表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/51

はじまり……0日

 沸騰したヤカンから笛の音が鳴り響く室内、椅子に手足を固定された状態で目隠しをされた女性が一人。その様子を静かに眺める男性。


 男性は、気を失っていた女性が意識を取り戻し手足を必死にバタつかせる様子を数枚の写真に収めると、ゆっくりと立ち上がった。女性の横を通り、ヤカンの火を消しに行く。


 微かな足音は女性の耳に恐怖を刻むと共に、暗闇に覆われた視界は最悪の事態を脳裏に焼き付けていく。


 女性はそれから三日間を恐怖と屈辱のもとに過ごすことになった。


 排泄はその場で行い、後始末を行うビニール袋の音が無情に女性の耳に響いていく。


 視界を失い、室内に微かな人の気配を感じる異常な現実……外の音が入ってこない室内は、女性の神経を確実に削り取っていく。


 女性の腕に走る小さな痛み。血管に流れ込む血液以外の異物に慌てて暴れるも、その意識は次第に薄れていった。


 食事が抜かれ、排泄物すら腸から抜けた状態の女性は三日後の早朝であった。

 人気のない草臥れた住宅街の路地裏で、衣服を確りと纏った状態で発見される事となる。


 世間を賑わせたのは、被害者の女性は皆、健康状態に異常は無く。脱水状態といった身体的なモノも、性的な暴行の痕跡すら見受けられなかった事にあった。拐われた女性が犯人に関する一切の情報を持っていないと言う事実もあり、犯人の目的すらわからぬ難事件となったのである。


 警察は、拐われたであろう東京都内の繁華街から、犯人の足取りを捜査し始めた。


 誘拐事件でありながら、拐われた女性の親族に脅迫や身代金の請求もなかった事実を踏まえた決死の捜査、しかし、直ぐに警察は壁にぶち当たる事になる。


 捜査を開始して直ぐに情報提供が土砂降りの雨のように警察署に集まりだし、電話の音が絶え間無く署内に響き渡っていく。


 そんな最中……女性の失踪届けが数枚。


 最初の被害者女性をAとする場合。



 B、家出の少女。

 C、家庭内のトラブルで飛び出した人妻。

 D、家賃滞納で蒸発したキャバ嬢。

 E、家の金を持ち逃げした義理の妹。


 普段なら、警察が動く事はない。四件の失踪届け、しかし、一人の刑事は失踪したであろう日付けに注目する。


 Bの少女の場合、被害者発見から二日後に目撃情報が確認されている。


 家出少女の行動にはパターンに似たモノがあり、度々、家出と補導を繰り返している常連である事実もあり、リストから除外される。


 その後も失踪届けが次々に更新されていく中、警察は世間からバッシングをうける事となる事実が、メディアにより世間に報じられる。


 そう……警察が無関係とした失踪者リストから被害者となる女性が出たのだ。


 瞬く間に拡散された情報は本質となる捜査情報を塗り潰すように警察署に鳴り響き、苦情、中傷と失踪者の情報を取り分ける事すら困難になっていた。


 そんな世間の注目は、若い男性の惨殺死体が飲み屋街のゴミ捨て場から見つかると言う事件により、一瞬で世間から忘れ去られていく。


 警察はどちらの事件にも翻弄される形となり、双方の事件は二件目の被害者を同時に世間の目に触れさせる。


 誘拐事件の被害者の女性は無事に保護されたが、結局、目的は不明……誘拐されたとされる女性は【失踪リストC】とわかり、何らかの形で女性と犯人が接点を持っている可能性が浮上する。

 最初の被害者と違っていた点は、結婚指輪だけが無惨にネジ切られ、被害者の側に置かれた状態で発見された事であった。


 そして、最初の被害者は未婚者であり、二人目が既婚者である事から無差別に被害者を選んでいる可能性があげられていた。


 それと同時に、古いトンネルの入り口付近で段ボールに無造作に入れられた男性の惨殺死体(バラバラ死体)が、下校途中の高校生達により発見される。


 全国の警察が管轄(かんかつ)に関係なく誘拐事件、惨殺事件の犯人を捕まえる事が記者会見で発表され、クレームなどの電話に対して異例の公務執行妨害を適応する事もつげられたのだ。


 この事件は後に、平成最後のサイコパスと神隠し事件と呼ばれる事になる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ