2024年5月
「お前はまた遅刻かぁ〜‼︎」
「ひぃっ!デモ行進には間に合ったじゃないっすかぁ」
「新人のくせに最後に来るなんていい度胸だ。罰としてお前はマイクパフォーマンス係だ」
「いいんすか⁉︎」
「あっ、ヤバい。マイク返して」
「社長!社食の唐揚げを5個にしてくださ〜い!」
「面白いから続けて」
5月1日はメーデーの日。
よくわからないまま労働組合に入り、若いなぁとおっさんに可愛がられる新入社員の話。もちろんメーデーが何かわかっていない。
「遅刻常習犯には罰を」をお題に140字の物語を書いてください。
「婚活をする!」
「は?もう俺と住んでるから孤独死は回避できるって言ってんじゃん」
「お前に嫁さんきたら困る」
「それはない」
「高収入イケメン童貞のいうことなんか信じられないんだよ!」
「ローン完済済みタワマン住みも追加してな」
「マジ優良物件」
そういう俺がお前を選んでるんだけど?
5月2日は婚活記念日。
押しが強いんだか弱いんだかわからないハイスペ男と無自覚振り回し男。早く好きって言っちゃえよ〜。
「通じない」をお題に140字の物語を書いてください。
「いい日だなぁ。天気の良い休みの日にこうしてお前とゴロゴロしてんの。なーんにもしないでさ。ぜいだくだよなぁ。こういうのが幸せってやつなんだよ」
「お前、直面してる地獄から目をそらすのうまいよな」
「えぇ?!いま幸せの話してるんですけど?」
「引っ越し前の掃除はどうした?」
「う〜?」
5月3日はそうじの日。
多忙なカップルがやっと休みを合わせて顔を合わせたなら、何もしない贅沢を楽しみたくもなるけれど……。
「やらずに諦めた」をお題に140字の物語を書いてください。
ピンポーン、とインターフォンが鳴るのを聞くのはいつぶりだろう。根暗な陰キャ在宅ワーカーの俺は久々の客にはしゃいでいた。
営業マンらしきスーツの男を部屋に上げてしまう。
「私こういうものです」
名刺には名前しかない。
「住所不定無職です。居候いかがですか?」
「いやいや、いらんだろ!」
5月4日は名刺の日。
折り目正しい住所不定無職のヒモもいいものですね。ビジネスマナーは完璧。営業のトークスキルも一流なのに家事はからきしの男が家政夫として居座る話。
「押しかけ同居人」をお題に140字の物語を書いてください。
連休だからと従兄弟を部屋に泊まらせた。俺の憧れの人。俺を子ども扱いする人。手の届かない人。シャワーを済ませて同じベッドに潜り込んだら何かが起きると思っていた。
「懐かしいなこの絵本。まだ持ってたんだ」
「俺の宝物だから。百年経っても持ってる」
きっと俺の思いは百年経っても届かない。
5月5日は子どもに本を贈る日。
大人になっても埋まらない年齢差が切ない片思いの話。
「百年後までに」をお題に140字の物語を書いてください。
「もう掃除いいよ。こっち来て」
「コロコロが終わってねぇの。行かねぇ」
「せっかく恋人が休みなのに?」
「金ないなら家事しろって言ったのお前だろ⁉︎」
「恋人になったら甘やかしたい」
「ヒモじゃん」
「お嫁さんは?ヒモよりマシじゃない?」
「そう、か?」
「やったー!」
「待て!待て!」
5月6日はコロコロの日。
友人→居候→恋人→お嫁さんの男。自分が転がり込んだと思っているけど、囲い込まれただけだったりして。
「よっぽどマシ」をお題に140字の物語を書いてください。
俺が地元で就職することが決まってから友人の機嫌が悪い。
「そのアイス好きだろ。うち来るたびに食べてるよな」
「気のせい」
「今ので最後だよ」
「うそ!」
「俺の地元だといつでも買えるよ?」
「別にそこまで好きじゃない」
「それって、俺のこと?アイスのこと?」
「なっ!別に……なんだよ!」
5月7日はブラックモンブランの日。
九州出身者一押しのアイスを餌にただの友人関係から脱したい男の話。アイスも男のことも嫌いじゃないだけを装うツンデレ友人を素直にできるのか。
「嫌いじゃないだけ」をお題に140字の物語を書いてください。
「おい、俺に好きって言ってみろ」
「は?クソ野郎が。ついに頭がイカれたか」
「ちょっとぉ、ご主人様に向かってそれはなくない?!」
「はいはい。どうせ俺は無能な奴隷ですよ。で、どうした?」
「さっき食べた実が苦かったからお口直しに甘い言葉が欲しかったの!」
「……絶対言わねぇ。ばーか」
5月8日はゴーヤの日。
一緒に旅をする能天気な主人と冷めた奴隷。もちろん両片思いです。
「甘い言葉をちょうだい」をお題に140字の物語を書いてください。
「アイスクリームの旬は冬だと思う」
「異議あり」
「気温が上がるとすぐ溶けるだろ。最高の状態がすぐに失われる」
「なるほど、あッ!」
「ほら見ろ」
「うわ、ベタベタ。シャツの中に入ったわ」
「な、最悪だろ」
「あそこのホクロまで垂れた」
「……」
「夏のアイスもいいもんだろ」
「最高です」
5月9日はアイスクリームの日。
恋人の誘惑にあっさり主張を覆す男。欲望に忠実で素直ところが可愛いと思っている恋人はにっこり。
「見えないホクロ」をお題に140字の物語を書いてください。
「手ぶらで入れる寮三食付き初心者歓迎の仕事って聞いた」
「うん。おしゃれなコンクリート打ちっぱなし住宅で制服支給」
「白と黒の横縞のツナギって囚人じゃねーか!!」
「あたり♥️」
「無実だ」
「牢屋が完成したから誰か入れたい」
「お前平和な顔してクソ野郎だな」
「侮辱罪だ♥️ガッチャ〜ン」
5月10日はコンクリート住宅の日。
行動派の牢屋建築マニアの男に捕まった不幸な男の話。狂った人は平和な顔をしていてほしい。
「平和の仮面」をお題に140字の物語を書いてください。
「コンビニ行くか」
「君からデートのお誘いだなんて」
「前向き過ぎない?ATM行くだけなんだけど」
「君がリードしてくれるの嬉しい」
「金が欲しいだけ」
「恋人に甘えられるのが生きがい」
「いや、お前のことは鵜だと思ってる」
「運命の赤い糸で繋がってる」
「金くれるならなんでもいい〜」
5月11日長良川鵜飼い開きの日。
ポジティブすぎる男とロクでもないヒモ男の日常。
ヒモ「デートじゃないの」
ポ「デートじゃないの?!」
「デートじゃないの」をお題に140字の物語を書いてください。
「今日は母の日だから感謝を込めて料理した♥️」
「俺はお前の母ちゃんじゃない。しかもなんで激貧な俺たちの食卓にエビフライがあるわけ?!」
「上等だよ〜」
「衣が厚すぎで怪しいんだよ」
「俺がとってきた」
「まさか、ザリガ——」
「だめ!言わなければエビだから」
「そんなわけねーだろが!!」
5月12日はザリガニの日。
マイペースな男と突っ込み続ける男の話。
食用は目を閉じればエビです。そこらへんで取ってきたやつはダメ。
万年青二三歳さんは「上等な衣」をお題に140字の物語を書いてください。
「ふられたぁ〜!」
「はい、いつものやつ」
「ありがと。いつもカンパリオレンジ作ってくれるけどさ。どうして?“自由”っていう意味なんだろ?」
「お前には自由が似合うからかな」
「そう?お前が失恋した時は俺が作ってやるよ」
「じゃあ作ってくれよ」
「何、お前も振られたの?慰め合おうぜ〜」
5月13日はカクテルの日。
鈍感男と好きな人の恋を見守り続けるバーテンダーの秘めた恋の話。自由な彼が好きだからそのままで良い。叶わない恋から自由になりたくない。
「神様だって知らない」をお題に140字の物語を書いてください。
「だから、熱ない。大袈裟」
「でもハニー頭痛いでしょ。はい、ちゃんと熱測って」
「大丈夫なのに」
「良い子にはお膝ピローしてあげます」
「筋肉すごい」
「ピって鳴った!」
「37度か。微熱だった」
「37度?びねつ……?それファーレンハイトでいくつなの?」
「う。熱があるのでわかりません!」
5月14日は温度計の日。
ファーレンハイト=華氏
マッチョの膝枕は硬すぎるけどお気に入りなハニーと摂氏はピンとこないアメリカ人ジャックの話(既存作より)
https://novel18.syosetu.com/n3480ia/
「硬すぎる枕」をお題に140字の物語を書いてください。
「あ、だめだこのハサミ。俺左利きだから使えないわ」
「そうだっけか。貸して。開けてやる……って何これ。ストッキングじゃん。残業食買いに行ったんじゃなかったのかよ」
「残業食だよ?お前が残業頑張れるように俺のこと食べさせてあげようかなと思って」
「は」
「足フェチなの知ってるぜ〜?」
5月15日はストッキングの日。
まだ何も始まっていない同僚同士の話。
この後、机に座って履かせてもらい、「どっち先にする?仕事?俺?」と不敵に笑います。
「左利きのフリ」をお題に140字の物語を書いてください。
「しばらく旅に出るので探さないでください」
「わかった」
「いやいや、違うでしょ。そこはどこ行くの?大丈夫?って慌ててくれなきゃ」
「居候がいなくなって願ったり叶ったりだが」
「ほら、お前のチケットも取ったから行くぞ」
「俺は仕事があるって!」
「休めよ」
「俺の出世がああああああ!」
5月16日は旅の日。
マイペースな無職居候に順風満帆な人生を邪魔される男の話。
万年青二三歳さんは「急降下」をお題に140字の物語を書いてください。
「悲報:四十路目前の俺氏、EDになる」
「だろうな」
「は?お前、俺の何を知ってるの?」
「高血圧なのに塩分、脂肪大好きのデスクワークマン」
「ひっ!」
「いいかげん摂生しろ」
「え〜」
「EDを治さないならお前のつぼみが花開くけどどうする?」
「な、治す!」
「毎月マイナス1kgがノルマな」
5月17日は世界高血圧デー・高血圧の日
学生時代からルームシェアをしている二人の話。
無自覚のほほんとその尻を狙う男。
万年青二三歳さんは「つぼみのまま」をお題に140字の物語を書いてください。
「1ヶ月に1kg減ってことは1日32g減らせばいいの?余裕」
「お前ってなんでそんなに馬鹿なんだろうな。早く開花しそうでびっくりする」
「は?こんにゃく、バナナ、しめじにところてん。食物繊維豊富なメニューで健康的に痩せるぜ」
「腸活までばっちりとか最高。早速布団干しとくな」
「やった〜??」
5月18日はファイバーの日。
昨日の開花の危機が迫る男と期待に胸を膨らませる男の続編です。
浅はかな男はかわいい。
万年青二三歳さんは「布団の香り」をお題に140字の物語を書いてください。
「お前危機感ないの?」
「そんなに人の尻を見るな。穴が開く」
「もう開いてる。あとはもうちょっとこう……」
「やめろ!」
「で、どうして丼飯食べてるの?」
「減量といえばボクシングだろ?体験ボクササイズに行ったらダラダラ喰いは良くないって聞いたから思い切り食べてる」
「もっとお食べ♡」
5月19日はボクシングの日。
昨日に引き続きちっともダイエットが進まない男と開花を待つ男。
万年青二三歳さんは「お腹が空いたら」をお題に140字の物語を書いてください。
「せっかくの誕生日なのに、飯食いに行かなくてもいいの?奢るぞ?」
「だってお前、減量中だろ」
「うん、増えてた……」
「うわ〜」
「代わりにお祝いの言葉でも言っとく?」
「おう」
「愛してるぞ♡」
「お前のそういうとこ、本当にきっついわ」
「ん?なんか言った?」
「いいや、なんでもない」
5月20日は世界計量記念日。
昨日に引き続き無神経な減量中男と結構本気で傷ついた拗らせ片思い男。
万年青二三歳さんは「惨めな贈り物」をお題に140字の物語を書いてください。
「お前、ちゃんと飯食ってないだろ」
「いやぁ……?」
「目が泳いでるんだよ。月末だからって無理な減量してんだろ」
「うぅ〜ん。否定はしない」
「もうそれ肯定と同じだからな」
「じゃあ、違う」
「はい嘘。ニキビできてんの。飯抜くといっつもそうだよな。減量計画は一時中止。焼肉予約したぞ」
5月21日はニキビの日。
「連絡済み」をお題に140字の物語を書いてください。
「不摂生マン、なぜ減量を始めたのか覚えてるかな?」
「お、俺のこと子ども扱いし過ぎじゃない?!」
「じゃ、言ってみ?」
「つぼみ開花、絶対阻止」
「はい、残念。お前のメロンソーダは没収です」
「今日のラッキカラーが緑なのに」
「健康のため青汁にしとけ」
「抹茶オレだ〜!好き!」
「はぁ」
5月22日は抹茶新茶の日
「大人なの」をお題に140字の物語を書いてください。
「お前の言う通りに食事とってたら速攻体調戻ったわ〜!ありがとな!」
「良かったな」
「これからはお前に食事管理してもらおうかな」
「じゃあ、減量再開か」
「おう!早速走ってきたんだ〜、見て見て、めっちゃ汗だく」
「お疲れ。ほら、おやつだよ」
「チョコチップクッキーだ!」
「全部食え♡」
5月23日はチョコチップクッキーの日
「汗がしたたる」」をお題に140字の物語を書いてください。
「お前の作る飯うま過ぎ〜イテテ」
「どうした?」
「魚の小骨が喉に刺さったっぽい」
「そういう時は米を丸呑みするんだぞ」
「もう食べ終わっちゃった…」
「足せばいいだろ」
「おかわりやめてるのに」
「緊急事態だから仕方ない」
「そっか〜!って山盛りだな?」
「納豆、なめ茸、漬物あるぞ♡」
5月24日は菌活の日
「喉に刺さったとげ」をお題に140字の物語を書いてください。
「宮崎に親戚が欲しかった……」
「もしかして、名字を宮崎にしたいという話か?」
「え?いや、全く違う。お前、宮崎に親戚とか友達とかいないの?」
「そうか。俺の戸籍に入りたいのか」
「全く言ってないね」
「弁護士に相談するか」
「待て。宮崎の完熟マンゴーが食べたいって話だってば!」
5月25日はみやざきマンゴーの日
もう減量のことなんて忘れてる。執着心の強い男は宮崎くんに決定
「縁なんてない」をお題に140字の物語を書いてください。
「せっかくだから宮崎へ行くか」
「やったー!完熟マンゴー食べる!」
「奮発して露天風呂付きの部屋にする」
「温泉?」
「もちろん源泉掛け流し。お前をトロトロにしてやるよ」
「よくわからんが、俺だって負けねー!!」
「お前なら簡単。たった二文字言うだけで俺はトロトロだ」
「え?何それ?」
5月26日は源泉かけ流し温泉の日。
宮崎の青島温泉はトロトロらしいので。
「好きって言って」をお題に140字の物語を書いてください。
「ひぃん……」
「その声、腰の動き、もしかして俺を誘ってる?」
「バランスボールに乗ってるだけですけど⁉︎ひょえぇッ」
「基本の姿勢でそれか。お前は背骨が反ってるな」
「ちょ、やめろ。触るな!ひぃぃ」
「いい声だな」
「終わり!お前が喜ぶからこれはやめる!」
「おやつの時間ですよ〜♡」
5月27日は背骨の日。
好きな気持ちも減量を邪魔するのも隠さなくなった男。
「ゴミ箱行き」をお題に140字の物語を書いてください。
「ふぇ……」
「え?大開脚でその声、俺を誘ってる?」
「またかよ。柔軟体操してるだけ!」
「背中押してやる」
「助かる〜」
「え?何このくびれ。お前骨盤広くないか⁉︎」
「やめろ!その不埒な手!」
「奇跡の安産体型だ……これは、産める」
「違う!」
「もう良くない?俺かなり我慢したよ?」
5月28日は骨盤の日。
「揺らぐ決心」をお題に140字の物語を書いてください。
「お、落ち着け」
「俺は落ち着いている」
「目が血走ってるんだってば!怖い。まじで」
「大丈夫、優しくするって」
「待て待て何の話だよ⁉︎」
「開花宣言しとこ♡」
「お前本気なの?」
「あぁ。お前のことずっと好きだった。絶対幸せにするぞ?」
「それはわかる。お前いい奴だもん」
「だろ?」
5月29日は幸福の日。
「まだ、わからない」をお題に140字の物語を書いてください。
「わかった」
「答えは?」
「急かすなよ。まだ今月終わってない。ちゃんと考えさせろ」
「そういう対象になるかどうかなんて、すぐわかるだろ」
「そんな簡単に言うなよ。俺にも一応人生計画があるんだよ」
「結婚とか?」
「いや?ずっとお前とルームシェアしてくつもりだった。まぁ、明日言うよ」
5月30日はオーガナイズ(心地よい暮らしのために整理整頓する)の日。
「眠れない前夜」をお題に140字の物語を書いてください。
「少しは遠慮しろよ。体重計の前で待ちやがって」
「いいだろ。最初で最後だから」
「なんで俺なの?」
「さぁ?なんかお前がいいんだよなぁ」
「そうかよ」
「何キロだった?」
「増えてた」
「減ってるじゃん」
「もう言わせんな、ばか」
「え……嬉しすぎて車内広告出したい」
「絶対やめろ!」
5月31日は車窓サイネージ(タクシーの車内から投影する広告手法)の日。
ハッピーエンド♡
「一度だけの思い」をお題に140字の物語を書いてください。




