閉じ込めて以来、いつだって頭の中で「ずっと、ずっと、一緒だよ」と笑う声がする。
最後に味わったのは、唯一の主人、愛しい人。
心に溶け込む味がした。
一緒にいるのに、もう会えない。
1月6日はケーキの日です。
【心に溶け込む味】
「うちの草はよく効くの。薬も、毒も」
村一番の薬師だった母はそう言って笑った。その言葉が本当のことか今となってはわからない。
春の味だよと毎年出す粥に添えられる草が違うことに貴方は気がつくかな。
背中合わせの喜と恐怖が僕の中で渦巻く。貴方を失う?僕だけのものになる?結果はどうなる。
1月7日は七草粥の日です。
ぺんぺん草を食べる日だと思うと不思議な気分になりませんか?
仄暗い欲望を隠して毒を盛る勝負に出た薬師の息子が思う相手はどんな人でしょう。遊び人のクズか、手の届かない身分違いか、単なる脈なしか。相手に同じくらい植物の知識がないと気がつくのは難しそうです。
【背中合わせの喜と恐怖】
『そちらはお変わりありませんか?久しぶりの母国に私は戸惑っています……』
初めて見る切手が貼られた見慣れない縦横比の封筒をポストに見つけた時は胸が高鳴った。
親しみのある字が嬉しかったのに、同封された写真には彼に親しげに寄り添う男が写る。
隠れる薬指にお揃いの指輪はあるのだろうか。
1月8日は外国郵便の日です。
海外に移住すると、手紙を出す機会が増えます。メールに添付された写真も手軽で良いのですが、異国でプリントされた写真はサイズも色合いも手触りも、違うので同封されていたら、ワクワクするのではないでしょうか。でもそこに写るのが愛しい人だけではなかったら……。
【隠れる薬指】
いないかもしれない神様へ
いつだって俺の願いは叶わない。頑張ったって報われない。好きで好きで大好きで、いつも教室の隅から見ていたあいつだって俺のことなんか知らん顔。朝から晩まで夢中になってボールを追いかけてた。この週末は試験だと。都会の学校を受験するアイツが風邪をひきますように。
1月9日は風邪の日です。
お願いしている“俺”は、好きな人が遠くに行くのを悲しみつつも応援しています。試験の日に風邪をひけと願うけど、「俺の願いは叶わない」からね。いつまでも勇気が出ないへそ曲がりの願掛けでした。
受験生の方が力を出しきれますように。
【いないかもしれない神様へ】
「貴方より甘いケーキを知らない」
「お前甘いもん食べないじゃん」
「バレたか」
舌を出して笑う男は公職につきながら不埒に遊ぶ。昔から要領が良くて、一緒に羽目を外しても絶対に補導されなかった。片や俺は裏社会の住人になってしまったというのに。
「いつでも呼べよ」
「110すればいいか?」
1月10日は110番の日です。
警察官はずっと昔から恋心を抱いていますが、相手には本気にしてもらえないまま進む道が離れてしまいました。きっといつか相手は罪に問われるだろうと諦めていますが、どうせなら自分が逮捕したいと思いプライベートはベッタリまとわりついています。
【貴方より甘いケーキを知らない】
微睡むせかいは優しい。
幸も不幸も薄紙に包まれて曖昧なまま仕舞われる。
いけない、いけない。
知りながらもやめられないのは正気のせかいは刺激が強過ぎるから。
幸せすぎて、不幸すぎる。
貴方がいて、いつかいなくなる現実から目を逸らしたいから今日も酒を飲む。
祝い酒も、弔い酒も、樽が良い。
1月11日は鏡開きの日、樽酒の日です。
酒を手放せない人をアルコール中毒の病人として見るのか、ただの繊細な寂しがりやとして見るのか。現実では美化することは問題を悪化させる為に出来ませんが、創作では可能なところがいいですね。思い出が増える程に泣きそうになる心を宥めてくれるお酒の話。
【微睡むせかい】
髪はボサボサ、服は着古し、訛りがきつくて話が通じない。そんな男のことで頭を悩ませる自分が忌々しい。
だけど足を挫いて心細い時に助けに来てくれたんだ。真っ白い雪景色を切り裂くように現れたアイツは眩しかった。
誰か忘れられるおまじないを教えてよ。
ゲレンデマジックに勝てる強力なやつを。
1月12日はスキー記念日です。
ゲレンデマジックだけじゃなくて助けに来てくれたヒーローでもあるんだから、無理じゃない?素直に認めれば??と言いたくなりますね。都会っ子と田舎の子の恋の行方はいかに。もう勝負はついているか。
【忘れられるおまじない】
——ヨメタリヌヨメタリヌヨメタリヌ
夜毎響く村神様の唸り声に民は震えた。
今際の際に巫女が残したのは「キレ」の言葉だが、意味は不明。
神の望む通り女を差し出したが唸り声は続く。
村に残る贄用の若者はもう男だけだ。
「あぁ、キレ。余計なものは切れ、か」
村の為だから仕方ない。
——ヨメタリル
1月13日は遺言の意味を考える日です。
人と異なる尺度を持つ存在の要求は時に理不尽なのでしょうね。巫女が詳細を伝える前に息を引き取ったことで村人は焦燥に駆られ、酷いことも村の為と迷いなく実行しました。果たして余計なものとはなんだったのか。
神と贄の話はいつか書いてみたい題材です。
【嫁足りぬ】
早く大人になりたいと思っていた。いつだって子どもは無力で、休日の予定だって自由にならない。
寒風の中、お飾りを持ち河原へ向かう。
「こんにちは」
近所のお兄さんの声に頭を下げる。
激しく燃え上がる炎で顔が熱い。
偶然視界に入ったお兄さんの赤らむ顔が瞳を攫う。
あぁ、早く大人になりたい。
1月14・15日は左義長の日です。どんど焼き等、他の呼び名もあります。
お兄さんは一人暮らしの大学生で、少年はイヤイヤ来ているために、なんで彼が来ているのだろうと思っていました。自分は大人になったら絶対行かないと心に誓っています。お兄さんにとっては故郷を思う行事でした。初恋かな。
【瞳を攫う】
「ウィキ今度の終末なにする?」 幼馴染の言葉に、ついに思い出したのかと期待してしまったが勘違いだ。こいつが言ったのは「週末」の話に決まってる。昔は生き字引って俺のこと呼んだのにな。物知りだね、と感心するお前に理由は言えない。もう何千回とやり直した人生の記憶を全部持っているなんて。
1月15日はウィキペディアの日です。
ウィキとあだ名のついた物知りな男は、たった一人だけ数多の人生の記憶を持っています。生まれ変わるたびに幼馴染を探して、見つけてはホッとするけど、寂しい気持ちにもなるのでしょう。忘れてほしくないけど、また会えたから良いのかと自分を納得させて。
【終末何する】
覚醒と同時に絶望した。
水圧で動けなくなる朝が来るなんて思っていなかった。
俺がどんな悪いことをしたっていうんだ。
真面目に一週間働いて、休みの前に少し羽目を外しただけなのに。
「大袈裟。早く起きてトイレ行ってこい。お前飲み過ぎ。週末は禁酒な」
「鬼」
「別のものに酔ってもらうからな」
1月16日は禁酒の日です。
ギリギリのところでちゃんと目が覚めるので、人間の身体ってよく出来ているなと思います。身体の中に水分を保持するタンクがあることを一番実感できる瞬間でしょうね。恋人は呆れて禁酒を言い渡しながらも、週末の楽しみを用意してくれてるので愛されていますね。仲良し。
【水圧で動けなくなる】
「コレが欲しいんだろう?」
差し出されたおにぎりに僕は我を忘れて齧り付いた。夢にまで見たそれはこの世界にあるはずの無いものだから。あまりに慌てたから「ゲホ」と咽せる。
「息の仕方もわからないのか。困ったやつめ」
いつも意地悪な君が今日は優しい。
「転生者だな?」
僕の秘密が、バレた。
1月17日はおにぎりの日です。
偏食の人が異世界に転生したら辛いでしょうね。もっと美味しいものが待ってる可能性もあるのかもしれませんが。転生者であることがバレて青くなる僕ですが、おにぎりをくれたってことは相手も転生者?という思考にはならず、脅されるのか?と戦々恐々としています。
【息の仕方もわからない】
「あんたの仕事は舌先三寸なのね」
元カノの言葉を思い出してはイラっとする。
交通が不便な立地は落ち着いた環境、住人同士が無関心な物件はプライバシーが守られる。言い換えればカモが釣れる仕事だ。
「いかがです?」
「いいですね。監禁するには」
入居希望者の微笑みが恐ろしい。俺、帰れるの?
1月18日いい部屋の日です。
不動産屋さんの内見同行って実は恐ろしい仕事じゃありませんか?住宅街ならまだしも、森の中にポツンとある物件とか手に汗握りそうです。不人気な条件の物件ばかりを見たがる入居希望者の同行を続けるうちに、何かおかしいと気がついてしまった営業マンの運命やいかに。
【舌先三寸なのね】
ライブの後は興奮が冷めないものだ。憧れの先輩歌手の元へ覚悟を決めて行ったのに、髪のひと束も崩されずに朝を迎えた。
先輩の歌を小さな声で歌い、別れの言葉にしようとしたら急に引き寄せられた。
「いい声してるじゃないか。今度セッションしようぜ」
望むところだ、俺の才能に惚れさせてみせる。
1月19日はのど自慢の日です。
先輩との個人的なのど自慢大会を勝ち抜いた“俺”は急速に自信を取り戻しました。自分が好きなこと、得意なことを憧れの存在から認められたらそうですよね。自信がないからといって自分を安売りせず、正攻法で先輩を攻め落とせそうな予感に臆することなく奮起しました。
【髪のひと束も崩されず】
「君と結婚できないなら生きていられない」
一国の主が庶民の僕にいう言葉じゃないだろう。
国全体からのプレッシャーに負け頷く他はなかった。
館に招き入れられたっきり出られない。
優しい鎖に繋がれて、僕は今日も嘆く。
「何もできない、どこにも行けない」
本当はどちらも全く望んでいないけど。
1月20日は玉の輿の日です。
由来があまりにも劇的で、御伽話のようでした。
庶民として自由に生きていた“僕”にとっては青天の霹靂で、迷惑な話だったのでしょう。いやいや嫁ぐことになりますが、結局は絆されてしまいます。新生活を楽しみ、彼を愛し始めていることを告げるのはいつなのでしょうか。
【優しい鎖】
[名無し:断捨離は苦手なの?]
お料理系配信者として投稿した記念すべき一本めの動画についた初コメントがこれ。
まずそうって言われるより傷つく!
どうせ部屋ぐちゃぐちゃだよ。
ムカつくけど更新の度に書き込んでくる。ちょっと整理したね。とか。
じゃあ片してよって返信した。
[行くね]
え?
1月21日はお料理番組の日です。
スタジオのキッチンってすごくよくできてますよね。余計なものが映り込まないし、反射もしない。一般人の動画投稿が盛んになって、そのことに気がつきました。
ムカつくコメントでも、更新のたびに来たらちょっと嬉しくなっちゃうでしょうね。さて、誰が来るのかな?
【断捨離は苦手なの】
俺にベタ惚れのスパダリ彼氏は超絶完璧人間。一緒に暮らし始めても欠点は見つからない。青年実業家として成功しているコイツに弱点などないかと思ったら俺が作ったカレーライスを見て顔色を変えた。一体過去に何があった?コイツが囚われている檻に触れる喜びに心が震える。俺、カレーが好きになった。
1月22日カレーライスの日です。
“俺”は彼氏のことが好きですが、弱みを見せられないことにどこか不満を感じていました。完璧じゃなくてもいいのに、と思っていたところに見た彼氏の怯える姿に喜びを覚えます。加虐嗜好ではなく、これをきっかけに結びつきを強くできるかもと期待しています。
【檻に触れる】
不運な俺はマジックショーで見せ物になった。 「お客様の下着の色は…」と言って手品師の手の上には俺のパンツが! 「お客様にかけたのは魔法じゃない、ご迷惑でしたね。お詫びの印に」 俺の頬に唇が触れ、会場が沸いた。 夢心地のまま席に戻れば電話番号の書かれたカードが。パンツ弁償してもらうか!
1月23日はワン・ツー・スリーの日です。人生に対してジャンプする気持ちを持つ日。12月3日は同じくワン・ツー・スリーで手品の日。
このお話はその二つを合わせて手品師にドキドキした“俺”が思い切って連絡しちゃうか!と思い切ります。『パンツの弁償』という言い訳が背中を押してくれました。
【かけたのは魔法じゃない、ご迷惑】
人と繋がりたい、別の世界を見てみたい。繰り返し夢を見るけど、勇気が出ない僕は今日もボトルに手紙を詰める。詩を書き、絵を描き、手紙と供に海へ流す。
海に願うだけで叶うなんて思っていなかった。
「君が手紙の主?」
僕を訪ねてきたのは海を挟んだ遥か遠く異国の男。
まさか攫われるなんて、ね。
1月24日は郵便制度施行記念日です。
お題は分解して使用しました。
インターネット時代でEメールでのやり取りが幅を利かせていますが、やっぱり手紙は物理的に存在しますからね。力があります。
勇気が出ない人は勇気が有り余っている人と結ばれちゃえば、バランスが取れていいんじゃないかな??
【海に叶う】
神だから君の望みはなんでも叶えてあげられる。それで良かったのに地上に降りたいと言われては、流石に頷くことはできなかった。
「堕天させてくれないの?」
「そんなにここが嫌なのかい?」
「寒い日のこんびにおでんやってみたいの」
可愛らしい理由にホッとする。
天界にコンビニ作ってあげるよ。
1月25日は日本最低気温の日です。 マイナス41度はコンビニおでんなんて楽しめませんが。いつも快適な環境で過ごす天使にとっては、酷暑も、極寒も試してみたいことかもしれません。神様はおねだりに弱いので、コンビニの周りだけ冬にしてくれるのでしょうね。絶対そのうちこたつも導入されるはず。
【堕天させてくれないの?】
パーキングチケットを見ると思い出す。
運命と出会ったのはパーティーでのこと。ミュージシャン、モデル、俳優と華々しい人ばかりが集まっていた。
「仕事は何を?」と貴方が聞いた時、会社の経理部で働いていた平凡な私は嘘にならない言葉を考えた。
「思い出を眺めるみたいなものです」
懐かしいね。
1月28日有料駐車場の日・パーキングメーターの日です。経理の仕事である領収証の整理は誰かの行動をなぞることで、まるで思い出を眺めているようですね。‘私’は怯みながらも運命の相手を掴まえることに成功しました。格好つけたことを懐かしく思えるほど長く共に時を重ねられるのは良いことですね。
【思い出を眺める】
人間は儚い。我が嗚呼と言う間に散っていく。供物として捧げられたどの命も健気で純真だった。しかし今度のお前はどうも様子が違う。何かを企んでいるらしい。
「何が望みだ」
「俺、供物なんか嫌だ!」
「逃げたいか?」
「まさか」
「じゃあ、なんだ」
「神様、結婚してください!一目惚れしました」
1月27日は求婚の日です。 純真すぎて神経の太い子。神様の前では緊張のあまり何も言えないままの人間がほとんどです。神様は長生きしすぎてぼんやりしているので、これまで捧げられた人間たちはあまり構われないまま寿命が尽きていました。今度の子はキャッキャ賑やかなので神様も目が離せません。
【嗚呼と言う間に】
創業一族の長男だというだけで、私はグループ企業のトップに就くことが決まっていた。窮屈そう?荷が重い?確かにね。口下手なのにスピーチばっかり。でも大丈夫。私には優秀な秘書がいるから。一言一句違わず彼の言った通りに話すんだ。愚劣を塗り潰すように彼が選んだ言葉は私だけのもの。離さない。
1月28日はコピーライターの日です。
背負うものがありながら、自分の平凡さに気がついた男は同級生だった優秀な男に憧れます。やがてそれは恋になり、恋人兼秘書となります。秘書に全幅の信頼を寄せ、会議も取材も話す内容は秘書任せ。「私はお前のお人形なんだよ」と無邪気に笑う可愛い男です。
【愚劣を塗り潰す】
俺が誰と誰の子どもで、いつどこで生まれて、何という名前か、なんて誰も興味がない情報なのに俺を苦しめてきた。本当のことを示せば蔑まれ、提示しなければゴミ扱い。だから誰も俺を知らない、記録もない所へ逃げるんだ。懐かしさを置いて。俺を好きにならないお前のことも、もう知らない。バイバイ。
1月29日は人口調査記念日です。
戸籍には自分では選べない過去があり、嫌でもついて回ります。でも戸籍がなければ国の保護する人としての立場もありません。例えこの国で生まれ育っても、後から手に入れることは難しい。他の国へ行って新たな自分が手に入るのなら全てを捨てようという決意をした男。
【懐かしさを置いて】
寝ても覚めても頭の中は新生活のことでいっぱいだった。ビザを取り、飛行機のチケットを取る。先のことばかり考えて日本生活の後始末を忘れていた。
出発前にお前の声が聞きたいのにスマホは解約しちゃったんだ。
公衆電話に100円玉を入れてボタンを押す。
久しぶりだけど、お前の番号覚えてたんだよ。
1月30日は3分間電話の日です。公衆電話の通話が10円で3分間になった記念の日だそうですが、現在携帯電話にかけた場合に10円で通話できるのは、たった15秒間です。100円玉を入れても、たった150秒間だけ。一体何を話しましょうか。最近では電話番号を覚えていないカップルも多いかもしれませんね。
【寝ても覚めても】
腐れ縁みたいな同居人が帰ってくるなりチューリップの花束を差し出した。
「んだよ?」
「お前口悪いし、生意気だし、すぐ泣いてうるせーし」
「いきなり悪口じゃん!」
「でもかわいいよ」
「は?!」
「塵も積もればってやつよ」
「お前頭でも打ったの?」
「かもな。お前のこと俺の嫁さんにするわ」
1月31日は愛妻の日でチューリップの日です。
軽薄な俺様×気が強い泣き虫のケンカップル。嬉しいくせに「嫁じゃねぇえ」って怒るんでしょうね。俵抱きで寝室に連れてかれベッドに投げられて抱き潰されます。そして、翌朝左手の薬指にエンゲージリングがはまってるのに気がついて嬉しくて泣いちゃう。
【塵も積もればってやつよ】