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第98話『救出』


 気味が悪いほどの静けさが辺りを包み込む。

 

 「嫌に静かだな……」

 

 ミンディ呟く。

 

 「転送魔術だ! みんな来るよ!」

 

 ヒツギの声と同時に大量の巨大な魔法陣によって周囲の地面が埋め尽くされた。

 そしてその魔法陣からは無数のアンデッドとクリーチャーが出現する。

 

 「ここは任せて健司達は先に遥の事を頼む」

 

 ビリーの言葉に健司、紫菀、ヒツギ、マシロ、薫那、シルヴィアは強く頷きアンデッドとクリーチャーの避けながら先へと進んだ。

 

 「アクイラ!」

 『YES、Are you ready?』

 「セットアップ!」

 

 千寿の言葉に反応して千寿の服が黒いプロテクトウェアになり腰には羽のようなガジェットがつき、アクイラが背中に装着される。

 

 「さぁ、雑魚の掃除を開始するぞ」

 

 ビリーの合図で全員がクリーチャーとアンデッドに向かって走り出す。

 

 マシロは武器に姿を変え、シルヴィアは小さな狼に姿を変え健司の頭にしがみつき市民街の地下にある魔宝石の場所へと向かう。

 市民街の中心に空いた大きな穴。

 その中へと入る。中は広く、静かで魔宝石の光でかなり明るかった。

 穴を降りてすぐ奥に魔導書が並べられた機械があり、その前に遥が立っていた。

 

 「わざわざ魔導書を持ってきてくれたのか? それとも殺される覚悟ができたのか?」

 「魔導書を渡したら遥を返してくれるか?」

 

 健司の質問にヴァサゴはニヤリと笑う。

 

 「別に構わんがその時点ではお前たちに勝ち目はなくなるがそれでもいいのか?」

 「だったらお前を殺して遥を助ける!」

 

 健司はヴァサゴとの距離を一瞬で埋め、修羅刀を振るう。ヴァサゴはそれを地面に突き刺していた歪な剣で受け止める。

 

 「ほほう、最後の最後まで俺を楽しませてくれるつもりなんだな?」

 「いつまでも勝てるつもりでいるなよ!」

 

 紫菀が健司の背後から現れ滅龍大剣(ダインスレイブ)でヴァサゴの首を狙うが砲撃槍(ゲイ・ボルグ)滅龍大剣(ダインスレイブ)を弾かれ軌道がギリギリの所でそらされた。

 火焔(カグツチ)を使い爆風で健司を吹き飛ばし空中で姿勢を崩した紫菀の腹に蹴りを入れ健司に向けて飛ばす。

 健司は飛んできた紫菀を受け止める。

 

 紫菀を蹴り飛ばした直後ヴァサゴの周囲に黄色い魔法陣が出現する。

 ヒツギとシルヴィアが魔術を使い、薫那がゴエティアを使い演算のサポートし、かなり早く魔術を発動できていた。

 

 「「《雷豪呀(ニョルニル)》」」

 

 雷撃がヴァサゴを包むがそれも全ては当たらず避けられた。

 

 「どうした? もっと来いよ」

 

 挑発するヴァサゴ。

 そこから攻防は続く。一見互角にも見える戦いだったがヴァサゴの攻撃回数は少なく健司や紫菀は攻撃回数が多いにもかかわらずほとんど当たっていな無い。

 

 「この時点で動きを少しでも止めれたら楽だったんだろうがやっぱり無理だな。おい、シルヴィア! いくぞ!」

 「はい!」

 

 シルヴィアは小さな狼の姿へと変わり健司に近ずき、飛びつくと同時に光の粒子のようになり健司を包み込む。

 光が無くなると健司の髪は紫がかった灰色へと変わり左目はシルヴィアと同じ金色へと変わっていた。

 

 「ユニゾン……成功」

 「これがユニゾン……」

 

 健司の姿に紫菀は驚きが隠せない。健司はユニゾンが成功したことに一安心と言った表情をうかべる。

 

 「マシロ、俺達もいくぞ!」

 『う、うん!』

 

 滅龍断糸(スニークテール)のようなワイヤーが現れ、それは尻尾のようになり先端には刃が付いている。

 

 「それ、ユニゾンか?」

 「あー……似たようなもんだ」

 

 少し話していると健司と紫菀の手の甲に魔法陣のような模様が浮かび上がった。

 

 「二人の魔力サポートはボクと薫那がするから。少なくとも三十分以上は今の状態を持続できるよ」

 

 不安定で暴走気味だった健司と紫菀の魔力が安定する。紫菀と健司は一度顔を見合せ軽く頷き合い、同時にヴァサゴとの距離を詰める。

 鳴り響く轟音と凄まじい速さで鳴り響く金属音。飛び交う閃光と炎。薫那とヒツギは目ではほとんど追えていなかった。

 しかし、ここまで来ればヴァサゴも本気になる。ユニゾンした健司に力を解放した紫菀が相手になりようやく互角と言ったような状態だ。

 

 「いいぞ! 最高だ!」

 

 ヴァサゴの蹴りが紫菀を吹き飛ばす。何とか防ぎ大きなダメージにはならなかったが健司とヴァサゴが一対一になる状況ができてしまった。

 

 「さすがに一人じゃ厳しいか?!」

 「うるせぇ!」

 

 一対一になった途端に防御するので精一杯になる。

 

 「鬼神解放! 修羅刀(しゅらとう)·《鬼気共鳴(きききょうめい)》!」

 

 健司の髪と目が薄く光る。

 

 「吹雪鬼が使ってた技だな。さすが同じ血を持つってだけのことはあるな」

 

 防戦一方になっていたのが少しだけ攻撃ができるようになった。そのタイミングで紫菀が戻ってきた。そしてほんの少しだが健司と紫菀が優勢になり始める。

 

 「こういう攻撃はお前ら苦手だろ?」

 

 ヴァサゴはニヤリと笑うと一度距離を取り、薫那とヒツギを狙う。

 

 「こいつ……!」

 「チッ!」

 

 健司と紫菀は一瞬反応に遅れ確実に間に合わない。ヒツギは急いで防御魔術を展開しようとしたとき背後から人影が現れヴァサゴの攻撃を防ぐ。

 

 「なに……?」

 

 攻撃を防いだのは健司だった。そしてさらに二人健司が現れヴァサゴを吹き飛ばす。

 

 「鬼術(きじゅつ)四重奏鬼(カルテット)! 初成功……だな」

 『上出来です、マスター』

 

 健司の三体の分身は霧のように消える。

 

 「確かにそんな技使ってたな……」

 

 ヴァサゴは首を鳴らす。ギリギリでガードしたため大きなダメージは与えられなかった。

 

 「鬼術(きじゅつ)二重奏鬼(デュオ)

 

 健司の分身ができあがり三対一という状況を作り出すことが出来た。

 

 『安定して分身を作れるのは一体までですね』

 「いないよりマシだ。それよりあの魔導書が並んだ装置がなんなのか分かるか?」

 『目的はわかりませんが、世界を書き換える装置だと思います。魔導書を使いここにある魔宝石を全て使えば不可能じゃないですから』

 「世界の書き換え…………」

 

 健司が呟くとヴァサゴは高らかに笑う。

 

 「気づいたようだな。俺はこの世界を書き換える」

 「書き換えるだと? なんのために!」

 

 紫菀が叫ぶと再び高らかに笑う。

 

 「単純な話だ。お前たちを殺せばもう強いヤツは存在しなくなる。だからより強い生命が存在する世界に書き換え永遠に楽しめる世界にするんだよ」

 

 ヴァサゴの笑みは夢を語る子供のような無邪気さすら感じさせられるほど曇りがなかった。

 

 「おいおい、人が話してるだろ」

 

 修羅刀を受け止めながら文句を言う。

 

 「お前は俺たちが殺すんだから聞いたところで意味ないんだよ」

 

 健司の分身が背後に回り込むがそれも防がれる。しかし、ヴァサゴの両手は塞がり紫菀それを狙う。

 

 「惜しいな」

 

 火焔(カグツチ)を使いヴァサゴを中心に火山の噴火のような炎が上がる。健司と紫菀はギリギリで避けたが分身はかき消された。

 

 「距離をとったのは失敗だな」

 

 紫菀と健司の周囲に光の玉が複数浮遊する。そして強い光を放つと同時に何十発もの光線が放たれる。

 健司と紫菀の姿は光に包まれる。

 

 砲撃が止むと二人は剣を杖のようにしながら立っている。健司の持つ修羅刀に刻まれた文字が赤く発光している。

 

 『魔力吸収が完了しました』

 「あぁ、今の攻撃は好都合だったよ」

 

 ボロボロの体に力を込め構える。

 

 「鬼術(きじゅつ)四重奏鬼(カルテット)

 

 健司の周囲に三体の分身が作られる。

 

 「そろそろに決めるか?」

 

 健司と同じように紫菀も力を入れ構え直す。

 

 「そろそろ俺も全力で殺しに行くとしようか」

 

 交じり合う複数の剣。

 凄まじい戦闘の中、一体の分身が切り裂かれ消滅する。

 

 「まずは一体」

 

 ヴァサゴは紫菀の剣を避け、胸ぐらをつかみ健司の分身に投げつけ同時に両断しようとする。それを一体の分身が紫菀を庇うように立ちはだかり消滅。

 

 「これで二体目」

 

 そして背後から来た分身を突き刺し消滅させる。

 

 「残ったのは本体だけだな」

 

 幾度が剣がぶつかり合うが一対一では結果は目に見えている。剣は弾かれ無防備になったところを一刀両断。

 ニヤリと笑ったヴァサゴだったがその笑みはすぐに消えた。真っ二つにした健司の体が霧のように消え、その奥の空間が歪み健司の姿が現れる。

 

 「五重奏鬼(クインテット)だ」

 

 神々しい光をまとった修羅刀でヴァサゴを斬る。すると背中羽化するようにボスの体に移る前のヴァサゴが吹き飛ばされ、遥は糸の切れたマリオネットのように健司に倒れ込む。

 健司は一度シルヴィアとのユニゾンを解除する。

 

 「助かったよ……健司……」

 「ホント手間かけさせやがって」

 「やったな! 健司!」

 

 遥を救い出し一安心したがまだ気を緩めることは出来ない。遥も武器を薫那から受け取り戦闘の準備をする。

 ヴァサゴは斬られた胸を抑えながら苦しそうに立ち上がる。

 

 「なるほど、あの光の中で分身を作りヒツギの魔術で隠れたのか」

 「そう、そして予め隠しておいた分身を出して分身を作り出したかのように見えたんだ」

 

 まんまと策略にはまったヴァサゴだったがそれに対して怒りを顕にすることも無くただ楽しそうに笑った。

 

 「これだから人間と戦うのは面白いんだ。しかし、三対一というのは力が大幅に減少した今では少し厳しい戦いになるな」

 

 少し考えてから何かを閃いたようなオーバーなリアクションを見せる。

 

 「健司と戦いたがってるやつがいるんだ。少し残念だが健司はそいつに譲ることにしよう」

 

 ヴァサゴがそう言うと健司の足元に魔法陣が描かれる。健司は急いで逃げようとするがその場から動けない。

 

 「なんだこれ?!」

 「転送魔法陣?! 健司! ボクの手に捕まって!」

 

 ヒツギが手を伸ばすが間に合わず健司は別の場所へと転送された。

 

 「さぁ、俺たちは俺たちで楽しもうか?」

 

 ニンマリと笑うヴァサゴ。

 

 転送された健司。誰が自分と戦いたがっているのか大体の検討はついていた。

 

 「やぁ、久しぶりだな」

 「やっぱりあんただったか」

 

 紳士服に身を包んだ品のある男とドレスのような服に身を包んだ生気のない女。

 

 「獅郎……」

 

 健司が二度と会いたくないとすら思った男。品の中に隠れた異常なまでの狂気をピリピリと感じた。

 

 「君とはもう一度戦ってみたいと思っていたんだよ」

 「前は俺が一方的に蹴られただけだけどな」

 

 健司がそう言うとヴァサゴとは違い品のある笑い方をする。

 

 「だが、今は強くなったんだろ?」

第98話『救出』を読んでいただきありがとうございます。

第99話は7月11日に投稿予定なのでよろしくお願いいたします。

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