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色が変わる瞬間を  作者: 粥
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トウマは中学一年生の時に一人になったそうだ。

家から帰ってくると家は炎に包まれていて、目の前に立っていられないくらいの火力だったらしい。


「両親はちょうど家にいまして、じゃあなぜ家から出て来れなかったかって言われたら、中で一酸化炭素中毒になって亡くなってたらしいです」


と、トウマは淡々と語っていた。

今は素っ気なく話しているが、こう話せるようになるまでどれだけの思いをしたのか考えても結局、俺には分からないだろう。


「大変…だった?」

「まぁ、私もそれなりに女の子だったんで。でも、お婆ちゃんとお爺ちゃんが助けてくれたので」

「そうか。…墓参り行ってるか?ちゃんと」

「行ってますよ命日に欠かさず。私に人の心がないとでも思ってるんですか?」

「いや…そんなことは思ってないけど…」


嘘だ、話を聞くまでは思ってたし、恐らくこれから先も本当にあるのか疑わしい事が起こるだろう。


「よくもこんな面白くもなんともない、ただ気を使われるだけの話をさせましたね。お詫びに何か奢ってください」

「あー…まぁいいけど」

「じゃあコンビニ行きましょう、スイーツとアイスどっちも買ってください」

「うちではアイスもスイーツの中に入るんだけど」

「四の五の言ってっとぶち殺しますよ」

「口悪」


トウマと一緒にコンビニに行った。


「行きは私が漕ぐってことでいいですよね?」

「ん、おっけ」


トウマと俺はコンビニ行く時は基本的に自転車で二人乗りをして向かう。

どちらもバイクと車の免許は持っているが、コンビニに行くだけの為にバイクも車も出すのは面倒臭いからだ。

行きはトウマが漕ぐので帰りは俺が漕ぐことになる。


「そろそろ暑くなってきますね」

「だな~本格的な夏がそろそろ来ますよって言ってるみたいだ」

「一久さんは、夏は好きですか?」

「いや別に。イベントは好きだけど、暑いだけの夏に魅力は感じないなぁ」

「イベント…夏祭りとか、海ですかね」

「まぁ、キャンプとか、アウトレットモール行くの大体夏だから、それもある」

「アウトレットに関しては別に夏限定ってわけじゃないですけどね」


そんな会話をしてコンビニに着くと、店内に俺の知り合いがいた。


「やべっ、トウマ。別々な」

「はーい」


俺には彼女がいるのだが、やけに俺を浮気者の目で見てくる。

なので、トウマが家政婦として家に出入りしているなんて知ったらすぐに浮気者扱いされるだろう。

彼女にはただの家政婦だと言えば良いのだが、言っても関係ないとして怒ってきそうなので、知り合いには誰もトウマの事を教えていない、内緒だ。だからこうして二人で行動していて、偶然知り合いに遭遇した時は赤の他人を装う事としている。


コンビニの中に入ってからすぐに知り合いが俺に気付いて話しかけてきた。


「あれ?一久じゃん」

「お、おぉ…」

「珍しい、学校以外で会うとか」

「そだな」

「…何も買わねーの?」

「え?あぁ、買うけど…ほら、振り込みもしたいんだけど今誰か使ってるから」

「あーなるほどね、じゃあ俺は先に」

「おう、じゃな」

「じゃな~」


知り合いが清算しコンビニの外に出て見えなくなるまで、俺とトウマは緊張を解かなかった。


「行きましたね」

「あぁ、悪いね。面倒ごとに毎回毎回」

「別に。そんな事より甘いもの買ってください」

「はいはい」


トウマが選んだのは和菓子とアイスだった。しっかり二つ買わされたけど、色々話をしてくれたので別に文句はなかった。


「夜暑くあるのいつくらいだろ」

「夜暑いとテンション下がりますよねー」

「クーラー付けないと寝られないって、日本の夏凶器過ぎ」

「日本ていうか東京ですよ、避暑地はそうでもないんですから」

「キャンプ行きて~」


自転車を漕ぎながら願望を呟く、買った棒アイスを後ろの荷台で頬張るトウマを乗せて。


「皆さんがキャンプ行ってる間、私は休暇ですね」

「え、トウマも行くんじゃないの?」

「私は行かないでしょう。ただの家政婦ですし」

「来れば良いのに。で、俺のために肉焼いて」

「嫌ですよ、避暑地まで来て一久さんの世話とか」


トウマとの会話は、今までしたことのない会話ばかりだ。心地が良く、ほぼ延々と話し続けられるような、そんな気さえしてくる。


(なるほど、これが女友達か)


女友達、俺にずっとなかった存在。

基本女の子は愛でるもの、付き合うものだと思っていた。

しかしトウマはそうではない。傷付かない様に気を使った発言をしなくていい、俺の言葉なんて届いちゃいないんだから。

彼女じゃない、女の子。初めての女友達の存在に、少しむず痒い気持ちになる。


家に帰る頃には夕日は大分傾いて、涼しくなりつつある。家の前の街灯が点き始めた。


「トウマって、友達いる?特に男友達」

「そりゃ…………いますよ」

「嘘じゃん」

「嘘とかなんですか、何で分かるんですか?」

「間が全てを語ってた」

「良いんですよ、友達なんていなくても。お金は稼げるし、行きたいところは行けるし、買い物も行けるし、美味しいものも食べられます」

「まぁ、誰かと居て楽しいかどうかは人それぞれか」


家へと帰ると、トウマはリビングにて夕飯の支度、俺は自室で勉強を始めた。


しばらく勉強をしていると、部屋のドアをノックされた。

開けると小皿を持ったトウマが立っている。


「何?どした?」

「味見、辛くないか確かめてください」


小皿に乗っていたのは匂いからしてカレーだ。俺は辛いのが苦手なので、いつも辛くないカレーを頼んでいる。なのでカレーの時は味見を俺に任せてくれることが多い。

小皿に乗ってる少量のルーを飲むと、とても美味しかった。


「うん、うまい」

「そーですか。…勉強中ですか?」

「ん?まぁね」

「………………………」

「入る?」

「良いんですか?勉強」

「トウマは邪魔にならないからね」


トウマは俺の部屋が好きだ。もっと言えば俺の部屋から見える景色が好きなのだ。

俺の部屋から見える景色は、夕方は夕日が綺麗に見え、風通しの良い部屋なのでベランダに出れば心地よい風が吹く。


「ここは風が気持ち良いですよね」

「トウマ、普通にここにいるけど飯の番しなくていいの?」

「コンロに火はつけてないですし、後は炊飯器のご飯が炊けるのを待つだけです」

「あそ、なら良いや」


火事は絶対しないだろ、トウマなら尚更。


「大学、楽しいですか?」

「んー…まぁ、楽しいな」

「飲み会、何時ごろからでしたっけ?」

「あ!やべっ、完全に忘れてた!」

「あぁ、忘れてたんですね。まだ時間大丈夫なのかと思ってました」

「んなことねー」

「迎え、いりますか?」

「終電逃したら頼む」

「じゃあ絶対逃がさないでくださいね、めちゃくちゃ面倒くさいので」


すぐに外着に着替えて街へ出た。カレーは言っていた通り明日の昼ごはんにして食べよう。



「おせーよ」

「悪い悪い」

「一久~」

「あれ?何で久美くみもいんの?」

「来ちゃった」

「来たいって言うから」

「えぇ…」

「何で?嫌なの?」

「いや、嫌じゃないけどさ…お前らは良いの?」

「まぁ、別に」

「悪いな」


今日は男友達だけで飲むと思っていたし、友達もそう思っていたはずだが、彼女の久美も一緒に飲むことになって一応謝っておいた。

飲み会になると5割方終電を逃すことになり、トウマに何回か車で迎えに来てもらった事がある。因みに迎えに来た時のトウマはクレジットカードが挟めるんじゃないかって程眉間に皺を寄せ、舌打ち、家に着くまで無口、運転が荒くなる。


(こりゃ終電逃すかもな…)


彼女の久美は酔うと所かまわずベタベタしてくる。男友達の前では彼氏面をあまりしたくない俺としては、少し迷惑だし恥ずかしい。



飲み会が終わり、やっぱり終電を逃した。4人で飲んでいたが、俺だけ方角が違うので三人はタクシーで帰り、俺はもう一台拾って帰ると言ってその場を切り抜け、トウマに電話を掛ける。


『………………………』

「…トウマ、流石に出たら『もしもし』の一言くらい頂戴…」


トウマはこの時間に迎えに来させようとする俺にキレて、電話に出ても無口のままでいた。呼び出し音が鳴り終わっても反応がなかったので、携帯壊れたのかと思った。


『なんですか?』

「えっと…悪いんだけど迎えに来てほしいっていうか…助けて欲しいっていうか…」

『……それで?』

「今度の休日、服買うんで…お願いします」

『今いる場所の住所送ってください。『わざわざレンタカーを借りて』、そっちに迎えに行くので』

「すんません…」


通話を切るギリギリまで怒りの感情をぶつけられた。

現在夜中1時を回ったところ、普通の人間はこんな時間は寝ている。それを起こして迎えに来いって、死ぬほど失礼だなぁとトウマが迎えに来るまで反省して待つことにする。



しばらくすると4人乗りの軽自動車を借りたトウマがやってきて、外から見ても運転席に座る彼女はブチ切れていた。


「ほんと…すんません…」

「いいえ、一度二度の話じゃないので」

「ごめんなさい」

「早く乗ってくださいよ木偶の坊…あ、すみません間違えました道端の石ころ」

「木偶の坊兼道端の石ころ乗ります、失礼します」


帰りの車内はやはり快適とは程遠いものだった。飲酒した奴を乗せる運転じゃなかった。


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