幽霊車
こちらは百物語五十六話になります。
山ン本怪談百物語↓
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私がテレビ局のスタッフとして働いていた時のお話です。
テレビのオカルト企画で、山奥の心霊スポットへ取材に行くことになりました。
場所はN県のMトンネルという場所です。
心霊スポットとしてはマイナーな場所ですが、雰囲気が不気味で地元の人たちも近寄らない場所でした。
「先輩、こっちであってるんですかねぇ?」
時間は夜の10時過ぎ。
ほかのスタッフたちと一緒に車で現場へ向かったのですが、山奥のマイナーな心霊スポットということもあり、何度も道に迷ってしまいました。
「この先にFトンネルがあって、そこを抜けるとCトンネルがあるらしい。そこをさらに抜けると目的地のMトンネルがあるはずだ。ややこしいなぁ…」
カーナビを確認したり、心霊スポットについて書かれているサイトを見ながらMトンネルを探しましたが、なかなか本物を見つけられません。
「ここがMトンネルですかね?」
「いや、Fトンネルじゃないかぁ?」
「まだCトンネルのはず…」
一応それっぽいトンネルの前に到着したのですが、ボロボロのトンネルだったため名前が確認できません。
「あそこに書かれている名前確認できるか?たぶんCトンネルだと思うけど…」
謎のトンネルの前で途方に暮れていると、1台の車が私たちのすぐ隣で停車しました。
「あの、何か困ってんすか?」
車の窓が開くと、中からヤンキー風の男女2人が顔を覗かせた。
「番組の取材で、Mトンネルを探しているんですよ。色々調べているんだけど全然わからなくて…」
私たちは2人にMトンネルの場所を尋ねてみることにしました。すると…
「このトンネルを超えた先にあるトンネルだよ!私たちも今からそこに行くの!大丈夫、すぐそこだから!」
助手席に座っていた女性がそう答えました。2人は私たちに向かって笑顔で手を振ると、すぐに車を走らせていきました。
「なんだ次のトンネルかぁ。俺たちも行こう。あの2人に感謝しないとな」
私たちはすぐに車へ乗り込むと、あの2人を追いかけるようにトンネルの中へ入っていきました。
「マイナーな心霊スポットを知っているなんて…あの2人は心霊マニアなんですかね?」
「世の中見かけによらないからなぁ~」
そんなことを車内で話しながら、車はどんどん真っ暗なトンネルの奥まで進んでいく。
「一応Mトンネルが心霊スポットになった理由なんだけど…トンネルの中でカップルが焼身自殺をやらかしたらしい。車に乗ったままの状態で車内に火を点けたから、車ごと中で…」
その時でした。
「危ないっ!」
車を運転していたスタッフが、なぜか車を急停止させてしまいました。後部座席に座っていた私が慌てて車の前を見ると、そこには信じられない光景が広がっていました。
「なんだこれ…道が…ない…?」
車の目の前にあったのは、薄汚れたコンクリートの「壁」でした。
「道が塞がってる?どういうことだよ…あのカップルと車はどこに行ったんだ…?」
車を出て辺りを確認してみましたが、車が抜け出せそうなスペースはどこにも見当たりません。
困った私たちは、一度車をバックさせてトンネルの外へ出ることにしました。すると…
「あら、あんたたち間違えて入っちまったのか?」
トンネルの外に出た瞬間、軽トラに乗っていたおじさんが私たちに声をかけてきました。慌てて事情を話してみると、おじさんは衝撃的なことを言い始めたのです。
「ここがMトンネルだよ。正確には『新Mトンネル』だけどな。この先にあった『旧Mトンネル』で事件があってね。旧はそれで封鎖されちまったんだけど、新も色々あって封鎖されちまったんだ。このトンネルを通ることはもう不可能だよ」
最初は信じられませんでした。しかし、おじさんが嘘を言っているようにも思えなかったので、私たちは上司に連絡をして取材を中止にしました。
「なぁ…あの2人はどこに消えちまったんだ…まさか自殺したカップルって…」
帰りの車内、その話題で返事をしてくれるスタッフは1人もいませんでした。
どうも 山ン本です!
遅くなりましたが、夏のホラー2021お疲れさまでした!
9月は仕事が忙しくなりそうなので、投稿できない日が多くなるかもしれません…
できるだけ頑張って投稿していくので、次回もまたよろしくお願いします!