2025年2月
「あれから二十一年。色々ありましたね」そう言って年若い恋人は俺を見つめるが、話題は俺たちの関係についてではない。二十一年前、彼は五歳で俺は二十歳。すれ違っていたらしいが恋は始まらなかった。俺たちが一周以上の年の差を越えて結ばれたのはキューピッド達のおかげだ。ありがとうプリキュア。
2月1日プリキュアの日
初代プリキュアの放映は2004年だそうです。
年下×年上。年上受けの妹がプリキュア好きで付き添っているうちにハマり、こっそり好きだったのを入社してきたオタク全開部下にバレ、熱く語り合いゴールイン。「職場で知り合い、共通の趣味で仲を深めました」の正統派カップル。
機嫌が良い君を見るのは気分が良い。お互い歳をとったが、笑顔だけは学生時代と変わらない。いま生まれていたのなら、きっと初めて結ばれた日もこうやって笑っていたのだろう。あの日の苦悩を思うと少し悔しい。「ふ、ふ、ふ、ふうふ!」君が笑う。ふうふの日、おめでとう。夫夫になった二人で祝おう。
2月2日はふうふの日。
いつか同姓婚が認められる日が来たら、こんな一コマが生まれるのかもしれません。少し悔しい、のは“君”が幸せそうな顔でいつも隣にいたから。苦楽を共にしてきた熟年カップルです。本来は夫婦の日ですが、夫夫二人の話なのでふうふの日としました。
(補足)本当はすごくすごく悔しいことだと思う。想いが通じて結ばれたのに、その喜びにひたる間もなく不安を抱かざるを得ない。何かを憎みそうになるのを隣にいる君には見せたくないからこらえ、小さな幸せを懸命に集めて守って生きていく。苦しみは半分に幸せは二倍にしてきた二人の暮らしはそんな感じ
俺の恋人は不思議ちゃん。ちょっと色々個性的。初めて喧嘩した次の日の朝食はすごかった。豆腐と油揚げの味噌汁に卯の花あえ、豆乳グラタン、おからドーナツ。食卓についた俺はいつも通り残さず食べて「おいしい」と言うとガッカリした「鬼は豆が嫌いなんじゃないの?」確かに俺の名字は鬼ヶ島だけど!
2月3日は大豆の日
三十路を越えた恋人の腹がベッドで弾むのを見て、まずいと思った。「おい、このぷよどうにかしようぜ」「なんで俺の摘むの?自分だってほら」「う」恋人は笑いながら隣に座り段になった腹をつけた。「ぷよぷよだったら消えてるぜ」「いけぇ〜!」「連鎖!」腹肉をぶつけて笑い転げる。絶対痩せねぇなw
2月4日ぷよの日(ぷよぷよの記念日)
自分の贅肉は憎くても、恋人のぷよは愛しい。
冬の朝は嫌いだ。俺の肌は乾燥に弱い。洗面所で顔を洗おうと思ったら同居人が鏡越しに変顔投げキッスをした。「ぶはぁっ!」噴き出す俺、切れる唇、痛みに絶叫。「てめぇふざけんな!」「君の笑顔が見たくて♡」「血が出たじゃねぇか!」「舐めたーい!」「このクソ吸血鬼!」「朝食いただきまーす♡」
2月5日は笑顔の日
出血したら血をあげなければいけない契約になっている男は先端恐怖症。犬歯を怖がるので吸血鬼はあの手この手を使って出血させる。ちっとも親切じゃない気づかいに男はうんざりしつつも、ちょっと楽しんでいる。
「おかえりなさぁい♡」玄関開けたらヒゲ面の男が裸でエプロン。料理なんてしないぐうたらヒモ男のくせに。「何?」デスマーチを乗り切り寝落ち寸前の俺は省エネ対応だが、やつは気にしない。「俺も就職しよっかなってことでお前のお嫁さんになりまーす!お風呂?ご飯?それともア・タ・シ?」「寝る」
2月6日は風呂の日でプロフェッショナルの日
社畜はスルーのプロフェッショナル。ヒモは迷惑行為のプロフェッショナル。この後ヒモは社畜を引きずって風呂へご招待し、一緒に入浴。ご飯は作っていないので選んでも出てきません。ヒモの遊びに付き合わされる社畜はもちろん明日も仕事です。
俺は課長に片思い中。出勤したら会えるから嬉しくてしょうがない。それなのに寝坊するなんて!『もしもし寝坊か?』「いや、今日長野県民の日なんで休みだと思って」『うそ。君の出身は北海道でしょ』「え?何で知ってるの…?」『あ、』ガチャンと電話は切れた。課長何でですか⁉︎今から出勤します!
2月7日長野県民の日になりそうですならなかった、長野の日・オリンピックメモリアルデー。
課長は好きな子のことは調べつくしたいストーカータイプですが、職権濫用はいかんと全て胸に秘めています。わんこ部下×むっつりストーカー上司
違法娼館の摘発なんて男娼にとってはいい迷惑だ。どうせ他にできる仕事なんかない。俺の場合は更についていない。客のふりをした密偵がかつての友で片思いの相手だった。「どうせなら遊んで行けよ」とからかうとベッドに押し倒された。無骨な男の優しい口付け。椿の花を落とさぬほどにじゃねぇんだよ。
2月8日つばきの日
好いた相手だからこそ、椿の花を落とさないくらいの優しい口付けが辛い男娼の話。
いつも成績最下位の俺だが社運を賭けた商談を勝ち取り社内中でチヤホヤされている。漫画と服をプレゼントされ夜はフグと和牛の懐石料理を食べた。白飯が美味しくてお前に食べさせたかった。家に帰ったらテーブルに大福がひとつ。俺の大大大好物だ。お前に祝ってもらうのが一番嬉しい。お茶淹れようか。
2月9日漫画の日、服の日、ふくの日、肉の日、北海道米「ふっくりんこ」の日、大福の日
この大福はプラスチックのパックに入っていて、有名店でもなんでもない近所の和菓子屋のもの。ただし営業時間が五時までなので同棲相手の恋人が会社を早退して買ってくれた。
職を失った。しかも同居人も同時にだ。ブラック企業が倒産した元社畜と無断欠勤でクビになったフリーター。やる気はない。「これからどうしよ…」しょぼくれる俺を元フリーターは笑う。「とりあえずニート×2爆誕を祝って布団で過ごそ〜!ずっと家にいたい!」それは確かに。封筒貼りの内職でもするか?
2月10日はニートの日、布団の日、封筒の日
神経質なビビり×楽天家
ニートが2人、収入はゼロ。それでも家計簿には出費の痕跡が並ぶ。家賃に光熱費、食費に…遊興費だと?「働かざる者パチ打つなかれ!」「い、生きてる…オレイキル、オマエシアワセ、コレシゴト♡」お前がバイク事故でICUにいた時を思い出す。確かに、生きてるだけで万々歳。俺より長生きしてくれや。
2月11日 万歳三唱の日
憲法発布の日「万歳、万歳、万々歳」と唱える予定だったが失敗したとか。
もらい事故で大ケガ。しかし当人はケロッとしてる。「お金もらえんの⁉︎ラッキー!ばんざー…いてて…なーんちゃって!」と同居人を揶揄いゲンコツを食らった。腐れ縁で同居中。付き合っていない。
サウナ仲間の元気がない。力になれることはないかと尋ねると、俺に胸の前で両腕を交差して欲しいという。「ほれ」「あ、てのひらは軽く開いて胸に沿わせて……あぁ!元気出るぅっ!」「って、手ブラじゃねぇか。男がやっても無意味だろ」「あるよ!好きな子なら!」は?もしかして俺たち両思いなの⁉︎
2月12日ブラジャーの日
サウナ仲間で散々ハダ力を見てるくせに手ブラをさせるというね……。疲れすぎて欲望に忠実になった男×封印していた片思いが急展開してびっくりな男
働かざる者パチ打つべからず。俺の言いつけを守ってアイツはパチンコを止めた。いや、そこは働けよ。スマホでぽちぽちやっているので嫌な予感。「オンカジだったら放り出す」「これは大丈夫。人生賭けてる」「は⁉︎」「ほれ」「なんだNISAじゃん」「楽しい老後にしようぜ」俺たち死ぬまで一緒かよ⁉︎
2月13日 NISAの日
付き合ってないふたりの腐れ縁トーク。
大きな出費の予定があるから今年のバレンタインは何もしない。そう二人で決めたのに、僕は約束を破った。社員割引がきいたし、ずっと使えるものだし、と言い訳しながら小さな包みを抱きしめ家を目指す。僕が買ったのは小さな一輪挿し。だってアメリカではバレンタインデーに赤いバラを贈るんだもんね?
2月14日 バレンタインデー
何もしないと言いながら、米国人の恋人は花屋さんでバラを買い、コンビニでチョコレートを買うんだろうと思っている僕の話。
こちらの作品より
平凡な僕をハニー♡と呼ぶガチムチ米国人との甘い日常
暴力みたいな風が吹くたびに期待する。あの日、島を行き来する連絡船が嵐によって転覆した。満開の梅が散る中、前線で救助に励んでいたあなたは誰?漁師より海に詳しく、医師より的確な手当てをした。僕の恋心を見抜き「次の嵐まで私を覚えていたら嫁に貰おう」と言ったよね。嫁入り支度、出来てるよ。
2月15日 春一番名付けの日
(春一番という言葉が初めて使われたことを記念した日)
神々しさとは無縁の神様は人間のフリをして住民を助けた。正体を隠していたが、少年に見抜かれどこか嬉しい。たった一人の隠れん坊は寂しいものだから。少年の恋心は儚いだろうと戯れに交わした約束だったのに…。
恋人の手帳を見てしまった。日付の横に描かれた意味深な記号◯◎●にピンと来る。「浮気か‼︎同棲開始早々いい根性してるな⁉︎」「ひぃ!違います違いますそれは君の観察記録で……」「は?」「ご機嫌は◯、不機嫌は◎、泣いたら●」引っ越ししてからずっと◯じゃねぇか。そうだよ、俺幸せなんだよ。
2月16日天気図記念日
◯は快晴、◎は曇り、●は雨を表します。
おっとり気象予報士×騒がしい鳶職人。
攻めが好きなのは雨の日。恋人が休みになるので。
恋人はアナログ人間だが意外なことに書籍は電子派だった。「学生時代、親に工口本を見られて…」「あ、納得。それはトラウマ案件」「工口はファンタジーだから結構エグいのも好きで。こればっかりは君ともシェアできない。ごめんね」すまなそうな顔をする恋人に言えなかった。もう既に読んでるなんて。
2月17日 電子書籍の日
遠距離の恋人同士が共通のアカウントで電子書籍をシェアする話を聞き驚きました。読書傾向が健全なのか、赤裸々な間柄なのか、気になるところです。学生の恋人の読書傾向が少しずつ変わっていくことにやきもきする社会人、みたいな歳の差遠距離BLがあったら読んでみたいです
「禁煙!」「まだ咥えてるだけだし」恋人は俺の口から煙草を奪うと、流しの三角コーナーに投げ捨てた。あーあ、拾えねぇ。「なんで吸っちゃダメなんだよ?」「昔は吸ってなかったじゃん!」「だから?」恋人は俺を睨みつけてると部屋を出ていった。俺の匂いが好きだからって言うなら今すぐやめんのに。
2月18日 嫌煙運動の日
恋人からの言葉が欲しい不器用な男の話。
「卒業が危うい⁉︎」青い顔で頷く幼馴染。追加レポートをやると言うので監視している。黙々とノートを埋めながら「コペルニクス先生…‼︎」と呟くので地学かと思ったら、出来上がった冊子のタイトルは『僕の幼馴染が可愛い理由♡』。ってその表紙俺?「同人誌の新刊、無事脱稿!」ってどういうこと?
2月19日 天地の日(コペルニクス生誕日)
コペルニクスが初めて地動説を公表したのは同人誌として出版された「コメンタリオルス」でした。
と言うことで、幼馴染の推し活で留年しそうだけど同人誌の新刊を書き下ろした男×推されていることにようやく気づいた男の話。春からルームシェア予定です。
鼻水たら〜り目は真っ赤。四十を目前に花粉症デビューを果たし、あまりの辛さに早退を決意した。在宅勤務の恋人に『早退する』とメッセージをし家に帰ると玄関で服を脱がされ風呂場へ送られる。シャワーを浴びている間に服を洗われ、部屋の空気清浄機はフル稼働。甜茶が淹れてあった。俺、愛されてるな
2月20日 アレルギーの日
バーで隣り合った男はアメリカ人。日本語、英語、フランス語と三か国語を操るくせに、どれも苦手と言う。そんなことってある?「じゃあ、どの言葉が一番得意なわけ?やっぱり母国語の英語?」「普段の会話とベッドの上じゃ違うけど、興味ある?」「は⁉︎え、それって…」慌てる俺に男は妖しく笑った。
2月21日 国際母語デー
「猫耳も尻尾もつけない!」顔を合わせるなり恋人は宣言した。友人時代は猫の日生まれをネタに散々いじったから警戒する気持ちはわかる。「お誕生日おめでとう。ヘッドホン欲しがってただろ?」「ありがと!」俺が着けてやると機嫌を直して満面の笑みを浮かべた。猫耳ヘッドホンなのいつ気がつくかな。
2月22日 猫の日、ヘッドホンの日
仕事帰りに寄ったコンビニで昔の俺みたいな少年と目が合った。「なんだ?やんのかてめぇ?」「うん。バイク貸して。移動する」懐かしい単車の乗り心地についついスピードが出た。目的地に着く頃にはすっかりお互い冷え切っていた。肩を組んで景色を眺める。「俺あの工場で働いてるんだ。お前も来いよ」
2月23日は工場夜景の日
元不良の男が不良少年を拾い更生させる話。
友人がおかしい。「白いターバン巻いたことある?」「ない」「白いマフラーも?」「ない」「白の全身タイツは⁉︎」「俺を変態にするな」「サングラスかけてみて」「?」「やっぱりそうだ…俺がピンチのときは来てくれよな」と言って去った。ググったら“もしかして月光仮面”と出た。え、違うからな⁉︎
2月24日 月光仮面登場の日
思い込みの激しい友人に月光仮面にされそうな男の職業は探偵(物語中、月光仮面の正体は探偵と匂わせがあるが未確定)。やけに月光仮面について詳しい友人に、タイムスリップ説と前世記憶持ち説が浮上してお互いに腹の探り合いが始まる……
待ち合わせに現れた恋人は一張羅に身を包み盛大にむくれていた。「恵比寿でデートって言ったじゃん!」俺がいつもの格好なのが気に入らないらしい。「ヱビスデートって言ったんだよ。お前の勘違い」「クソ」「貧乏だった時にコンビニで缶ビールを半分こしてたやつやりたいんだけどダメ?」「……やる」
2月25日 ヱビスの日
共にどん底を這い上がってきたカップル。貧乏時代に心の支えだった『ささやかな特別』を成功者になった後にも楽しむ話。
「どうして出て行くんだろう。幸せだったのに。ずっとここにいたかったのに。バカみたい…」「おい、いつまで悲劇のヒロインごっこしてるんだ。起きないならお前の飯も食っちまうぞ」「起きたくない働きたくない家にいたいけど飯は食いたい」「就職おめでとさん。今夜は焼肉」「やったぜ、脱ニート!」
2月26日 脱出の日
往生際の悪いニートですが、焼肉のためなら頑張れる。
俺たちは水と油だ。行事ごとは総スルーのお前に期待するのはやめた。今年はバレンタインもなし。ホワイトデーもないんだろう。そう思ったのに突然花束を持って帰ってきた。「なに?」「恋人にあげたかっただけだ」俺たちは正反対で混じり合わないけど寄り添うことはできるから、ずっと一緒にいようか。
2月27日 冬の恋人の日
バレンタインとホワイトデーのちょうど真ん中の日だそうです。
不器用な俺たちの関係なんて簡単に終わってしまう。記念日を祝うレストランでつまらない喧嘩をした。「別れるか」否定の言葉はなく絶望の中、席を立った。「バカヤロー」夜の街に叫ぶ。「大嫌い」と呟いたら「俺は好きだ」と返事があった。もっと早く言えよ。振り向いて俺も、と答える勇気をください。
2月28日 バカヤローの日
pome村@pomemura_さん
#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる
https://x.com/pomemura_/status/1893279780356694416
「んなぁなあぁん……あぁんっ!」絡んだ足は汗ばみ、両手は必死に服を握りしめる。一体どんな夢を見てるんだ?昼寝中の猫を優しく撫でると全身の緊張がゆるんだ。普段から抱きつくわ、口元を舐めようとするわ、勘違いを誘う行動ばかりだ。「飯にするから起きろ……じゃないとお前を食うぞ」なんてな。
「黒猫なんて縁起でもない。小さくて汚くて死にそうだし、面倒はごめんだ」そう言いながら男は俺をそっとつまみ上げ家に連れて帰った。温かい食事に柔らかい寝床。言葉とは裏腹に男は優しい。俺が人型になっても「ちびっこ」と言っただけで追い出さない。俺もう大人だよ。誘ってるの。早く食べてよぉ。




