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サキュバスは、性犯罪を許さない  作者: ウロノロムロ
サキュバスは、ソードマスターと真剣勝負する
18/58

肉を切らせて魂を断つ

「そろそろ、決着を

つけようじゃあないか」


ライダーススーツは

すでに何箇所も斬られ

そこから愛倫アイリン

白い肌が露出している。


ソードマスターも

外見は無傷に見えるが

魂にいくつかの切り傷を

負っている筈だった。



両手の剣を

体の前で交錯させて

左右をその刃で守り、

ソードマスターへと突進する愛倫アイリン


  ――捨て身の策か?


ソードマスターは刹那の間に

敵の行動を予測する。


  横からの太刀筋、袈裟切りは

  おそらく左右の剣で防がれる


  残された太刀筋としては

  正面を上から下へ

  切り捨てる軌道のみだが、

  それもまた敵の誘いであろう、

  おそらくそこに太刀を出した瞬間に

  一方の剣で防がれ

  もう一方の刃で貫かれる


  とは言えこのままでは、

  防御の構えから

  懐に飛び込んだ瞬間

  一転して攻撃に転じて来る


  残された道は

  敵が攻撃に転じた刹那、

  相手より早くその身を切り裂く


  ――我が『神速の剣』であれば



愛倫アイリンの左手の剣が

振り被った刹那、

ソードマスターは

その空いた脇腹から真横に

愛倫アイリンの身体を切り裂いた。


その筈であった。


しかし、

愛倫アイリンの体に刺さった剣は

そこから微動だに動こうとしない。


ソードマスターが

負わせた筈の傷は

太刀が刺さったその瞬間に

すでに塞がれており、

そればかりではなく

体に刺さっている箇所は

愛倫アイリンの身体と

同化を果たしていた。


  ――しまった! 

  ――剣を封じるのが目的であったかっ


愛倫アイリン

振り下ろした一刀目もまた

敵を誘い込むためのもの。


ソードマスターが

気づいた時には時既に遅く、

愛倫アイリンの突き出したニの太刀に

その体は貫かれていた。


いや身体には全く傷はないので

肉体を貫かれている訳ではない、

その魂を貫かれたのだ。


「うう」と呻き声を上げ、

その場に崩れ落ちるソードマスター。


『肉を切らせて骨を断つ』ならぬ

『肉を切らせて魂を断つ』と言ったところか。


技量はほぼ互角か、

愛倫アイリンが少し劣っていたが、

相打ちも辞さない

愛倫アイリン捨て身の一撃、

その覚悟が勝敗を分けたのだ。



戦いの終わりを確信する愛倫アイリン

その息は少し乱れている。


「だから言ったじゃあないか、

体の傷はすぐに治るって」


愛倫アイリンは同化を解除し

体に刺さった剣を引き抜く。


「まぁ、最後のはちょっと、

卑怯だって気がしなくもないけどね」


-


「ニンジャマスター、いるんだろ?

出て来なよっ」


日本庭園で闇と同化していた

ニンジャマスターが

影の中から姿を現す。


ソードマスターのことを心配する余り、

夜陰に乗じて敷地内から

ことの一部始終を見守っていたのだった。


「ソードマスターは

あんたに任せたよ


このまま連れて帰っておくれよ」


倒れている同胞に

駆け寄るニンジャマスター。


「数日は起きないかもしれないけれど、

一番治りが早い

『突き』で仕留めたからね、

すぐに魂の穴も塞がって

目を醒ますだろうよ」


ソードマスタ-を軽々と抱え上げ

左の肩に担ぐと

ニンジャマスターは頷いた。



「あたしはあの達を

なんとかしなくちゃ、いけないからね」


すっかり屋敷も静まり返っており、

先刻のようなどんちゃん騒ぎの音は

聞こえて来ないが、

それはそれでまた別の心配が生じる。


『まさか、殺しちゃいないだろうね』


これ以上マフィアと関わりたくない

愛倫アイリンとしては

出来るだけ速やかに、

即刻帰りたいところ。



愛倫アイリン殿、

かたじけないでござる


この恩は生涯忘れませぬ」


ニンジャマスターは

深々と頭を下げた。


「まぁ、いいってことさ


あたし達もいつ

あんたに助けてもらうことになるか

分かったもんじゃあないからね」


それに……」


「魂は斬られたけど、

あんたとのえにし

切られなかったってことさね」


微笑を浮かべそう言うと

愛倫アイリンは屋敷に向かって歩き出す。


ソードマスターを担いで

再び闇と同化し消えて行く

ニンジャマスター。



この件に恩義を感じたニンジャマスターは

これから先、愛倫アイリンが事件に直面した際には

情報屋として、また時には

自ら諜報役や密偵を買って出て、

協力してくれるようになるのだった。






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