7話 青年将校は決起する
今日は朝から教官が騒がしい。
定期的に無線などを使って各署と連絡を取っているようだし何より落ち着きがない。
「本日貴官らには拳銃と小銃の訓練を行う」
そう教官が叫ぶ、どうやら今日の訓練は拳銃と小銃らしい。
初めての訓練の時は少しはロマンを覚えたものだが何回もやってくると感動は薄れるものだ。
小銃を使いいつも通り訓練をする、教官に言われたことを思い出しながらボルトを引き銃弾を装填する。しっかりと肩づけ頬づけを意識ししっかりねらって撃つ。
しかしながら命中精度はあまりよくない。同級生の三人の中で一番成績が悪い
因みに一番いいのは勝だ、外さないだけでなくほとんどど真ん中を撃ちぬいている。
これには教官も苦笑せざる負えない。
訓練が終わり武器洗浄片づけを行おうとしたとき教官が
「今日は倉庫じゃなくて宿舎に置いてくれ」と
「どうしてですか?」と聞くと、少し悩んでから教官はこう答えた。
「最近軍部がキナ臭くてな、お前らにも危険が迫る可能性がある、その時身を守るものが必要だからな」
「承知いたしました」
挙手の敬礼を行い、宿舎に持っていく。
若干の不安を覚えつつ、就寝時間になったため寝た。
起きたのは数時間後だ、まだ起床時間も程遠いような深夜、ラッパが鳴り教官が起こしに来る。
「決起だ!青年将校が決起した!直ちに警戒体制に移れ!」
三人とも小銃を受け取り、教室に向かう
「詳しい説明を行う、よく聞け、先ほど歩兵第一連隊、第三連隊、近衛歩兵第三連隊の一部が叛乱をおこした。現在事態の収拾に取り掛かっているところだ。安全が確保されるまでよほどのことがない限りここを動くな!いいな?」
教官がこのように詳細な説明を行った。日付は2月26日
226事件である
それに気づいたときにはもう遅く、事件は起こってしまった。三人とも訓練に集中するあまりに実際の歴史のことをすっかり忘れてしまっていた。
しかしいまさらそんなことを嘆いても遅いため今は警戒に努める。
「それにしてもとんでもないことになったな」と勝が言うと
「全くだよねぇ」と桜が頷く
「でもこんなところには反乱部隊も来ないでしょ」と自分が言うと
ほかの二人もそうだよねぇと言っていたその時
軍靴と地面がぶつかる音が鳴る、複数人が走ってここにきているようだ。
急いで扉から離れ銃を構える。
扉を勢いよく開けて出てきたのは5人程度の小隊であった。
その小隊長は私たちに向かって「所属と階級は?」と聞く
教官からは所属と階級を聞かれた場合”陸軍省人事局教育6課”と答えろと言われていたため、三人ともそれに倣い自己紹介をする。
「教育六課、聞いたことないな...なぁお前聞いたことあるか?」
小隊長らしき人が部下に向かってそう聞くと
「いえ、小官も聞いたことないです」
「お前ら怪しいな...」
「...」
「私の教え子に何か用かな?」
その声は小隊長の後ろから聞こえる、小隊長は小銃を私たちから後ろに向けようとするが相手はその小銃を掴み、相手の脇腹にストックをたたきつける、相手がよろめいた瞬間相手から小銃を奪い取る。
それに気づいた他兵士は急いで銃を向けるものの一歩遅く、相手が先に発砲し一人の兵士の足に銃弾が命中する。
同士討ちを避けるため小銃ではなく、軍刀に手をかけぬこうとするが軍刀を抜こうとするその瞬間魔法が発動し雷が撃ち込まれる。
この数秒にして、三人もの兵士を殺さず無力化したのは、まぎれもない私たちの教官である。
教官は振り向き残りの兵士に対応しようとしたが、桜と勝がすでに無力化していた。
栄一はこの戦闘に参加できなかった。
こうして5人の兵士を無力化したところで栄一ら三人は言う
「教官殿!」と
「無事か?」
「はい、全員無傷です!」
「よろしい、ここにも攻撃が加えられている、直ちにここから撤退する」