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2023年11月

今日は何の日をテーマに書きます。

後半に10月に書いた弟子と師匠の話があります。

今日は何の日?


貴方が本を読んでいるところを眺めるのが好きだ。

静寂の中で次々に変わる表情というのは不思議な魅力がある。

邪魔はしたくないが瞳が潤んだ時だけは溢れる寸前にそっと唇を寄せる。

「ありがとう」

微笑む貴方はこちらを向くが、視線が交差することはない。

光を失っても本の虫。

あなたは凹凸中毒。


11月1日は「日本点字制定記念日」



秋が来ると、冷え性の俺に恋人はプレゼントをくれる。

ラクダ色の股引き、キャラモノの腹巻き……

俺がケチで貰った物は絶対使うと分かってのことだ。

「嫌がらせか?」

「まさか。暖かくして欲しいだけ。今年は日常使いできるやつ」

「網タイツは防寒着じゃないんだわ」

「熱い夜になるんじゃない?」


11月2日はタイツの日



どしーんと腹に衝撃を覚えて目を覚ます。

「おはよ!」

とおれの腹で笑う小さな怪獣。

甥っ子は可愛いが祝日くらいは寝坊させてほしい。

「あそぼ?」

微笑む顔に思わずドキリとする。

幼子にそんなことを思うおれはどうしようもない。

拗らせ続けた片思いの相手は姉の彼氏。まさか親族になるなんて。


11月3日はゴジラの日。

十五年くらいしてから、もう一度「おはよ」からの「あそぼ?」展開を期待したいな。



俺が片思い中の相手は、頼めばなんでもOKすると有名だ。

デートして?ーーいいよ

付き合って?ーーいいよ

キスして? ーーいいよ

じゃあ、俺だってと頼んでみたら、ダメ、ダメ、今はダメと全て断られた。

「そんなに俺のことが嫌いなの?」

「他の人はどうでも、いいよ。お前は特別だから、ダメ」


11月4日はいいよの日。



異国で暮らすとホームシックになると聞くが、何の兆しもない。日本にいた時から職場の言語は英語で、同僚も国際色豊かだったからかもしれない。結構自分は薄情だな、なんて思っていたのに。

「オツカレサマ」

カフェで渡されたカップに書かれた辿々しい日本語にグッときてしまった。これはずるいよ。


11月5日 新宿日本語学校・にほんごの日

1が2本と5で、ニホンゴですって。

のんびりしたお店だとそんなサプライズもありますね。行きつけのお店だと、母国語が何かも知られているでしょうし。一生懸命勉強して毎日カップにメッセージを書いて最後は目を見て「好きです」と思いを告げるのかな。



『I llove you, bebe !!』

恋人からの熱烈なメッセージは慣れっこだったが、今日のは流石にびっくりした。だって愛の言葉の下に書いてあったのは『From Mom』

「そういうプレイはマジで無理!」

帰宅後に詰め寄ればジョークだと笑うが怪しいものだ。

「で?これはいつまでやるの?国際カップルごっこ」


11月6日はいいマムの日

「いい(11)マム(6)」で、菊の花の普及を狙いとしてるそうです。

でもマムから最初に浮かんだのはお母ちゃんの方だったので、堪えきれずにこちらを書きました。しかもアメリカかぶれの日本人。キツイな。乗ってくれる恋人の愛が深い話ということにしましょ?



疲れやすくなったのは、歳のせいかな?

40近くなればそんなもんだろ。

サイズアップしたスーツ、追加したベルトの穴、赤字で書かれた血液検査の結果。

「ダイエットしてください」

「え?お前だって俺のモチモチボディ大好きだろう?」

俺の担当医で恋人の男に睨まれる。

「生きてなきゃ意味ないの!」


11月7日はいいおなかの日。

触り心地のいいおなかも捨てがたいけど、健康的ないいおなかの方が恋人のためになりますね。歳を重ねれば尚更強く思うのではないでしょうか。



「今日のスケジュールは絶対だから」

「へい」

気の抜けた返事を返せば、睨まれた。

「昼はとんかつ、夜は鍋と熱燗で、夜食にうどん食べて、ココア飲んで、湯たんぽを抱いて寝る」

「カボチャ煮て、柚子湯に入らなくていいのかよ?」

「それは冬至、来月」

「引っ掛からなかったか……」

「100年早い」


11月8日は立冬です。

寒くなるのに合わせて、鍋と燗の日、とんかつの日、夜なきうどんの日、ココアの日、湯たんぽの日でもあります。季節行事命の恋人に呆れながらも、自分もしっかり覚えてるのがポイントです。二人だけの習慣が染み付いていく馴れ合いカップルが好き。



「パパはバスケットボールするのが仕事なの」

俺の担当する3歳児クラスでお気に入りの子がそう言った。

シングルファザーなのは調査済。面食いの俺としては狙っていたが、デカい男はナシ!はい残念と思ったら。

「え、バスケ選手にしては小柄…?」

「消防士です」

夜の保育も頑張っちゃおうかな〜


11月9日は119番の日

消防士さんの訓練の一環でバスケするとこ日本にもあるんだっけ?なかったらあることにしてください……アメリカでは定番でした。

仕事場で男を引っ掛けるタイプのクズはいかがですか?ダメですよね……でも良いとこもあるんです↓

あの曲のペースがちょうどいいらしい。


『通行人が倒れている』

通報を受けて駆けつけた先に膝をついていたのは知っている男だった。

「アン、アン、アンパンマ〜」

陽気な曲を口ずさむのとは不似合いな真剣な顔で心臓マッサージを続ける姿にハッとする。

担当している幼児の父親に粉かける保育士とか絶対ナシだろうと思ったのに。やばいな。



いつだって君は眩しかった。明るい笑顔で前向きでパワフルに飛び回る。誰にも愛された君の秘訣は、素敵な靴を履くこと。素敵な場所に連れて行ってくれるんだってとフランスの言い伝えを教えてくれた。

大好きだった靴を一足も入れてあげられなかった。ごめん。遠くに行かないで近くにいて欲しいんだ。


11月9日はいい靴の日です。

こんなはずじゃなかったのでもう一度やり直したい。


憧れの君に、最後の思い出作りにと告白したら、「嬉しい」と最高に笑顔を見せてくれた。卒業後の同棲先に君が持ってきた荷物はほんの少しだけ。

「素敵な場所に連れて行ってくれるんだ」と自慢していた素敵な靴は全て手放してきたと言う。

「だってここが1番素敵な場所だから。君の隣にずっといたい」



「ちょうどいいところに来た。これあげる」

クラスメイトがくれたのはちょっと珍しいチョコレートだった。

「え?急にどうしたの?」

「甘いの好きなんでしょ?」

「あぁ、うん。ありがとう」

普段のチョコレートに特別な意味を願ってしまう。

「今日はいい友の日なんだって」

特別になりたかったな。


11月10日はいい友の日

食べてるうちにきっと涙が溢れてしまいそう。包み紙を大事に取っておくんでしょうね。



カラコロカラコロ音がするから温泉街は嫌になる。

みんなにとっては夏を思わせる軽快なその音も、僕にとっては異国を思い出させる。日本にうんざりして逃げた南米の片田舎。平らな顔のチビとして揶揄われた僕を助けてくれたのは下駄を履いた男だった。太い鼻梁に縮れた黒髪。ひと月だけ恋人だった男。


11月11日は下駄の日です。

思いがけないところで出会う母国ってすごく心を抉る気がします。いつの間にか心に入り込んでくるズルい男。きっとビックリするくらい甘くて優しいんでしょうね。



冷たい金属の格子が私の行く手を阻む。

「もう、終わりだ」

身動きが取れない中で絶望した。

「部長、どうしたらそうなるんです?」

搬入用エレベーターの中でカートに挟まる私を呆れた目で見るのは部下で恋人の男だ。

「座ってて下さい」

「私だって君の役に立ちたいんだが」

「いるだけで十分です」


11月12日はパレットの日

絵画用かと思ったら、物流用のでした。

三方が金属の格子で囲われて車がついたロールボックスパレット(本文ではカート)というタイプが商品の搬入によく使われますが、複数台エレベーターに載せて自分も乗ると出られなくなるというお話。不器用な管理職が頑張っちゃった。



こんなにも触れたいと思ったことはない。

いつだってすぐそこにあって、嫌というほど触れるのに満たされることはない。

「もう行くよ」

楽しみを取り上げられるのは嫌い。終わりは自分で決めたいから、いつだって自分から別れの言葉を告げてきた。

「まだいいでしょう?」

でも、君にだけはできない。


11月12日はいい皮膚の日です。

見た目の美しさも魅力的ですがつい手が伸びてしまうような触り心地はさらに人を縛り付けるような気がします。だって手で、足で、腹で、全身で感じられるんだから。至る所に刻みつけられたその記憶から抜け出せるわけがないでしょう?滑らかな肌も乾いた肌も愛しい。



「僕はもういい歳だから」

何気なく言ったのに、いつも朗らかだった貴方が一番顔を顰めた時だったんじゃないかな。

「私の大切な人が生きてきた時間をそう言ってほしくないな」

僕を置いてくだけじゃなくて、逃げ道まで封じた酷い人。

独りぼっちで国を発つ。もう背中を押してくれる貴方はいないから。


11月12日は留学の日。

若いうちの方がビザって取りやすいんですよね。でも歳を重ねてからじゃなきゃ見えない世界がありますから、諦めてほしくない。挑戦を後押ししてくれる人がいるのはありがたいものです。

いい歳という言葉は曲者で時に酷く心を抉られます。いつだって良い歳だと思っています。



容姿端麗、成績優秀、学生時代に立ち上げたベンチャー企業が大当たり。国内のみならず、世界が熱い視線を注ぐ期待の新星!なんて評価はどうでも良い。俺にとっては少しキツく言うだけで「嫌いにならないで」と目を潤ませる甘ちゃんだ。抱えた膝にキスをひとつ。満面の笑みを浮かべる可愛い俺の恋人。


11月13日はいいひざの日!

外面は強強でも恋人の前では膝を抱えて泣いちゃう弱弱。そんな所を自分だけに見せてくれるんだから、恋人はふにゃふにゃスパダリが愛しくてしょうがないんでしょうね。



絶対お前のタイプだからと設定されたブラインドデート。目印の悪魔図鑑を持って立っていたのは鬼上司。これはドタキャンしようと思ったら目が合った。そして俺の持つ目印の天使図鑑を見た瞬間、嬉しいと言って口を抑えた。目は潤み、顔は真っ赤。え?何これギャップ最高!可愛すぎ!俺の理想ど真ん中!


11月14日はいい上司の日です。

仕事中は鬼なのに、プライベートはウブとかツンデレが過ぎるでしょ。好きな人にはツンケンしちゃう照れ屋さんをぐずぐずに構い倒す年下部下、絶対良いですよね。



おはよう、いってきます、いってらっしゃい、おかえり、ただいま、おやすみなさい。朝から晩まで何度も僕の身体にピッタリと巻きつく太い腕。もう誰よりも僕を抱きしめた。きっとこの先も繰り返し、繰り返し、隙間なくぴたりと抱きしめ合うのだろう。全身で伝える愛の言葉。今日も明日もずっと大好き。


「平凡な僕をハニー♡と呼ぶガチムチ米国人との甘い日常」140字バージョンでした。ハグが日常のリズムになっている二人。

#恋ハグ企画



工事現場の警備員を軽い気持ちで始めたら、もう大変。「お前、人の命預かってる自覚あんのかー!」って現場のおじちゃんに怒鳴られる。半べそで棒を振れば上から声が降ってきた。「あの人、言葉悪いけど良い人だから」ミキサー車の上に立ち汚れを洗い流すカッコイイ兄ちゃん。いい人なのはあんただろ。


11月15日は生コンクリート記念日です。

生コン工場かっこいい。ミキサー車もかっこいい。タンクの上に立って、お日様に照らされながらホースでジャバジャバ車を洗い流してるの見ると得した気分になります。ミキサー車と警備員のツイノベが書きかけなことに気がつきました。思い出したら書きます。



入社三年目。寝言で言えるほど営業トークは完璧だと思ってた。

「そう言われてもねぇ。君みたいな若い子に何がわかるの?」

言葉を失った俺の後をいつも頼りない先輩が引き取って打ち合わせは終わった。

「直帰しまーす」

まだ14時なのに。

「飲みに行こうぜ」

「コーヒーですか」

「んな訳ないだろ」


11月16日はいいビール飲みの日です。

悔しい日のビールの味も、忘れられないものですね。その時に一人で飲むのか、二人で飲むのか。息抜き上手な先輩に出会えると真面目な後輩も潰れず、腐らずに頑張れそう?せっかく見直したのに、翌日早速遅刻する先輩のことを冷たい目で見てほしい。



好きなの何?って聞いたら「スバス」だって。意味不明って思ってググれば嘘だろ。お前ネパール人に片想い中なの?そういや学校帰りによくカレー屋行くな。どれがスバス?ってか店員全員男じゃん!じゃあ俺でもいいじゃん!!

「もうカレー屋行くな!」

「別にいいよ。お前が好きだから行ってんじゃん」


11月17日はレンコンの日です。

スバスはハスの酢漬けです。大抵一枚しか乗ってこないアレが好きなんて渋い学生だな。スバスで検索したらカレー屋さんとかネパールの話が出てきて楽しかったです。

両片思いのキューピッドはネパール人の全スバスさんに決定。ダンネバード!(ネパール語でありがとう)



「誕生日プレゼント何欲しい?」

「ワイヤレスイヤホン!」

「それ以外」

「なんで?!俺いい加減耳から紐たらすの嫌なんだけど?お前すぐ一緒に聞きたがるし。ワイヤレスのが便利じゃん」

「ちっとも便利じゃない」

「紐のは一緒に聞く時隣にいなきゃいけないじゃん」

「だから良いんじゃん」

「!」


11月18日はいいイヤホン・ヘッドホンの日!

本文では紐と書きましたが、あのコードで繋がってる感じが良い雰囲気ですよね。近頃の学生さんもイヤホン半分こで音楽聴いてるみたいですね。ワイヤレスが主流になりましたが、コードの煩わしさが好きな人となら嬉しくなる体験もして欲しいな。



「あ!またひじついて食べてる。お行儀悪いよ!」

「お前俺の母親かよ」

「えー!師匠みたいな子はかわいくないからヤダ!」

「俺だって子どもの時はかわいかったんだぞ!」

「今もかわいいよ?」

「は?!」

「師匠はかわいいけど、師匠みたいな子はかわいくないと思う!」

「もう、やめてくれ……」


11月19日はいい育児の日で家族の日。

かわいい子どもに、かわいいって言われたら大抵の大人は照れちゃいますよね……。「恋の終わらせ方がわからない失恋続きの弟子としょうがない奴だなと見守る師匠」より。



「ししょーさむい」

「あー、布団たりねぇか?明日毛布出すから我慢しろな?」

「ん。わかった。ハクシュン」

「ってムリそうだな。待てるか?」

「もうねむい……ししょーのおふとんでいっしょねる」

「じゃ、おいで」

「おやすみなさい」

「おやすみ(あったけぇな。一緒に寝れば毛布いらないか?)」


11月20日は毛布の日です。

アルファポリス連載中の弟子と師匠より。本編よりずっと前のお話です。子どもってポカポカですよね。師匠は基本面倒臭がりなので、このまま毛布を出さなくても良いかなと企んでいます。



鳥を捌いた日は弟子にバレないうちに夕飯の支度に取り掛かる。そうじゃないと二言目には……

「ししょー鳥?!揚げたのが食べたい!」

「くそ、見つかった」

「ししょーも好きでしょ?カリカリのやつ」

「めんどくせぇ」

「でもおいしいよー?」

無邪気に笑うが、お前食べるだけだろ。しょうがねぇな。


11月21日はフライドチキンの日です。

カキフライの日でもあります。フライはなんだって揚げたてサクサクが最高ですね!後片付けさえなければ……。でも可愛いおねだりには負けてしまう師匠でした。

連載中の弟子と師匠より。



「ししょー!いーふーふのひなに?」

「なんだそれ?」

「だから今日!いいふうふ?の日なんでしょ?」

普通の両親が揃ってりゃ、私たちのことよって話は簡単だけど、どうすりゃいいんだ?!

「仲良しこよしの二人組ですねって日だよ」

「じゃあ、僕とししょーでいいふうふの日できるねぇ」

「かもな」


11月22日はいい夫婦の日です。

小さい拾い子の弟子が悲しまないように、きっと師匠は色々と考えながら育てたことでしょう。

連載中の弟子と師匠の話より、思い出話でした。師匠が勝手にたてたフラグの回収いつになるかな?



「ししょーおてまみしたい」

「おてまみ?」

「かみにじをかいてあげるやつ」

「お手紙な」

「おてがみ?ししょーってかきたい」

その辺に落ちてた紙と鉛筆を弟子に持たせ、俺はテーブルに水で字を書いて見せた。

ゴリゴリと音を立てながら黒い線が紙に走る。

「できた!」

四文字で紙はいっぱいだ。


11月23日はいいふみの日です。

直筆の手紙っていいですよね。出す時は日付を入れるようにしています。大切な手紙を入れる文箱がいっぱいになる幸せが貴重な時代になりました。

現在連載中の弟子と師匠より。



「ばぁか」

「迎えに来た人間にそれはないだろう?」

一杯飲み屋のテーブルに突っ伏した同居人は不機嫌そうに睨む。

「今日一緒に飲むって言ったじゃん」

「しょうがないだろ、仕事だ。ここじゃなけりゃもっと早く来られた」

「ここじゃなきゃ意味ないの!新宿!思い出横丁!」

「お前と会った場所か」


11月24日は思い出横丁の日です。

新宿にある細道のごちゃごちゃした独特の雰囲気は外国人観光客にも人気ですね。お客さん同士の距離が近く、思いがけない出会いが生まれる場所の一つでしょう。同居人が恋人になるのか、勝負の日かもしれません。



「ししょー?ぼくに木を食べさせるの?」

「木じゃない。魚だ」

「カチカチだよ?」

「なんか魚に火を入れて乾かすとこうなるんだよ」

遠いどこかの保存食らしいよ?と女将に押し付けられた道具と共に削って見せれば、弟子は気に入ったらしく、もっともっと、と食べたがった。

コイツは魚が好きだな?


11月24日は鰹節の日です。

せっかくなので、連載中は弟子と師匠の140字も続けましょうか。キンと澄んだ音がすることや、木のような見た目、削り方によって粉になったり、薄紙のようになったり。味や香り以外にも楽しい食品の一つだと思います。そしてコスパ最高。



ほんの一瞬目を離しただけで世界が変わる、なんて言ったら大袈裟だと人は笑うだろうか。

しかし、赤子を拾ってからの日々はその繰り返しだ。

パンでも焼こうと思って用意した材料が姿を消した。

ご機嫌な声にテーブルの下を見れば、全身粉まみれのキセイがニコッと俺に笑う。

「しょうがないやつだな」


11月25日はいいえがおの日です。

赤ちゃんは色々やってくれますね。後片付けなど考えると絶望的な気持ちになりますが、良い笑顔を見てしまったら、こちらも笑ってしまう他はありません。連載中の作品より、まだ弟子と師匠になる前の二人でした。



「ししょー?」

あぁこの顔、あれが来る。俺が買い物をする間、弟子を近所の子達と遊ばせているのだが、その度に答えに困る質問を仕入れて来る。

「ぼくたちはかぞくじゃない?」

さすがにこれには頭を抱える。

血の繋がりがない俺たちは何だ?!

「おかみさんがちーむっていってた」

「それいいな!」


11月26日はいいチームの日です。

養子縁組の考えもある世界ですが、師匠は自分を親とは思えず、兄でもないから「家族だ」と答えは出ませんでした。チームメイトなら上下関係もない同等の関係だから、納得しました。道具屋の女将さんはいつも二人を助けてくれる存在です。



「赤ん坊って移動しすぎじゃないか?」

キセイが這い回るようになった。寝ても覚めても動くキセイをいつか潰しそうで怖い。

「棚にでも入れたら?私はそうしてたけど?」

「女将、正気か?!猫の子じゃねぇんだぞ?!」

「最初は猫の子拾ったみたいなもんだって言ってたくせにねー?」

「ウルセェ…」


11月27日は組み立て家具の日です。

カラーボックスが由来だそう。

キセイに振り回され、文句を言いながらも、育児に夢中な師匠と揶揄いたい女将さんでした。訪ねてきた時は子守を請け負って、仮眠させてあげます。



毎日、髪を結う時間だけは落ち着いてキセイは座るが、俺の心臓はうるさいままだ。髪油を手に伸ばし、満遍なく手櫛でとかしてから、櫛を使う。毛先をしまい込むように髪を編んで髪紐を結んで出来上がり。

「いってきまーす!」

「気をつけて行ってこい」

手に残った感触と過ごす1日は鼓動がうるさい。


11月28日はきれいな髪のいいツヤの日です。

弟子と師匠、その後の2人の一コマです。



「ダセェ日本とはおさらばだ!」

俺の気持ちなんか知らないで米国留学に旅立った男から、速攻泣き言メールが届いた。

『ボールペンが掠れて書けない。鉛筆は削っても削っても芯が既に折れてる。消しゴムは汚れを伸ばして紙を抉る。マジ無理。文具送って』

送るか、ばーか!

もうチケット取ったんだよ!


11月29日はいい文具の日です。

日本の文具好きは世界各国にいますね。ボールペンのインクが最後まで出る、鉛筆が滑らか。消しゴムは書いてないみたいに消える、紙が薄いのに丈夫。日本の当たり前がどれだけ有り難いか移住先で気がついて、現地民に知らなかったの?と言われるまでがセットです。



「きーちゃんのすきなのない!」

「マッパじゃ出かけらんねーんだわ……」

赤ん坊を舐めてた。すぐ服が合わなくなるくせに、選り好みするのかよ⁈

女将に泣きつけば、とっておきの作戦があるという。指定の日に訪ねれば、キセイは大喜び、俺びっくり。

「ししょーといっしょすき!」

ペアルックかよ…


11月29日はいい服の日です。

親子、兄弟、カップル、友人、最近はペアルックの方多いですね。リンクコーデとかもかわいらしい。

【全年齢】 恋の終わらせ方がわからない失恋続きの弟子としょうがないやつだなと見守る師匠(完結済)より



キセイが働き始めて暇なので女将を訪ねた。

「あんたいい加減、返事したら?」

「何がだよ」

「キーちゃんのプロポ」

「だああ!」

「いつすんのさ?」

「……アイツ若いじゃん?俺すぐジジイになるしさ」

「私にケンカ売ってる?!」

「いや、シルバーもラブする時代か?」

「だってよ!キーちゃん」


11月30日はシルバーラブの日です。

いつまでも師匠はぐずぐず悩むんでしょうね。20も離れてたら仕方ないのかもしれませんが、女将がいますからね。きっと上手いことくっつくでしょう。

【全年齢】 恋の終わらせ方がわからない失恋続きの弟子としょうがないやつだなと見守る師匠(完結済)より





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