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サキュバスは、性犯罪を許さない  作者: ウロノロムロ
サキュバスは、人間家庭の事情に首を突っ込む
33/58

夫婦喧嘩はサキュバスでも食えない

ことの次第はこういうことらしい。


数百人以上のサキュバス移民者は

日本全国に散っており、

人間達に迷惑を掛けないように

各々が生活している訳なのだが。


その晩ミルリンは溢れる正義感で

(実はお腹が空いていただけ)、

性犯罪をやらかしそうな男がいないか

蝙蝠の姿で夜空を飛び回っていた。


すると何やらヤバそうな匂いが

東南の方角からして来て、

ミルリンはその匂いの元へと急行する。


そこは住宅街にあるマンション五階の一室。


ミルリンはこっそりベランダに忍び込んで、

カーテンの隙間から部屋の中を覗き込む。


すると旦那だと思われる男が、

大声で怒鳴りながら、

妻だと思われる女を殴る瞬間が見えた。


「きゃぁっ」


思わず小さく声を上げてしまったミルリンだが、

部屋の中の人間達は修羅場で

それに気づくどころではなかったらしい。


女は泣きながら何かを訴えるが、

男はますます逆上し、エスカレートして

女に殴る蹴るの暴行を加える。


ミルリンはその光景を見て

いたたまれなくなり、なんとか女を

助けてあげられないものかと思い出す。

窓のドアに手をやると

偶然にも鍵は掛かっていない。


どうしようかと迷っていると、

室内の男が興奮し過ぎたのか、

今まで殴っていた女に

エロいことをしはじめようとする。


『今がチャンス!』


その状況で真剣にそう思ったミルリンは

それだけで相当残念な子であるのだが、

さらにDV男を止めるべく

ベランダの窓を開け部屋の中へと入って行く。


女に向けられた性欲を自分に向けさせ

その隙に女に逃げてもらおうと思ったミルリン、

サキュバスの魅了、誘惑を最大限に活かし

DV男をあっという間にメロメロにさせる。


その間に逃げてもらおうと

思っていたはずなのだが、

予想外なことに

ミルリンは女から罵声を浴びた。


「なんだいっ! この女はっ!? 」


ミルリンはその意外な行動にきょとんとする。


『えぇぇっ、 なんでかなぁぁっ?』


女はさらに罵声を浴びせる。


「このっ、泥棒猫めっ!」


泥棒猫についつい反応してしまう。


「えぇぇっ、

私、ケット・シー(猫)なんかじゃないよぉぉぉ?」


「猫じゃなくてぇ、

どちらかと言うと蝙蝠かなぁぁ」


そう言って蝙蝠の姿になってみせるミルリン。


ここでめでたく通報される。


-


「ここまででいくつ法に触れているでしょうか?」


慎さんがまるでクイズを出すかの口調で

愛倫(アイリン)に尋ねる。

愛倫(アイリン)は耳を塞いで

聴こえないフリをしている。


「男女感のいざこざは民事なのでともかく」


慎之介の言葉に息を呑む愛倫(アイリン)。


「そ、そ、そうなのかい?」


愛倫(アイリン)姐(ねえ)さん、

ミルリンの馬鹿さ加減に震える。


「覗きと不法侵入、この二つは間違いありませんね」


覗きと不法侵入、

それだけ聞くとただの変態のようだが、

あながち間違っていないのでしょうがない。


とりあえず今回は警察で事情聴取を受け、

移民局の慎之介が身元引受人となり、

その足でこの店に来たということだった。


-


「夫婦喧嘩は犬も食わないと、

昔から言うらしいですからね」


どんな世でも不可思議なのは男女の仲。

端からどんな風に思われようとも、

当人同士にしかわからないということはよくある。


そしてこのミルリンの事件、

あっという間に

他のサキュバス達にも広まり、

みんな面白がって

まるで笑い話や小話のように伝承するので、

移民サキュバスの間では

後世まで語り継がれていくことになる。


『夫婦喧嘩はサキュバスでも食えない』






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