2025年5月
2025/05/09
「隔夜」「話す」「熱」
辺境の基地に配属された。街は遠く娯楽はない。任務が終わると暇で仕方ない。宿舎の同部屋の男が寝物語に身の上でも語ろうじゃないかと、交代で話すことになった。偶数日に男、奇数日に自分。「これが好きでね」と男は艶話ばかりする。聞き流していたがはたと気付く。男と男の話だ。腹の奥に熱が灯る。
今日は何の日
「振られたぁ」校舎裏の告白から帰ってきた幼馴染は俺の隣で肩を落とした。「ドンマイ!」いつもみたいに肩を組もうとしたが、泣いて真っ赤になった目に手が止まった。ズクンと腹の中が燃え上がる。最悪。初恋は甘酸っぱいなんて嘘だ。ドロドロして、苦くて、息も出来ない。好きだなんて俺は言えない。
5月1日 恋が始まる日 恋の予感の日
「マグロ〜」
ドヤ顔の友人に呼ばれポカンとする。
「日本では恋愛に淡白なやつをそう呼ぶんだろ?」
間違いだと言いたいが説明はしたくない。
「俺はマグロじゃない」
むしろベッドでは積極的な方だがそこは秘密に。
「そりゃ楽しみ」
「へ?」
「何でもなーい」
天然風外国人に狙われていると、まだ知らない。
5月2日 世界まぐろデー
外国人扱いすると不機嫌になるくせに、武器にしている狡い外国人×日本人
日本で暮らす外国人同士のルームシェア。お互い英語ネイティブだから上手くいくなんて幻想だった。「このゴミを捨てろ!」「キコエマセーン」「クソ紅茶野郎」「ボールを手で運ぶ野蛮人」一触即発の空気の中インターフォンが鳴る。『ゴミの日間違えてますよ』「「スミマセーン」」二人で肩をすくめた。
5月3日 ごみの日、ごみ片付けの日
英国紳士と米国人のどたばた。同じ金髪碧眼、英語話者だが相容れない。でも異国の暮らしに苦労する同志としてなんとかやっている。
ゴミはアメリカ英語ではガーベッジgarbage、イギリス英語ではラビッシュrubbish。
恋人を喜ばせたくて、植物園のイベントは全て頭に入っている。「GW限定の企画があるみたいですよ」きっと行きたがると思ったのに、ちっとも興味を示さない。何を間違えたかと考えていると唇を塞がれた。「ずっとふたりでベッドにいるのだってGW限定の企画だと思うんだけど?」あぁ、もう我慢できない。
5月4日 みどりの日 植物園の日
ノンケ部下×植物好きなゲイ上司
薬が欲しい。もちろん非合法の薬。酒も煙草も女もダメな夜だった。惚れた女に煙草の火を押し付けられて連帯保証人の欄にサインをした。「運命共同体。結婚するみたいなものじゃない!」と焼けた肌に酒をかけられた。ほら、どれもダメだ。「じゃあ男を試しなよ」と刺青だらけの男が笑う。天国か地獄か。
5月5日 薬の日
不穏しかない。
高校生の自分は魅力が足りないらしい。誕生日に社会人の彼宅に泊まったが夜通しゲームして寝落ち。準備は無駄になった。しかしリビングで急に「ゴムとって」と言われた。今ここで⁉︎カバンの中からコンドームを取り出し渡すと彼はポカンと口を開けた。手には食べかけのお菓子の袋。まぎらわしい(恥)!
5月6日 ゴムの日
この後、彼氏に怒られます。「大事にしてるの!僕がどれだけ我慢してるか……」「我慢しなくていいのに」終わらない説教。
幼馴染は成績優秀だが、どこか抜けている。忘れ物ばっかりで、受験では試験会場を間違え、大学は8年通っても校内で迷子になっていた。そんな男の晴れ舞台。博士論文発表会では手に汗握った。何事もなく終わったかと思ったのに最後のスライドで大写しになる俺の写真。スペシャルサンクスって何だよ⁉︎
5月7日 博士の日
生活感のあるごちゃごちゃの部屋で目が半開きの写真。「なんであれなんだよ⁉︎」「論文作業で辛いときに見ると癒されるから」ファイルから取り出すボロボロの写真。「はぁ???」幼馴染の中ではベストショット。無自覚カップル。
営業成績トップの俺に転勤の内示が出た。行き先は辺境の地。絶望は怒りに変わり、デスクで退職届けを書き始める。「俺も異動。お前と同じとこ」隣に座る先輩の言葉に、ペンを握る手が止まる。「スキあり!」先輩は書きかけの退職届を奪った。「お前と働くの好きだぞ」紙飛行機がオフィスを飛んでいく。
5月8日 紙飛行機の日
幼馴染に恋してる。小中高同級生からのルームメイトだから告白のチャンスは山ほどあった。今もある。だけど俺の勇気だけが足りない。長縄跳びを跳べない子みたいに今だ!今だ!と首を振り続けているうちに、相手は歌手デビュー。『この曲を最古参ファンに捧げます。「意気地なし」』もしかして俺か⁉︎
5月9日 告白の日
いや、お前もな??と思いながらやっと告白する男。
出張帰りの我が家に望むのは平穏。しかし、玄関のドアは無施錠で半開き。散乱するゴミが見える。「誰が片付けるんだよ…」「お、おかえり」そろりと顔を出す同居人は「ファ〜イト♡」顔の横でぎゅっと両手を握った。「くそぉ!俺が一番好きだったチェキのポーズじゃねぇかぁ!」元推しとの生活、最高。
5月10日 ファイトの日
家事が壊滅的な元アイドルと暮らしているリーマン。ファン時代もおかんポジション。マネージャーに目をつけられ「あの子引き取りませんか?」と打診された。「猫かよ⁉︎」「ちがうよ」「人間デスヨネ」「あ、そっちか」「え?」「え♡」
白地にパステルカラーの風船が目印のスーパーは24時間営業。何でも売ってる夢の世界だった。深夜帯のレジ係は適当で大人に言えない買い物だってできた。地元を飛び出して、やってきた東京は街全体が夢の世界だった。あの店みたい。何でもあるし何でもできる。だけど俺は駄目になる。お前が足りないよ。
5月11日 ご当地スーパーの日
上京組だけが抱く哀愁。
五月の風邪は夏風邪だろうか。熱に浮かされた頭で考えても答えは出ない。「こら!ちゃんと寝てろ」恋人の冷たい手が俺の額から目元まで覆う。「GW後に発熱って馬鹿だ…」「気にすんな。早く元気になってナースと遊んでくれ」「は⁉︎」「白衣の天使、帽子付き♡」「熱下がった!」「顔真っ赤じゃんw」
5月11日 国際看護師の日 ナイチンゲール・デー 看護の日
ノリノリで看病する恋人のナースコスを想像するだけで頭が沸騰しそうな男。
思えば朝から様子がおかしかった。目覚めたら腕枕をされていたし、おはようのキスもされた。もう昼だけど。「お腹すいた?夜は外食にしようか」なんて初めて聞かれた。いつもは俺が全てを察し用意している。「今日は記念日だっけ?」「愛犬の日」「は?」「うっそ〜!」いや、目が笑ってないんだよな。
5月13日 愛犬の日
いつも雑な扱いをされ、俺たちつきあってるよな??と疑問を覚えることがあったけど、納得した男の話。彼氏じゃなくて、ペットだったか……。
大人はひとつもわかってくれない。子ども扱いを嫌がりながら、そうやって自分と彼の間に線を引く自分は卑怯者だ。制服を着ているうちはダメだよ、と告白を断られたから、私服の高校に進学してやった。家を訪ね「好きだよ」と言う僕に困り顔の彼が出してくれたスコーン。たっぷりのマーマレードが苦い。
5月14日マーマレードの日
大人と子ども、それぞれが葛藤するカップル。
仕事でミスしてへこみ中「ムリムリ…」「ムリムリちゃん発見!」布団をかぶる俺を同棲中の恋人が覗きこむ。「元気が出ることしてあげる」手には黒いストッキング。俺をよくわかってる!「321、えいやぁ!」ズボッと突っ込んだのは足、じゃなくて顔だった。「どう?」そうじゃないけど、元気出ました!
5月15日ストッキングの日
留学中の尻軽な俺は嘘が好き「日本には魔羅休みがあるよ」「君の恋人は苦労するね」と盛り上がる。いつも通りそう言ったら、調べ物好きな男が俺も知らなかった史実にたどり着いた。「性交禁忌の日にしたら三年以内に死ぬって!今日!絶対しない!」本気で怖がる男は可愛い。どうやって誘惑しようかな。
5月16日 性交禁忌の日
拝啓ははうえさま、お元気ですか?青空にはためく星条旗を見るたびにF××kと叫んでいます。くじけますよ。男の子だけど。営業先で自己紹介するたびに、拍手喝采です。仕事がしたいのに、米国人にいじられてばかりいます。名前かぶり、辛すぎる。それではまたおたよりします。ははうえさま。Shohei Ohta
5月17日 大谷翔平の日
アメリカ、ロサンゼルス市が制定。
お気付きですか?ベースは一休さ〜ん。野球と一休、きゅう繋がりです。くだらないやつです。
お前の表情がパッと華やぐ。視線は窓の外に注がれている。その先にいるのが俺だったらよかったのに。後ろから忍び寄ってハグしたら、驚くだけですぐに寄りかかってくる。俺たちはただの友だちだもんなぁ。お前の腹の前で握った拳を反対の手でなでる。なぁ、この意味知ってる?「愛してる」なんだって。
お前の表情がパッと華やいだ。キラキラ光る瞳は窓の外に釘付けで、もちろんその先に俺はいない。後ろから忍び寄ってハグしたら、驚くだけで確認もせず寄りかかってくる。俺たちはただの友だちだもんなぁ。お前の腹の前で握った拳を反対の手でなでる。なぁ、この意味知ってる?「愛してる」なんだって。
5月18日 ことばの日
5月19日 ごとぐる(ご当地グルメ)の日
日系アメリカ人×旅行中の日本人@サンディエゴ
デリケートな問題を雑に言う国際カップルの話。
「サンディエゴの特産品食ってなくね⁉︎どうしてくれるんだ米国人!」
「ブリトー食ったろ。違法移民の作ったメキシカンはサンディエゴの特産品だ」
「もっと独自の味付けとかあるだろ!」
「地続きだぞ。ねえよ」
「日本は県ごとに特産があって…」
「日本人のグルメ自慢うざ」
「日系の誇りはどうした!」
5月19日 ごとぐる(ご当地グルメ)の日
日本人×日本人に米国人当て馬
朝食中に日本人留学生同士で喧嘩勃発。米国人がワクワクしながら首を突っ込んできた。「目玉焼きには醤油」「ソースだろ!」それぞれ愛用の調味料を見せたら、やれやれと肩をすくませた。「目玉焼きにはこれ♪」「「あぁッ」」ぶちまけられたのはタバスコ。視線を合わせ頷く。譲れない戦いが今始まる。
5月20日 ガチ勢の日
念願のコラボカフェ。一番乗りを狙ったら苦手な同僚がいた。「口外厳禁で」「秘密にしてくれよぉッ」相席にうんざり……ではなく、会話が止まらない。これぞ推し。命助かる。もはや万能薬。「推し最高!興奮するよな!」「癒されるの間違いでしょう」「わからせてやる」「え‼︎」まさかのスピンオフ?
5月21日 ニキビの日 探偵の日
右頬にブツンとできた振られニキビに落ち込むアラサーってどうよ?正直本人もドン引き。憂鬱な気分で職場に向かうと、上司は顔を合わせるなりニンマリ「お、若いね」だと。「チョコの食べ過ぎだ!あたり?」「迷探偵っすね」「でしょ!」名じゃねぇ、迷う方だ。くそ馬鹿野郎。俺の気持ちも知らないで。
参考:https://woman.mynavi.jp/article/220526-6/#anchor-12
5月22日 うなぎの未来を考える日
すっかり高嶺の花となったウナギがスーパーで半額だったので、同居人にも買ってやった。いつもは温めもせずかっ喰らうが、トースターでじっくり焼くのを珍しいねと覗き込む。「うなぎと未来について考えてる」「なるほど……あ」ポタポタと垂れる鼻血。「夜のお誘いってことでいいよね」じゃねぇよ!
5月23日 キスの日
ルームメイトは医者の卵でクソ真面目。俺が散々モーションかけてるのに気が付きやしねぇ。こうなりゃ夜這い決行しかない。「お邪魔しま〜す♡」ベッドに忍び込むと、にゅっと腕が伸びてきた。「眠れないの?しょうがないなぁ」ふにゅんと額に柔らかい感触。ドキドキが止まらねぇ。寝ぼけ野郎のくせに。
5月24日 伊達政宗の命日
部屋を片付けたら眼帯が出てきた。「見て、伊達政宗!」歴史好きな恋人に見せたら、口を尖らせる。「逆!右目だ。これだからにわかは……」「そんなこと言ったら実際は眼帯つけてなかったじゃん」「はぁ⁉︎俺が好きなのは大河の政宗!」「はいはい渡辺——」だから俺と付き合ってる⁉︎ケンは不安です。
5月25日 ホゴネコの日
「兄貴、本気っすか⁉︎」俺を見るなり舎弟は慌てふためいた。「そいつ敵のイロじゃないすか‼︎」「文句があるなら拳で決着つけてやるよ」腕の中にいる本人は我関せずで誘うように口元をなめた。「う」魅力にやられた男たちが唸る。三毛猫のべっぴんさん。まさかオスだなんて知らないまま虜になった。
5月26日 源泉掛け流し温泉の日
「もうムリムリ…癒されたい。掛け流し温泉がいい……」仕事でミスったのは俺。自業自得だが慰めて欲しい。うめいていると恋人がやってきた。「まっかせなさーい!」「きゃ」身ぐるみ剥がされ風呂場に連行。バスタブの中に座ればシャワーが降ってきた。「ほら、掛け流し!」なんか違うけど癒されるぅ〜
5月27日 ドラゴンクエストの日
年の離れた恋人に自分のことを話すのは照れ臭いのと恐ろしいのとが半々だ。とっくに三十路を過ぎたおっさんの愛するゲームは、彼にとってレトロだが新鮮らしい。はしゃぐ声にホッとする。オープニング早々で歓声が上がった。「これエアコンのCMしてるやつ!」おしい。それはピチョンくんなんだなぁ。
5月28日 電柱広告の日
金持ちの感覚はよくわからない。世界的財閥の坊ちゃんは平凡リーマンの俺に「恋人にしてやる」と言い放った。「生涯安泰、夢の暮らしだぞ。良かったな」「もし俺が浮気したらどうしすんの?」「別に。浮気者の家まであと○mの看板を町中の電柱に出してやる」強がっちゃって。尖らせた唇、キス待ちか?
5月29日 こんにゃくの日
大学生の恋人ができたが、手つなぎとキスで俺たちのラブラブは足踏みしている。高校生だもん。我慢できないもん。一人暮らしの部屋に転がり隙を狙う。夕飯を作っているエプロン姿にムラッときて襲いかかったら、頬に激しい一撃。「こ、こんにゃく…?」「高校卒業するまではそれで我慢しろ」ひぇーん!
5月30日 ゴミゼロの日 掃除の日
「掃除しなくちゃ」その一言で居候先の女に捨てられた。そりゃそうだ。金はせびるし浮気し放題。いいところは顔と体だけの男なんだから。「餓死は嫌だ」「じゃあうち来る?」独り言に返事した男があまりに美人で見惚れた。差し出された手を取ると指が絡む。「仲良くしよ」首筋から極彩色の絵が覗いた。
5月31日 古材の日
おっさんが土手でひんひん泣いてた。酔いつぶして財布から金抜いたろ、と思ったのに会社を乗っ取られてすかんぴんらしい。「もう僕なんて使い道がないんだ」泣き言を言っても笑顔に見える恵比寿顔が悲しい。「家の柱だって再利用できるんだ。どうにかなんだろ」これがダンボールハウス同居1日目の話。




