ギッチギチとフワッフワ
パンはギッチギチなのが好き。
持ってみると小ささのわりに重くて、揉んでみると弾力があって、齧りついたら中身はしっとり。噛めば噛むほどに味が出るのが好き。
でも周囲の人のほとんどはフワッフワなパンが好き。それほとんど空気なんじゃないの? 空気にお金を払う気にはあたしはどうしてもなれない。
お饅頭はフワッフワなのが好き。
指先でつまんでも、まるで空気みたいに重さを感じなくて、離したらまるで空に向かって飛んで行きそうな軽さに、心もふわっと軽くなる。中身があんこでもチョコでも、肉餡でも、そんな重たいものが真ん中に入ってるとは思えない。おやつのお饅頭はそんなのが好き。
お饅頭の空気はただの空気じゃないんだよ。とっても優しさと味わいを含んだ空気だから、それを吸い込むためにお金を払いたい。
考えたらフワッフワのパンでも小麦の良い香りを含んだ空気がいっぱい入ったのもたまにある。そんなパンならフワッフワでも好き。おやつになる。
お饅頭でも台湾旅行で食べた肉まんは笑顔が滲み出るほど美味しかった。お饅頭の生地がギッチギチで、中身のギッシリ肉餡から溢れるスープをしっかり閉じ込めてた。一個で充分朝ごはんになった。
考えたら『食事はギッチギチ』、『おやつはフワッフワ』が好きなのかな?
小説でもギッチギチなのとフワッフワなの、あるよね?
ギッチギチに文字が詰まった小説は食事かな。なるべく多くの文字を詰め込んでほしい。それを噛み締めながら、自分で皮をほどいたりしながら味わいたい。どっしりと腰を据えて、小一時間睨めっこしながら、対話するようにいただきたい。きっと栄養もたくさん詰まってる。
フワッフワに空白が多い小説は、おやつなの? でも行間の空気をふわっと吸い込んで、ほうっと溜息をついてしまうものもある。
結局、どっちも美味しいよね。
ギッチギチでも、フワッフワでも。
美味しさが、食感に合ってれば。