2023年12月
12月は今日は何の日+お題ガチャでBLにしてみましょう!ちょっと難しいができるかな?
使用するガチャはこちら。
Not恋愛《書き出し/終り》お題
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「さっむ」
電車の扉が開く度に吹き込む風に身体を縮こめた。
「お前は本当に寒がり!ダウン着て、セーターも?腹巻きは?」
「してねぇよ」
「あ、俺ここだわ。じゃな、寒がりのお前にやるよ」
手の中に捩じ込まれたのはカイロだった。
「サンキュ」
俺は手を振りながら『宝物』をそっと懐に仕舞う。
12月1日はカイロの日。
ずっと好きな人が持っていたなら、使い捨てのカイロだって宝物になってしまいますね。今夜は一緒に寝るのかな。翌朝冷たくなっているのがまたちょっと切ない。
書き終わり「『宝物』をそっと懐に仕舞う。」
折畳み傘は結局、鞄の中だ。六月のアルゼンチンは雨が少ない。日本にいたら使えたのにと考えた自分はバカだ。留学を決めなければ、傘をくれたスペイン語教師の彼とも会わなかった。
「¡Hola!」
聞き覚えのある声に振り返れば彼だ。
「傘は?」
「ここに」
彼は傘を開くとその下へ僕を招きキスをした。
12月2日は日本アルゼンチン修好記念日です。
アルゼンチン人は見せつけそうなので、日本人教師ですかね。それとも、キスしてる時のかわいい顔を誰にも見せたくないという激しい独占欲の表れか。もしかしたら彼も不安だったのかもしれません。傘で相手の気持ちを確かめたかな?なければ何もしない?
書き出し「折畳み傘は結局、鞄の中だ。」
転職してちょうど一年が経ったと、その瞬間までわからなかった。
「お疲れ様です」
「お客さん、どちらまで?」
花束を抱えた元後輩なんて煩わしい。
白い手袋も慣れた。運転する車から赤色灯が取れただけだ。
「先輩の家まで。今夜は帰りません」
ドアを開け引き寄せる。
落ちた花びらが地面を汚す。
12月3日は個人タクシーの日です。
元警官のタクシー運転手と追いかけてきた後輩なんて訳ありに決まってますね。先輩が後輩を庇って退職になったのでしょう。憧れの人が堕ちた理由が自分なんて辛いですが、それでも会いに行く勇敢さが後輩の武器です。将来有望だからこそ先輩も安心してやめました。
書き終わり「落ちた花びらが地面を汚す。」
大切にしている記憶がある。
お前にそう切り出して話したら、大袈裟だと笑われた。
「やったことがない奴なんていないだろ」
陰キャと陽キャ。
何の接点もなかった好きな人に、初めて触れられた瞬間だった。
「お前は昔っからE.T.好きだよな」
本当にわかってない。
俺が昔っから好きなのはお前だよ。
12月4日はE.T.の日です。
互いの指先をゆっくり伸ばして触れ合う例のポーズの話です。あの映画を見たら、一度はやってしまうものでしょう。授業の一環で見たのなら、陽キャは隣の席の人とやりそうですよね。昔っから好きだねって、興味のない相手には言わないんじゃない?と背中を押してあげたい。
書き出し「大切にしている記憶がある。」
俺のスマホは貴方でいっぱいだ。
貴方のスマホが俺でいっぱいだったの知らなかったよ。
共に人生を過ごしたけど、結婚式もない、子どももいない俺たちだから写真館なんて縁がなかった。
古い人間だから自撮りなんて上手くできない。
ふたり並んだ写真を飾りたいのに。
足下の影に呼ばれた気がした。
12月5日アルバムの日です。
最終文が縛られると、どうしてもテイストが決まってしまいますね。悲しいお話っぽいでしょう?でも違うの。相手は地球の裏側ブラジルに出張中なだけ。個人用スマホは置いてきました。自分の足の下、6,371 km先で笑う愛しい人を思っているから俯いても笑顔な人のお話。
書き終り「足下の影に呼ばれた気がした。」
栞の場所は未だ分からない。
「探しといて」
栞の写真と部屋の鍵を俺に託して友人は旅立った。
膨大な量の本を目の前に呆然としたが暇だから通っている。
毎晩かかってくる電話は「見つかった?」で始まり、たわいのない話が続く。まだ昼間の音を聞きながら、寝落ちするのが最近の日常だが、悪くない。
12月6日は音の日です。
時差のある海外へ住むと、ただの友人と連絡を取り続けるのは難しくなります。探し物を頼んで旅立った策士の恋は叶うのでしょうか。毎日通話しても寝落ちするまで話が続くのだから脈はあるのかも。直接会わなくても、互いの生活音を聞いていたら相手を身近に感じそうですね。
書き出しは「栞の場所は未だ分からない。」
ドライフラワーを花の干物と呼ぶ恋人はデリカシーがない。ロマンがない。夢がない。
「憧れの生木のクリスマスツリーを買った!」
ポカンと口を開ける恋人に俺は満足する。どうせ大して興味ないだろうけど。しかし、年明けに意外な恋人の姿を見た。アイツ、なんと毎朝ツリーの枯れた植木鉢に水を遣る。
12月7日はクリスマスツリーの日です。
米国では生のツリーを売る場所がデパートやショッピングモールの駐車場にできます。街中で車の上に積んで持って帰るのを見るとワクワクします。冷めて見える恋人も実は楽しかったんでしょうね。根がついていないクリスマスツリーに一生懸命水をやる程には。
書き終わりは「枯れた植木鉢に水を遣る。」
日本刺繍を生業としている家の長男に生まれたから、憧れないように、夢を見ないようにと針と糸だけを見つめ続けた。でも貴方が舞う姿を一目見て、自分に嘘がつけなくなった。本当は貴方の隣で共に踊りたい。針箱の針を全て豆腐に刺しながら自分が裏切る恩人達の顔を思う。これは、自分で選んだ結末だ。
12月8日は針供養の日です。
やらなければいけない事とやりたい事がかけ離れている時に、どちらを優先するのか。難しい選択ですね。期待を寄せられる方ほど、自分を押し殺すことが多くなるかもしれません。でも、どんな人だって、自分自身の代わりはいないことを忘れないでほしいなと思います。
書き終わりは「これは、自分で選んだ結末だ。」
「結婚を前提に常連になる」
俺に宣言したのは坊主頭の中学生だった。潰れそうな古書店の店主を揶揄う子どもの遊びだと思ったら大間違い。週末は必ず店に立ち寄り、100円文庫を一冊買い求める。
ある日慌てた顔でやって来た。
震える手には夏目漱石の千円札。
「偽札挟まってた」
その言葉に瞠目した。
12月9日は漱石忌です。
夏目漱石の千円札の発行が停止されたのは2007年でした。16年前。中学生はまだ生まれてない頃です。こんなところでジェネレーションギャップを感じるのかもしれないなと考えた完全プラトニックな清い年齢差BLでした。
書き終わりは「その言葉に瞠目した。」
窓の向こう、流れる景色を見遣った。
助手席で無防備に眠る幼馴染を連れてのドライブは今日で何回目になるだろう。一緒にいる時間は長いのに、その顔をじっくりと眺めることは叶わない。
縮こまった身体に、着ていたニットジャケットをかけてやる。
「好きだよ」
寝ている時にしか言えない、俺は弱虫。
12月10日はいつでもニットの日です。
ちょうどドライブをする話を書いていたので、嬉しいお題でした。近くにいるのに勇気が出ないのは親しい関係だから。今の関係を守るのも良いけど、何もしないまま他の人に獲られてしまっても後悔は無いのか。悩ましいところ。果たして、誰が勇気を出すのか。
書き出しは「窓の向こう、流れる景色を見遣った。」
全力疾走するなら、今だ。
目の前を転がる銀色のコインを手に入れて満腹になりたい。
「500円ひーろった!俺の!」
「いえ、私のです。しかも100円玉」
「う、嘘だ」
「本当です」
見るからに貧乏な俺に無慈悲な態度だがそこに軽蔑の色はない。
「好き!」
「お断りします」
運命を変える恋が始まる。
12月11日は100円玉記念日です。
絶対に掴んだ100円玉を返さないで、ごねるんでしょうね。相手は冷たく「警察を呼びます」と言って、本当に110番しちゃう。「連絡先教えて!」ってごねる俺と「嫌です」と譲らない男、「もうあげたら?帰っていい?」って呆れる警察官でわいわいして仲良くなって欲しい。
書き出しは「全力疾走するなら、今だ。」
戦いが終わったら、花咲く丘で一緒に昼寝をしよう。
そんな約束なんてするべきじゃなかった。
戦場は、いるだけで命が削れていくような所だ。
余計な考えは判断を鈍らせるから、俺が殺したも同然だろう。
約束の二人になりたくて目を閉じる。
名前を呼ぶ声も無邪気な笑い声もない。
白と静寂の世界だ。
12月12日は国際中立デーです。
極限の状況で先の予定が生への執着を生み出し、命を救うこともありますが、足枷になることもあるのかもしれません。日光を遮るもののない場所で昼寝をすると、目を閉じても真っ白に感じます。何もかも塗りつぶす陽の光の力強さに、生きる希望が湧いてきますように。
書き終わりは「白と静寂の世界だ。」
「年末年始は風邪ひいたらやべぇから、ビタミン摂ろうな」
だからと言って、レモン果汁をそのまま飲むのはいかがなものか。お前、顔がシワシワになってるぞ。
「あと風邪予防にはなんだ?」
「日光浴は?」
「光合成か!よし、富士山に登るか!」
そんな俺の恋人は
煙と一緒で高いところが好きなのだ。
12月13日はビタミンの日です。
なんでもやり過ぎちゃう恋人へ冷静なツッコミを入れながらも付き合ってあげる、一見冷めているようで溺愛している男の話。煙と……は、愚か者はおだてに乗りやすいこと、あと先考えずにやってしまうことを指す言葉ですが、この男は上手くフォローするのでしょうね。
書き終わりは「煙と一緒で高いところが好きなのだ。」
風に翻るそれを、美しいと思った。
東京出身の俺にとって、雪はベッタリと降るものだった。そこまで気温が低くならないからだろう。それが極地では粉末になるのだから面白い。
「お前はいつまで雪を楽しむだろうな」
北国生まれの先輩は俺に呆れるけど、きっとそれに終わりはない。あなたがいる間は。
12月14日は南極の日です。
過酷な状況でも、好きな人が共にいれば全てが輝いて見える、なんていうのは夢物語でしょうか。恋は盲目と言いますが、本当は盲目ではなく新たな視点を手に入れるのではないかと思っています。世界が変わって見えることは喜びと驚きに満ちて、人生を豊かにしてくれます。
書き出しは「風に翻るそれを、美しいと思った。」
自分は英語ができるから大丈夫だと調子に乗っていた。憧れのアメリカ生活は、英語力よりもコミュニケーション能力がモノを言う。ご近所さんも、同僚も、英語ができる人の方が少ないからだ。僕の下手くそなバイリンガルジョークを絶対に笑ってくれる君がいない世界は寂しい。
まるで海底に居るようだ。
12月15日はザメンホフ(エスペラント語開発者)の日です。
言語はあくまでも道具で、話せるから人と親しくなれるというわけではありません。海底というのは場所にもよりますが、意外と賑やかな音がするもので、静寂とも違います。自分だけが楽しいお喋りについていけない状況に似ている気がします。
書き終わりは「まるで海底に居るようだ。」
君のくれた物が海外暮らしの僕を支え続けたと言ったら何を思い浮かべる?きっと君は正解できないだろうね。餞別にくれた万年筆?それも良いけどね、もっとなんでもない物だよ。最後に会った時に君は自分の住所を手帳の端に書きつけて破いてくれたね。それだよ。
でも、確かにそれは人生の灯火だった。
12月16日は紙の日です。
日本製の紙って薄くて、丈夫で、手触りも良く、書きやすく、美しいものです。もしもそれに大切な人の連絡先が書いてあったのなら、尚更大切な宝物になるでしょう。大切に懐にしまって持ち歩き、故郷を、大切な人を懐かしみながら、時折撫でたのかもしれません。
書き終わりは「それは人生の灯火だった。」
喉が悲鳴を上げる。
炎症に?乾燥に?辛さに?
いいや甘さに。
初めての海外出張からの帰り、機内食についていたコロンと可愛いドーナツは、甘さの暴力だった。
一口分だったのにフライト中ずっと甘いまま。
「酷い経験だった」
「ずるい」
極甘党の君は口を尖らせる。
ハネムーンはインドに行こうか。
12月17日は飛行機の日。
世界一甘いと言われるグラブジャムンを甘いものを食べつけない人が、知らずに食べたら大変でしょう。恋人が極甘党なので自分の分のデザートまでいつもあげている男の話でした。ハネムーンでは愛する人用のお土産にいっぱいグラブジャムンの缶詰を買って帰るのでしょうね。
書き出し:喉が悲鳴を上げる。
黒目、黒髪、扁平な顔立ち。世間にすっかり溶け込んで、誰も僕に外国人?と聞くことはないけど、僕は日本人じゃない。嘘はついていないけど、みんなを騙しているようで後ろめたい。 僕の訛りに気がついた君は俺と一緒やん、と笑った。 心臓が跳ねる。 鼓動みたいに小刻みな雨音のリズムに身を委ねた。
12月18日は国際移民デー。
日本人かどうかは何で決まるんでしょうね。国籍?血筋?愛国心?日本語が話せるかどうか?日本に関する知識があるかどうか?
日本に移民した外国人も、外国に移民した日本人も、幸せな日常を送れますように。出身国と移民先の国をどちらも自国として愛せたら幸せですね。
書き終わり「雨音のリズムに身を委ねた。」
失望が顔に出ていたのだろう。
急な呼び出しに慌ただしく用意をしながらも俺の顔を覗き込んだ。
「次の休みは必ず一緒に出かけよう」
それだけの口約束で嬉しくなってしまう。
「本当に?」
「君が行きたい所へ行こう」
「泊まりがけだぞ」
「いいよ」
「じゃハワイ」
「ん゛」
お前飛行機嫌いだよな〜
12月19日は日本人初飛行の日です。
(徳川家の血筋の方が飛んだのが最初らしい)
仕事の都合じゃ仕方ないと諦めつつも意地悪をちくりと返す可愛い恋人のお話。行き先は米国のハワイ、ではなくスパリゾートの方か、ハワイ料理屋さんかな。その場で無理!と言わずに呻くだけのお相手にも愛を感じる。
書き出し「失望が顔に出ていたのだろう。」
焚火の炎が爆ぜた。
顔の表面をジリジリと焼かれるような熱さが気持ちいい。
「なんで夏じゃなくて今なんだよ!」
遊びに行こうと言われて急に連れて行かれるのが、冬の海って結構な罰ゲームだ。しかも浜で荷物番してろって。
「お前ブリ好きだろ。冬のが美味いんだよ」
だからって銛まで買ったのか!
12月20日はブリの日です。
魚突きでブリを仕留めるのは中々大変そうですが、結果はどうだったのでしょうか。釣りと違って、獲っている間は一緒にいられないし、待ってるのも寒そうですが、美味しかったらいいのかな。自分のために先走っちゃう彼を可愛いと思えるなら幸せですね。
書き出し「焚火の炎が爆ぜた。」
飴色の家具は埃を被っていた。
「綺麗な色でもこれじゃあ誰も見向きもしないだろう」
久しぶりに会えたのに、お前が言った言葉が耳から離れない。
売れない俳優の自分はあの家具以下な気がした。
「なぁ、ここ名前書いて」
差し出されたペンを取り手帳に書いた。
「へへ、推しのサイン貰っちゃった!」
12月21日は遠距離恋愛の日です。
久しぶりに会えて嬉しいけど、勘繰りすぎて不安になっている神経質な俳優の彼に気がついていたのでしょうか。遠距離中の恋人は紙の手帳派で、来年はたくさん一緒に過ごせるようにとサインを貰いました。いつだって彼の一番のファンは自分だと自負しているタイプ。
書き出し「飴色の家具は埃を被っていた。」
それは、内心分かっていたことだ。
だってアイツだから。
風邪予防には日光浴だと冬の富士山に登ろうとするようなやつだ。
「のまないからぁ、らいじょーぶらとおもったの〜」
全身を真っ赤に熱らせグデングデン。
寒い日には日本酒風呂がいいって教えたヤツは誰だ。
こいつ下戸だぞ。
勿論、俺だよ。
12月22日は冬至で酒風呂の日です。
南瓜のいとこ煮食べて、柚子湯に入って、風邪などひかないようにしましょう。
まんまと企みが成功した、腹黒とお馬鹿なカップルは週末だしね、楽しくやってください。
書き出し「それは、内心分かっていたことだ。」
なぜ、と問えなかったのを今も悔いている。 初めてデートした日、僕はとっておきの服を着て行ったのに、君は全身真っ赤な服だった。悪趣味と笑い合うほど僕たちは親密じゃなかった。僕は不貞腐れたままデートを終えて、それっきり。今ならわかる。学年首位、頭脳明晰な君は何か考えがあったんだろ?
12月23日は東京タワーの日です。
センスのないスパダリっていいなと思いまして。「これなら俺を見失わないだろう?」と東京タワーみたいな格好でデートに行っちゃう高校生男子。もちろん説明は省略。後日SNS経由で再会し、今度は全身真っ白スカイツリーバージョンでデートの予定です。
書き出し「なぜ、と問えなかったのを今も悔いている。」
触れた冷たさを忘れる日は、一生来ない。 これが地獄か。 「たらたらしてんじゃねぇぞ!」 肩を落とす私に厳しい声をかける鬼が恋人だと言って信じる人間が何人いるだろうか。 「おいおい師走の弁当屋は修羅場なんだ!!早く米を研げ!あと考えてること全部口に出てるからな?!鬼で悪かったな!!」
12月24日は冬のごちそう「ゆめぴりか」の日です。
真冬に業務用の釜で大量の米を研ぐと地獄の冷たさなのは確か。お育ちの良い坊ちゃんが下町の人情派弁当屋に惚れて押しかけたのは良いが、ちっとも戦力にならない。でも見目麗しく、お上品な坊ちゃんに従業員一同大ファンに。若社長のが立場が弱い。
書き出し「触れた冷たさを忘れる日は、一生来ない。」
隣に男の子が引っ越してきたのは五歳の時。それから年中行事はお隣同士の家族合同で祝うのが恒例になった。お正月に始まり、大晦日までいつも一緒。
兄弟みたい?一度も思ったことはない。
「今年は二人きりがいい」
思い切って打ち開けて顔をあげればお前と目が合う。
それは肚を括った表情だった。
12月25日はクリスマスです。
いつもの関係から一歩踏みだす勇気を振り絞るには、ちょうど良い行事かもしれません。保険なんかかけずに思い切って飛び込んだ彼を受け止める表情は険しかったでしょう。それでも大丈夫だと分かり合えた筈。
寒い時期ですが、大切な人を思って暖かく過ごせますように。
もう少し、世界には優しさが必要だ。そう言ってご主人は僕に小さな贈り物をくれた。仕事中だから受け取れないと言ったら、だからだよと両手の塞がった僕のポケットの中に入れてしまった。 “今年もお疲れ様”と飾り文字で書かれた小さなカードが憎い。だってこれは僕宛じゃないから。使用人宛だから。
12月26日はボクシングデー(Boxing Day)です。
英国系の行事で、使用人や配達員などに贈り物をします。ご主人に恋する若き使用人にとっては嬉しくも辛い日になりました。いつかは25日にご主人と個人的に贈り物が交換出来たらいいな、と夢見ながらもどこか諦めているのでしょうね。身分違いの恋。
書き出し「もう少し、世界には優しさが必要だ。」
ホステルで働いていたら、出会いと別れの繰り返しが日常で、寂しさなんて感じなくなる。金髪も青い目も訛りのある日本語も珍しくない。ラムネの開け方がわからない外国人なんて何百人も見た。
それなのに人形焼を買いに行く度にオイシイネと笑うあの顔が頭に浮かぶ。
漂う匂いにお腹がぐぅ、と鳴った。
12月27日は浅草仲見世記念日です。
外国人観光客にとって浅草は憧れの場所。必ず行きたい場所のようです。ホステル周辺は特に色んな国の人々がいます。通りすがりの誰かが特別な一人になる瞬間もあるのでしょうね。切なくてもお腹は空くから、美味しいものを食べてまた元気になれると思います。
書き終わり「漂う匂いにお腹がぐぅ、と鳴った。」
背の順で並べばいつも端と端だった。
チビの君とノッポの僕。
負けず嫌いの君は「お前より大きくなるから覚えとけよ!」と宣戦布告したけど、二十歳を過ぎても追いつく気配すらなかった。
月日は流れて、再会したのは老人ホーム。
君は満面の笑みで僕の車椅子を押す。
約束、覚えてる?と問われても。
12月28日は身体検査の日です。
過酷な行事ですね。大人はやらないのに子どもはやらなきゃいけない事ってどれも精神的にダメージを受ける厳しさがある気がします。
ずっと見上げていたノッポを見下ろすチビの喜びように僕は戸惑っていますが、また新しい関係が始まれば楽しい日々になるかも?
書き終わり「約束、覚えてる?と問われても。」
俺と恋人は一回り以上歳が離れているが、特に話題に詰まることもない。恋人はいつも歳の差を心配しているようだけど、全くの杞憂だ。 「ね、君のお気に入りの超人は?」 筋肉だ、茹で卵だと話していたから、肉体改造の話だと思っていた。 「超人?なんでそんな話になったの?」 場の空気が張り詰めた。
12月29日金曜日はキン肉マンの日です。
29日金曜日が、キン肉マンの日だそうです。
年上の恋人の方が繊細で気にしいなので、キン消し、とかも通じないことに愕然とするんでしょうね。年末年始の連休ですからね、金に物を言わせて布教したらいいんですよ。全巻セット買いして二人で篭りましょう。
書き終わり「 場の空気が張り詰めた。」
独特の世界に運命を感じた。一目で恋に落ち青春時代を捧げた相手はスシ・ニンジャ・ハラキリの国。
円安到来、遂に上陸憧れの地。
まずはキャピタル!と大江戸線に乗るが全く江戸には着かない。
「Why?」
ちょんまげ仲間も一人もいない。
「Why? Why? Japanese people?」
問い直す声は虚しく響いた。
12月30日は地下鉄記念日です。
熱烈な日本好きは世界各国にいますが、何が入り口かでだいぶ違います。好き過ぎて学者になるタイプから、想像が現実を覆い隠して、未知の日本を自分の中に作り上げるタイプもいたりして。元ネタを知らずにそんな言葉を言っちゃうミラクルも起きるかもしれませんね。
書き終わり「問い直す声は虚しく響いた。」
深閑とした夜だった。
「この世にお前と二人きりみたいだ」
俺の言葉に顔を顰めるのはわかっていた。
「水で身体を清めて新年を迎えるなんて神聖な気分だ」
がっくりと項垂れるお前の肩に毛布をかけて寄り添う。
「こうしていればあったかい」
「……電気代使って悪かった」
「ガス代も」
「ごめん」
12月31日は大晦日です。
私の大好きなクズ物語で一年を締めくくりましょう。電気代もガス代も使ってしまいました。電化製品が止まりガスも使えないのでお湯が出ないそんな家。修行気分で行水して年越しになったとポジティブに言い換える恋人の無言の圧力に折れて謝ったので仲良く年越できるはず!
書き出し「深閑とした夜だった。」
お読みいただきありがとうございます。
たくさん140字が書けて、とても楽しかったです。
お気に入りの作品を選ぼうと思いましたができませんでした。
どれも思い出深くて気に入っています。
皆様、良いお年をお迎えください。