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サキュバスは、性犯罪を許さない  作者: ウロノロムロ
サキュバスは、神の濡れ衣を晴らす
23/58

法で裁けぬ者

喫茶『カミスギ』に戻って来た

愛倫アイリンと慎之介。


愛倫アイリンはずっと

あのドス黒く腐った魂の欠片、

残留思念のことが気になっていた。


サキュバスの娘達が見たら

まぁまず十中八九は

美味しそうだと

言いはじめるであろうぐらいに

腐って熟成された魂。



「あの死神は捕まりますかね?」


慎之介は愛倫アイリンに尋ねる。


「いや、間違いなく無理だろうね、

あんな一瞬で消えるような相手

こちらの人間じゃあ

捕まえようもないだろうさ」


この流れで愛倫アイリンにも

疑問に思うことがある。


「もし仮に捕まえたとして、

その場合どうなるんだい?」


これには慎之介も

首を傾げながら答えるしかない。


「どうでしょうね、

なにせ相手は神様ですから


人間の法律を適用するという訳には

いかないでしょうし


人間が人間の法で

裁けるような相手はありませんから」


「法で裁けぬ者、

ということになりますかね」



 ――法で裁けぬ者


慎之介のその言葉と

ずっと気になっていた腐った魂が、

愛倫アイリンの中でつながる。


「そうか……

そういうことかい」


そう呟いた後、

愛倫アイリンは言う。


「慎さん、すまないんだけどね、

被害者のことを

もっと詳しく知りたいんだど、

何とかならないかね?


生前どんな人間だったとか

出来るだけ詳細に」


「分かりました、

警察に交渉してみます


しかし管轄が違いますので

こちらに何処まで

情報を回してもらえるかは分かりませんが」


「人間の組織ってのも随分面倒だね、

こういうのをあれだろ?

お役所仕事って言うんだろ?」


「いやぁ、面目ない」


頭を掻きながら苦笑する慎之介。



「そういうことであれば、

拙者にお任せでござる」


上の方から声がしたかと思うと、

天井がパカっと開いて

ニンジャマスターが降りて来た。


「あんた、勝手に

天井に出入り口つくるの

やめてもらえるかい?」


「大丈夫でござるよ、

店主殿にも了解を得ているでござる」


今迄何処に居たのか

全くその気配すら感じさせなかった

店長マスターがカウンターの奥で

親指を立ててサムズアップしてみせている。


これだけ気配を消せるのであれば、

店長マスターも忍者ということで

いいんじゃないかとも思うが、

こちらはただ老いて死に掛けで

生気がないだけだった。


「いや、まぁ、そいつは助かるよ、

ニンジャマスター」


そもそもこの話が

慎之介によって持ち込まれた時から、

ニンジャマスターには先行して

事件のことを調べてもらっていた。


「ニンジャ仲間を動員して

至急調べて来るでござるよ」


ニンジャマスターは

そう言うのとほぼ同時に、

忽然と二人の前から姿を消した。


-


数日後、再び喫茶『カミスギ』に集まる

愛倫アイリン、慎之介、

そしてニンジャマスター。


「これは……

さすがに酷いですね……」


ニンジャマスターの報告と

自分が入手した被害者の資料を見て

愕然とする慎之介。


この世界の警察による捜査では

決して知り得ないことが、

ニンジャマスターの報告にはあった。


催眠やら記憶読み取りやら

異世界人ならではの手法で

集めた情報が多く、

その辺はニンジャマスターも

慎之介には内緒にしておくしかない。


「やはり、愛倫アイリン殿の

読み通りでござったな」


「まぁ、

あれだけ魂が腐ってるんだから、

それなりにやらかしているとは

思っていたんだけどね」



一人目の被害者は、

有力政治家の息子。

悪い仲間に女を拉致させて来ては

別荘に監禁、奴隷として弄び、

挙句の果てには勢い余って殺してしまう、

その被害にあった女性が何人もいる。

しかし闇世界とも繋がりが深い父親が

息子の不始末を闇から闇へと葬り去る為、

決して表沙汰になることはなく、

法的に裁かれることもない。


二人目の被害者は

十数人の死亡者を出した

連続放火事件の容疑者であるが、

現在は証拠不十分として

不起訴になっている。


三人目は

現在警察が捜査中の

連続強盗殺人事件の真犯人。

こちらも捜査が難航しており、

警察が犯人に辿り着くことは

永遠にないかもしれない。


四人目と五人目は

人身売買シンジゲートのブローカーで、

世界各国を飛び回り

幼女や成人女性を攫っては

闇のルートに売り捌いてる。

こちらも決して

表沙汰になることはないので、

警察はまだこの事実すら知らない。


六人目も

まだ捕まっていなかった連続殺人の犯人、

彼等はみな、

今回の事件の被害者であったが、

別の事件の加害者でもあった。


そしていずれも

死神とは違った意味で

『法で裁けぬ者』達ばかり。



「まぁ、確かに、

全員殺してやりたくなる気持ちも

分からなくはないんだけどね」


今回の連続突然死事件

改め魂強奪事件、

その真犯人の動機に

確信を持つ愛倫アイリン


確かに数百年前、異世界でも

似たようなことがあった。


根本的には力が支配する世界であり、

人間の法による影響力など

たかがしれていた世界だが、

それでも『法で裁けぬ者』達を

力で裁いて、その時は人間達から感謝され

まるでヒーローのように扱われていた、

その者達の仕業に違いない。


「まぁ、こっちの世界の判断基準で言えば、

『行き過ぎた正義』

私刑ってことになるのかね」




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