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被害者候補

 斎藤の部屋で目覚める沖野 恵、身なりを整えると「先生……今から私は仕事に向かいますので、まだ休んでてください……カードキーを御借りしますね」と言うと一人、部屋を後にする。 


 被害者、【大野 健】発見から1日。


 警視庁内部では、被害者である大野 健の存在を明るみに出すかを話し合うもの達がいた。


 犯人の情報が集まらない状態で身内から被害者がでた事実を世間に知られたくないと上層部は考えたのだ。


 しかし、それに対し、被害者がいる事実がある以上、隠しきれないと言う意見も上層部では出ていた。


 警視庁のプライドが世間の目を恐れている事実が其処に存在していた。


 志乃 彩音率いる、警視庁死体調査室に上層部から通知が届く。


 デスクに座り、苛立ちを隠せない志乃の姿がある。


 “被害者である、大野 健の存在を口外しない事とする”と言う一説が組み込まれた命令書に志乃は頭を抱えた。


 司法解剖が終わり、家族に死亡した事実が伝えられているだろうと考えていた矢先の出来事であった。


「何を考えているのよ、目先のプライドが邪魔して、事実の公開を先伸ばしにするなんて……」


 デスクのある部屋の扉が“トン、トン”と軽くノックされる。


「開いてるわよ」


「すみません、失礼致します」


 扉が開かれると其処には志乃の知らない女性が立っていた。


「えっと、貴女は?」


「はじめまして、志乃 彩音先生……私は今回の事件による、皆様のストレスと精神状態を把握する為に呼ばれた心理カウンセラーで、沖野 恵と申します。よろしくお願いいたします」


 志乃の前に笑みを浮かべ姿を現した沖野 恵。


「あの失礼ですが、私にはカウンセリングは必要ありませんので、お引き取りをお願いします」


「わかりました。本日は他の方から開始します。ですが、全員のカウンセリングをするようにと言われていますので、形だけでも、後日でいいのでよろしくお願いしますね、志乃先生」


 軽く頭を下げると沖野 恵は志乃の元から姿を消す。


 夕方になり、喫煙所で煙草を吸う志乃。


──あの人、なんか……不気味な雰囲気を出していたわね。


 考え事をしながら灰皿に吸殻を沈める。


「志乃先生、考え事か?」


 喫煙所の扉が開かれ、志乃に声を掛ける浅野刑事。


「浅野刑事、忙しいんじゃないの?」


「一服くらいさせてくれ、大野の件は聞いてる……力になれず済まなかった」


 溜め息と同時に吐き出される煙。


「大野君は拐われて、直ぐに心配停止に追いやられていたみたい……浅野刑事のせいじゃないわ……犯人を捕まえて……お願いだから」


「嗚呼、絶対に捕まえてみせるからな、志乃さん」


 夕日が沈み始める、喫煙所を後にする浅野刑事。


 志乃はその日、勤務を直ぐに終えると自宅に向かって車を走らせる。


 自宅に到着するとポストの中身を確める志乃。


 ポストに入れられたチラシ、しかしその中に【大野 健】と書かれたIDカードが入っている事実に身を震わせる事となったのだ。


「なんで、大野君のIDカードが……まだ、発見されてない筈の遺留品が此処に……!」


 周囲を見渡すと、直ぐに車に戻り、エンジンを掛ける。


 車を走らせ、数分にあるファミレスの駐車場に入るとスマホを取り出し、浅野刑事に電話を掛ける志乃。


「早くでてよ、浅野刑事」


『はい、浅野です』

『浅野刑事、私、志乃です。今から私の家の指紋を取りたいの、付き合って!』


『どういう事ですか? いきなり、言われても、内容がわからないんたが?』


『今から警視庁にキットを取りに向かうから、その際に詳しく話すわ』


『嗚呼、わかった。取り敢えず直ぐに出れるようにしとく』


 犯人に繋がる手がかりが志乃の元に届けられた。しかし、このIDカードが志乃の家のポストで見つかった事により、志乃 彩音は一時的に事件と関わる事を禁止され、容疑者 権 被害者候補とされる事となったのだ。

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