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第99話『実験と狂科学者』


 健司達がヴァサゴのもとへと向かい、ビリー達は何十体といるアンデッドやクリーチャーを倒し続けていた。

 

 「おやおや、これはなかなかに良い実験材料が集まったみたいですねぇ」

 

 アンデッドとクリーチャーの群集の中から一人の痩せこけた白衣の男が歩いてきた。男はクリーチャーやアンデッドに動きを止めるよう指示を出す。

 気味の悪いくらい全てのアンデッドとクリーチャーが動きを完全に止めた。

 

 「初めまして、グロウスと申します」

 

 グロウスは下げた頭をあげると白衣の中から注射器を取りだしそばにいた二体のアンデッドに中の薬液を投与した。

 

 「まずは薬の効果を試すとしましょうか」

 

 投与されたアンデッドは体が不自然に膨らみ爆発する。爆発と同時に体は無数の触手に変わり爆発の勢いで周囲のアンデッドやクリーチャーに突き刺さる。

 突き刺さったアンデッドやクリーチャーは体が崩れ肉塊に変わり触手がそれをかき集めるように体を形成していく。糸で縫い合わせるように組み合わせていく。

 全ての肉塊を集め終え無数の触手の生えた巨大な赤黒い肉塊となり、人間の目玉が無数に集まって出

 来た巨大化目玉を開いた。

 

 「キモ……」

 

 ノエルが呟いたが他は声すら出なかった。

 規格外すぎる巨大な体。圭斗が一発だけ試しに撃ってみたが弾丸は音もなく体内へと入っていくだけだった。

 

 「銃弾は有効打にならへんな」

 

 化け物は巨体から生える触手を振り下ろす。それを千寿がアクイラを使い切断すると切断された触手の切れ端は灰となり、切り口からまた触手が生えてきて元通りになった。

 

 「切ってもダメかも……」

 「銃よりは効果はありそうだけどねぇ〜」

 

 ノエルはそう言ってタブレット端末を操作する。すると武器庫の方からいくつものコンテナがジェットによって運ばれて来た。

 コンテナが開くと中には無数の武器が用意されていた。ロケットランチャーやミサイルランチャー、ミニガンや火炎放射器、剣や斧などの近接武器も多数あった。

 

 「どうやって倒すか分からないからさぁ〜、倒し方がわかるかぁ、相手が死ぬまで攻撃すればいいでしょ?」

 

 ノエルはコンテナから四連ミサイルランチャーを取りだし全て化け物に向け撃ち込む。

 体内に取り込まれ内部で爆発し肉片を辺りに巻き散らかした。飛び散った肉片は灰に変わり、傷は一瞬でふさがった。

 化け物は咆哮を上げながら無数の触手を振り回す。それを避けながらコンテナから武器をとった。

 

 「この武器を前のカブトムシの時に持ってきて欲しかったな」

 「そう言わないでよ〜。あの時は相手の動きも早くてタブレットを操作する暇がなかったんだよ〜」

 

 琴音はボヤきながらロケットランチャーを担ぐ、コンテナ自体は常に浮遊しており敵の攻撃は避けるようにプログラムされてはいるがそれも完璧では無いため守りながら戦う必要があった。

 

 「色々と作業の多い戦いになりそうだ」

 

 ミンディはジャックに貰ったハンドガンを構える。

 

 「私の相手もしてくれますかね?」

 

 無数の振るわれる触手の間からグロウスが近づく。手には巨大なメスが握られている。触手を避けた直後の接近、避けるにはあまりにも厳しいタイミングだった。

 

 「だったら俺が相手してやろう」

 

 ビリーが割り込みグロウスの巨大なメスを受け止める。

 

 「おお、これはこれは……あの時は色々とお世話になってしまって」

 「あの時だと?」

 

 グロウスは口が裂けそうな程に口角を上げ、気味悪く歯をむき出しにする。

 

 「あなたの部下はとてもいい実験材料になりましたよ? それはもうとても」

 「……!」

 

 グロウスの言葉の意味を理解するのに時間はかからなかった。目の前にいる男が自分の部下を皆殺しにした張本人なのだから。

 

 「貴様ァ!」

 

 ビリーは考えるより先に動いていた。血を吸って赤黒く染った捕食者(プレデター)を巻いた剣を振るう。ただ力任せに振り回す。

 

 「殺す! 貴様は俺が絶対に殺す!」

 

 それを受け止めるだけのグロウス。防戦一方にも見える状態だったがビリーがメスごと叩き切ろうと振り上げるとグロウスが笑った。

 

 「落ち着け! このバカが!」

 

 ミンディがビリーを蹴り飛ばしグロウスが左手に隠し持っていた注射器を禍々しく変化した左手で受け止める。注射器はミンディに刺さることはなく針が折れ、そのままグロウスを左手で吹き飛ばす。

 禍々しく変化した腕はすぐに元の不気味な模様の浮かび上がった腕に戻った。

 

 「すまない……俺としたことが……それよりもその腕は大丈夫なのか?」

 「一応ね、ジャックのくれたこれのおかげでクリーチャー化せずに力を使えるようになったから、とは言っても合計で三分ほどが限界だけどな」

 

 ミンディの攻撃をメスで防いだグロウスは少し離れたところでビリーとミンディを興味深そうに見ていた。

 

 「魔法器の性能をフルで使える人間にクリーチャーの力を人間のまま使う人間……素晴らしい個体じゃないか!」

 

 グロウスは舌なめずりをする。

 

 「死体でも構いません。私は君たちの体を調べ尽くし、実験がしたい」

 

 注射器を取り出し自分に刺し中の薬液を自分に投与した。見た目に変化は一切ない。しかし、ビリーとミンディとの距離を詰める速度が格段に上がり振り下ろされるメスの力はビリーが押し負けるほどだった。

 メスを受け止めたビリーの背後からアサルトライフルを撃ち、全弾グロウスの腹部に当てる。撃たれ怯んだところを蹴り飛ばすとグロウスは呆気なく倒れた。

 

 「まさか終わりか?」

 

 警戒しながら倒れたグロウスを見ているとゆるりと不気味に立ち上がる。腹部にはほんの少し血が滲み白衣には穴が空いている。

 

 「うぇ……」

 

 グロウスは口から何十発もの弾丸を吐き出した。ギョッとしたビリーとミンディだったがさらに驚くことにグロウスは手に乗せた大量の弾丸を投げつけた。

 

 「嘘だろ!?」

 

 ビリーは剣に巻いた捕食者(プレデター)を解き壁のように変え投げつけられた弾丸を防いだ。

 捕食者(プレデター)を再び剣に巻いた時にはグロウスは既に目の前まで接近してきた。ミンディが再び腕を禍々しく変化させメスを防ぐが刃が皮膚を切り裂く。

 

 「──っ!」

 

 脚も変化させ蹴りあげるがそれはギリギリで回避される。斬られた箇所は硬質な鱗のような皮膚で止血するが止血しきれず滲み出る。

 

 「大丈夫か?」

 「まさか斬れるとは思わなかったけどある程度止血はできたし問題ない」

 「そうか、だったらいつでもその銃を撃てるように準備しておいてくれ」

 

 ジャックに貰ったハンドガンなら全エネルギーを使えば確実に殺せるだろう。ミンディは腕を元に戻す。

 グロウスはもう一本注射器を体に打ち込み二人との距離を一気に詰める。

 ビリーがミンディの前に立ち盾の代わりになりビリーの背後からミンディが攻撃を加えていく。

 隙なんてほとんどない完璧とも言えるコンビネーションを見える二人だったがこれでようやく互角に戦える状態になった。

 

 そこでグロウスはさらにもう一本薬を自分に投与する。三本目の投与によりスピードが爆発的に上がる。

 手に握られるのは注射器。

 

 「死体は綺麗な状態で保たせていただきます」

 

 ビリーの腕に注射器が刺さり中の薬液がビリーの体内に入る。その瞬間、ミンディはビリーの肩に銃口を当て引き金を引く。

 発砲された弾丸はビリーの腕を貫きグロウスに当たる。しかし、ギリギリで避けられビリーとグロウスの腕が宙に舞う。

 

 「残念でしたね。失敗ですよ」

 「いや、大成功だ」

 

 ビリーの腕の切断箇所に巻き付く捕食者(プレデター)は大量に血を吸い込み真っ赤に染っている。

 そして形成される化け物じみた牙が無数に生えた口が作られグロウスの首から下を食いちぎった。

 地面を転がるグロウスの首。

 体は捕食者(プレデター)に服すら残らず吸収され完全に消滅した。

 

 「ああ、まだやっていない実験が……研究が……まだ……まだ……」

 

 グロウスの首はゆっくり目を閉じた。

 ビリーはその場に座り込み捕食者(プレデター)を使い止血をする。

 

 「あたしのあの判断は正解?」

 「ああ、満点だ」

 

 ビリーはフラフラと立ち上がり少し離れたところで戦っている化け物の方へ行こうとする。

 

 「ちょっと! そんな状態で言ったところで何ができるの? フラフラだって言うのに!」

 「戦わないなんて選択肢は選べない」

 

 フラフラのまま歩くビリーを止め、ミンディは笑う。

 

 「あいつらはあんな化け物に負けるほどヤワじゃないさ。信じてやろうよ」

 

 飛び散る肉塊は次々に灰へと変わり化け物の動きも徐々に弱まってきていた。

 化け物は苦しそうに触手を振るうが危険な攻撃は全て飛び回る千寿によって防がれ化け物はほとんど一方的にやられていた。

 肉塊はほとんど削がれ残るは核となる触手のみとなりそれめがけ全員がいっせいに攻撃を仕掛ける。爆煙が風に流され晴れるがそこには木っ端微塵になった触手の姿はない。

 ほぼ無傷であった。そこから更に何十発も撃ち続けるが大した効果は見られない。むしろ広がっていた触手が一箇所に集まり人型を形成していく。

 

 針金を束ねたような醜く歪な人間を型どった化け物がが完成する。

 束ねられた二本の腕を化け物は振るう。狙ったのはノエルと圭斗、さっきまでとは段違いのスピードで振るわれる。

 

 「アクイラ!」

 

 千寿の指示に従いギリギリのところでアクイラが盾型のガジェットで触手を防ぐ。しかし、ガジェットごと吹き飛ばされ弘と琴音にぶつけられ一瞬で気絶。ガジェットは半壊した。

 

 「アレはまずい!」

 

 ビリーの応急処置をしていたミンディは手足を変化させ走り出し気絶した二人のもとへ行きビリーのところまで運び、千寿は残りの二人をアクイラに乗せて運ぶ。

 ガジェットは火花を散らしながら千寿の元へと戻る。千寿はその半壊したガジェットを心配そうに眺める。

 

 「アクイラ、大丈夫?」

 『No problem(問題ありません)

 

 アクイラはガジェットをすぐに修復し

 

 「そっか、じゃあ行こっか」

 「ま、待て!」

 

 グロウスとの戦いの中で微量に残ったエネルギーすら、さっきの救出で使い切り立ち上がるのすらやっとの状態のミンディが止める。

 

 「ここで戦えるの千寿だけだから」

 「でも……」

 

 まだまだ小さな子供に命をかける戦いなんて、そんなふうにもたついているなか、骨がないためかぐにゃぐにゃとした動きで化け物は再び触手を振るおうとする。

 

 「けんにぃとはるにぃは絶対にみんなのために戦うから」

 「でも、あの二人は!」

 

 振るわれる触手。

 それを受け止めるのではなくガジェットを使い軌道を逸らし背中の羽の刃で切り裂く。

 

 「千寿は強いから!」

 

 笑顔を見せた千寿はミンディの手を振り払い、魔法陣をアクイラがガジェット使い足元に魔法陣を描いた。

 

 「あとは千寿に任せてよ」

 「ダメ!」

 

 アクイラの魔力吸収を応用した魔術のコピーを使い転送魔法陣を作り出しこの場から脱出させた。

 

 「これで全力でも巻き込まないし大丈夫だね」

 『Yes.My master』

第99話『実験と狂科学者』を読んでいただきありがとうございます。

第100話は7月25日に投稿予定なのでよろしくお願いいたします。

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