爆破と爆破
警察は証拠を押さえようと数十人の警官達が一斉にマンション内部に突入する。
動かないエレベーターの扉を抉じ開け、地下へとロープを装備した特殊部隊が下降を始める。
警察からすれば、大規模な作戦であり、失敗は赦されない。世間に対する警察の不信感を一掃し、プライドとメンツを守る為の言わば、パフォーマンスと言えただろう。
しかし、沖野(黒目) 恵と斉藤だけならば、この作戦は有効であっただろう……警察が予想していなかった事実、それは、沖野(黒目) 恵が単独犯でない事にあった。
誰もが、推測出来た事に変わりはないが、警察は沖野(黒目)が捜査線上に浮かんだ際に、過去の経歴から、性格、生立ち、家族構成に至るまで、全てを調べあげていたのだ。
調べるに当たり、性格は大人しく、話を聞くことを大切にする孤独な性格であり、交友関係、信頼関係を気づけない性格であると、言う結果が出たのだ。
更に沖野の行動パターンは、斉藤と共にする事が多く、それ意外に浸しい友人や連絡を頻繁にしている人物を特定出来なかった、その為、警察は沖野(黒目) 恵は、単独犯であると仮定し、その考えを変えること無く、数による力で全てを解決しようと考えたのであった。
そんな、マンション、エレベーターの滑車と、落下防止のローラー部分が赤い点滅を開始する。
それを合図に無音のまま、マンションの全ての柱が裏側で点滅を開始していた。
その事実に気づかない警察官達、更に非常階段を進んでいた警察官達が九階部分を通り過ぎた際、一斉に全ての防火扉が閉まり、非常階段の出入り口を塞いだ。
「な、あっ!」
「扉が、くそっ、開けてくれ」
各階を調べる為に突入していた警察官達が事態に気づき、慌てて、扉を引っ張っていく。
しかし、重く強固な防火扉が簡単に開く訳もなく、各階に数人ずつ、警察官が閉じ込められる形となる。
そして……刹那の時が刻まれる。
内側に対して、無数の柱が吹き飛び、まるで折り畳まれるようにマンションが崩れていく。
警官達の叫び声が響く間も無く、全てが粉塵と共に地上へと吸い込まれていく。
辺り一面が土煙に包まれ、マンションの周囲に凄まじい爆風が襲い掛かる。
突入チームの異変は直ぐに本部である警視庁に知らされる。
同時に爆発に関する通報が鳴り響く。
消防と自衛隊が警視庁と同時に動き、現場に辿り着いて各組織は、その光景に絶望した。
巨大なマンションであったそれは、無惨な残害となり、瓦礫の山の内部には数十人の警察官が閉じ込められている事実をその場にいた全ての関係者が理解していたからだ。
速報がテレビとラジオに流れ、テロを思わせる交通規制が瞬時にしかれた。
その頃には、斉藤を乗せた車は、指定された病院へと辿り着いていた。
そして、マンションの爆破を実行した二人の女性も車を乗り換え、近隣から姿を消していた。
警視庁は世間に対する説明を求められる事になる。
マンションの瓦礫を目にした専門家から、語られた事実は、テロによる爆破ではなく、解体を目的とした爆破であった事実が世間に明らかにされた。