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第97話『決戦前日』


 周囲を取り囲む沈黙。

 

 「シルヴィア、これは一体どういう状況だ? 遥がヴァサゴってどういうことだ」

 

 健司が沈黙を破る。

 

 「遥さんはヴァサゴの魔力に適応した人間です。遥さんの子供の頃の飛行機事故は聞きましたか?」

 「あぁ、でもそれになんの関係が」

 「その時に遥さんは死んでます」

 

 全員の表情が一気に凍りつく。

 

 「その事故は魔力を封印によってほとんど失ったにヴァサゴによって起こされました。そしてその僅かな魔力を遥の体に植え付け自分の新たな魔力の器にするつもりだったんです。そしてその僅かな魔力のおかげで遥さんは生き返り、今まで生活してきました」

 

 重い空気が流れる中、圭斗がシルヴィアに近づいてきた。

 

 「俺はそんな難しいことは理解できひんしそんな過去は今となってはどうでもええ、聞きたいのは隊長を助けれるかどうかってところや」

 「助けれる見込みはあります」

 

 圭斗のストレートな質問にたった一言、表情を変えずにシルヴィアは返した。その言葉に全員の顔つきが変わった。

 

 「マスターが私とユニゾンした状態で全魔力による一撃を修羅刀を使って当てることが出来れば……」


 シルヴィアの言葉に健司とヒツギの表情がほんの少し暗くなる。互いの状況を知らないため、二人以外は希望に満ちていた。

 

 「しかし、失敗すればヴァサゴを引き剥がすことが出来ても遥さんは死ぬ可能性があります。マスター次第とも言えます」

 

 シルヴィアは真っ直ぐ健司を見つめる。

 

 「まぁ待て、急ぐ必要があるのはわかるが一度お互いのことをしっかりと話そう」

 

 紫菀が割って入り提案する。

 確かに健司はミンディ達のことを知らず、紫菀たちはシルヴィアのことを知らないのだから話が進みにくい。

 それに賛成した健司はヒツギのこと以外今まであったことを全て話し、紫菀も部隊のことや魔導書のことを説明した。

 

 「それで健司のシルヴィアとのユニゾンの方は行けそうなのか?」

 

 紫菀に聞かれ健司は苦い顔をする。

 

 「正直ユニゾン成功率はあまり高くない。どうしても鬼の魔力が合わせるのが難しくてな」

 「しかし、やらないという選択肢は無いのでやるしかありません」

 

 成功率がかなり低い作戦ではあるがヴァサゴの弱体化、運が良ければヴァサゴの討伐にもなる。それを逃がすわけには行かなかった。

 

 「ボクとユニゾンするのではダメなの? ユニゾン自体の成功率や魔力量を考えたら僕の方がいいんじゃない?」

 「それが出来ないんです。ヴァサゴを遥さんの体から引き剥がす鍵はマスターの持つ修羅刀と鬼と呼ばれる魔力にありますから」

 「そっか……」

 

 いくつかの不安要素は拭いきれはしないが万全で完璧な状態なんてものはありえないとどこかで踏ん切りをつけた。

 

 「作戦は明日開始します。この一日でしっかりと回復してください」

 

 というふうにシルヴィアから指示がはいり落ち着かない中ではあったが全員各自で休息をとった。

 

 「ふざけんなよ。そんなことさせるかよ」

 「状況を考えてくださいマスター。今はほんの少しでも戦力が欲しい状況なんです」

 

 作戦決行数時間前にシルヴィアと健司が何かもめているようだった。

 

 「それでも千寿は戦わせない。分かってるだろ、千寿は一般市民と同じなんだぞ」

 「しかし、戦える力を持っています。それもマスター達の三人を除けば一番強い力、それにマスターも強大な力を持った一般市民という点では千寿さんと同じです」

 

 シルヴィアに痛いところを突かれ何も言い返せなくなる健司に千寿が近づき、力強い意志を持った目を健司に向ける。

 

 「けんにぃ、千寿は戦うよ? けんにぃがダメって言っても戦う、みんなを助けるってアクイラとも約束したから、ね?」

 『Yes!』

 

 自分の意思で戦場へと向かおうとする千寿を心配する夫婦の方にも近づいて笑いかける。その屈託のない笑顔を見て夫婦は千寿を抱きしめた。

 

 「お母さんとお父さんとみんなが一緒に笑顔で暮らせる場所を取り返したいんだ。だから戦ってくるからお母さんとお父さんはここで待ってて、絶対帰ってくるから」

 

 千寿と力強く抱きしめていた力をゆっくりと緩めるその表情には寂しさが浮かび上がった。

 

 「ヒツギ、これはあんたに渡しておくわ。私より確実に有効活用出来るでしょうから」

 

 そう言って薫那は魔導書ゴエティアをヒツギに渡した

 

 「仕方ないとはいえ魔導書を持っていくっていうのはかなり不安があるよね」

 

 魔導書をこの場において攻められればこの場に残る夫婦に危険が及ぶ可能性があるため持っていくこととなった。

 

 「ゴエティア……」

 

 魔導書を見たシルヴィアが小さな声で呟いた。

 

 「エイボン、今はシルヴィアって言うんだっけ。あの子魔導書としての意志を取り戻していたわ。良いマスターにも出会えたみたいよ」

 「そうですか。それは良かったです」

 

 ヒツギの持つゴエティアを嬉しそうにシルヴィアは見つめた。

 

 「あとこれを二人に渡しくておくね」

 

 ヒツギは健司と紫菀に三つのビー玉のようなものを渡した。

 

 「一人一個づつであまりは遥に渡して。それを食べれば魔力と体力をを限界まで回復できるから」

 「おいおい、そんなもんあるならもっと早くからくれればよかったんじゃないのか?」

 

 健司の言葉にヒツギは首を横に振る。

 

 「副作用として一ヶ月間は魔力も使えなくなるしギリギリ生活できるレベルでしか体が動かせなくなるから」

 

 でももう関係ないでしょ、とヒツギは笑うがあまりにも大きすぎる副作用に紫菀と健司の笑顔がひきつる。

 

 全員がそれぞれ戦うための準備を済ませ、すでに出撃の合図を待つだけの状態となっていた。

 

 「それでは遥さん救出を含めたヴァサゴとの最終決戦、実際作戦なんて形になるものはなく、皆さんの実力だよりの無茶な作戦ですが……」

 「戦う前に湿っぽい空気にするもんじゃないよ。嘘でもいい、根拠なんてなくてもいい、ただ戦意がみなぎることを皆で言えばいいんだよ」

 

 ミンディが笑いながら言う。

 

 「ミンディさんの言う通りや! 今から俺らは遥さんを助けてヴァサゴを倒して英雄になるんやから!」

 

 圭斗はジャックのドッグタグを握りしめながら気合を入れように叫ぶ。そこから全員が口々に気合を入れる。そんな姿にシルヴィアは困惑を隠せなかった。

 

 「不思議かい?」

 

 ヒツギに聞かれシルヴィアは頷いた。

 

 「怖くないんですか?」

 「怖いよ。ボクだって怖いし……でも信頼出来る仲間がいるってだけで恐怖にだって立ち向かえる」

 

 ヒツギの言葉を聞いてシルヴィアは普段の全く動かない無表情をフッと微笑みに変えた。

 

 「さぁ、シルヴィア! 遥を助けに行こうぜ!」

 「はい!」

 

 シルヴィアは用意していた転送魔法陣を展開し、全員がその中へとはいる。

 

 「俺たち全員で遥を救って、この世界も救ってやるぞ!」

 

 健司の言葉に全員が力強く返事をし、戦場となる本部へと転送された。

第97話『決戦前日』を読んでいただきありがとうございます。

第98話は6月27日に投稿予定なのでよろしくお願いします。

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