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第91話『魔導書ゴエティア』


 ヴァサゴとの遭遇から二週間が経過した頃、遥と紫菀はマシロと薫那、ミンディと弘と圭斗は残りの魔導書を見つけるためジャングルの中を歩いていた。

 森の中にある古代遺跡のなかに魔導書が置かれているとの事だった。

 川で食料をとり、野営をし、道中で現れたアンデッドやクリーチャーを倒しながら三日間歩き続けた。そしてついにようやく遺跡がその姿を現した。

 

 「こんな開けた場所ヘリで来てもよかったんじゃないのか?」

 『いやぁ〜、空から見ると見えないんですよねぇ〜。だから歩いていくしか行く方法がないんですよぉ』

 

 インカム越しに間延びした話し方をするノエルに少しばかりため息をつく紫菀。

 

 「まぁ、遺跡は見つかったんだからいいじゃない。それにここもなにか仕掛けがあるはずだから気をつけましょ」

 

 ため息をつく紫菀を横目に薫那はミンディ、弘、圭斗と一緒に銃の準備をしている。

 

 「ここにある魔導書って馬の絵が書かれた魔導書なんだよな? どんな魔導書なんだ?」

 「魔導書ゴエティア、召喚系の魔術を得意とする魔導書よ。さしずめ遺跡の中は見たことも無いような化け物がいるでしょうね」

 

 遥の質問に答え終える頃には四人とも銃を装備しいつでも中に入れる状態になっていた。

 

 「じゃあ、中に入るか」

 

 遥は紫菀の合図と同時に火の玉を暗い移籍の中へと進ませる。入ってすぐには特に何も無く遥を先頭に火の玉について行くように進んでいく。

 

 「なにも来うへんのか?」

 「油断しない方がいいんじゃないか? 特に自分たちのようなただの人間は」

 「しかし、生き物の気配が全く無いな」

 

 遥の火の玉では先頭しかてらせないため圭斗と弘とミンディはフラッシュライトで周囲を照らしながら進んでいく。

 

 かなり奥まで進んで入口から入る光が完全になくなった頃、壁や地面の一部が大きなツルハシで叩いたように砕けていた。

 さらに奥に進むと分かれ道や曲がり角などが多くなり始めた。奥に進めば進むほどツルハシで砕いたような跡が増えていった。

 

 「ねぇ、これみて!」

 

 マシロが見ている方向は既に通りすぎ光が当たっていなかったので圭斗がそっちの方をライトで照らした。

 

 「これはタイヤ痕……やろうか?」

 

 壁には急カーブによって出来たようなタイヤ痕が出来ていた。それからよく見ると壁だけでなく至る所にタイヤ痕が作られていた。

 

 「もしかしたらヴァサゴに先を越されたか? みんな気をつけろ、この先遭遇する可能性があるから」

 

 遥が注意を促すが紫菀がタイヤ痕を訝しげに見つめる。

 

 「気になるのか?」

 「遥はこれどう考えてる?」

 「ヴァサゴの手下が着けた可能性が高いって考えてるけど、ただ疑問なのが何でできたタイヤ痕なのかってところだな」

 「やっぱそこが気になるよな」

 

 いくつもあるタイヤ痕だったがそのどれもがかなり細いものだった。

 

 「こんなところ車じゃ無理だし、バイクにしては細すぎるよな。自転車……くらいか?」

 「紫菀はヴァサゴの手下が自転車でこんなところを進んでいく姿が想像できるのか?」

 「いや、まったく」

 

 二人でタイヤ痕を眺めていると薫那が二人の服の袖を引っ張る。

 

 「ここで考えてても仕方ないわ。先に進めば分かるかもしれないし、今はヴァサゴ、又はヴァサゴの手下が先にいるとして行動しましょ」

 

 薫那の言うように全員が周囲を警戒しながら奥へと進んでいく。

 

 「正直これじゃ正しい道なのか迷っているのかわからないな」

 『一応、ワタシの調べでは道はあってると思うんですけどねぇ』

 「どうして今進んでる道が正しいって分かるんだ? ここに来たのは初めてだろう?」

 

 ミンディの疑問にノエルはインカム越しでもあの豊満な胸を張っているのがわかるレベルで自慢げに鼻を鳴らす。

 

 『皆さんのつけてるインカムには小型カメラがついてましてワタシは常に七人分の映像を分析してるんですよぉ!』

 「ほ、ほう。それでなんで正しいってわかったんだ? あたしにもわかるように説明してくれよ?」

 「タイヤ痕ですよ」

 「タイヤ痕?」

 

 ミンディは周囲にあるタイヤ痕をフラッシュライトで照らして眺める。同じインカムを繋いでいる全員も釣られてタイヤ痕を見る。

 

 『全く遺跡内で何も起きないということはもう既に誰かが魔導書を見つけたと考えるのが妥当だからぁ、後はこのタイヤ痕と破壊された壁を分析すればどう進んだかだいたい予測できるってことぉ。すごいでしょ〜?』

 「しかしまぁ、ノエルの予測が正しいって言うならこの先には必ず誰かいるってことだ」

 

 紫菀が進行方向を見ながら呟く。

 

 「こっから先にタイヤ痕は無さそうやけど、入口みたいなもんは全然見つからへんで?」

 

 それからさらに奥に進んだがついにタイヤ痕は無くなってしまい、目印になるものがなくなった。

 

 「ノエル、どこかで間違えたか?」

 『いやぁ、そこら辺のはずなんだけどなぁ。もう少し周囲を調べて見てぇ』

 

 ノエルの言うように周囲を捜索、と言っても壁を触ったりして調べるくらいしか出来ない。

 

 「あーあ、ヒツギが入れば《嚮導(サーチ)》を使ってすぐに見つけられるって言うのにね」

 

 ほとんど全員が道を間違えたかと考え始めている中、ミンディとマシロが一箇所をライトで照らしながら眺めていた。

 

 「ここ、おかしいよね?」

 「ああ、ここだけおかしいな」

 

 仲良く屈んでいる二人の後ろから覗き込むようにして二人が見ている箇所を見る。するとそこには不自然に入ったヒビがあった。

 そのヒビはヒビと言うにはあまりにも直線的でヒビと言うよりは隙間のようだった。

 

 「隠し通路でもあるのか?」

 「にぃに! このヒビから風が出てるよ!」

 

 紫菀はマシロに言われグッとヒビに顔を近づけてみると確かに微弱ではあるが風邪が通っている。

 

 「んー、壊すか……?」

 「壁を壊すんやったらいいもんがありますよ」

 

 カバンからプラスチック爆弾を取りだした。その総量は三キロほどだった。

 

 「じゃあ、爆発させてみるか。圭斗さん準備の方お願いします」

 「了解、任せて下さい」

 

 圭斗は見つけた日々の近くにプラスチック爆弾を慣れた手つきでセットし、全員にその場から離れるよう指示を出す。

 

 「じゃあ、爆発させます」

 

 圭斗がスイッチを押すとボンッと遠くから音がなり通路に反響した。

 壁が壊れているか確認しに戻ると壁は綺麗に破壊され白い煙を上げていた。

 

 「よし、中に入ろう」

 

 遥を先頭に奥へと入っていく。

 

 通路は狭く人ひとりが入るので精一杯だった。そんな狭い通路を一列になって進んでいくと少し広々とした部屋に出た。

 遥と紫菀が行った遺跡は魔導書が置いてある場所は戦闘ができるくらい広かったがここは本当に部屋程度の広さしかなかった。

 そしてそこには一人の少年が座っていた。褐色の肌に金色の髪、サルエルパンツのようなズボンのみ着用してて体にはいくつも装飾品をつけてはいるが半裸。そして何よりも目を引くのは肌に描かれた白い模様。

 

 「おい、動くな。そのままこっちの質問にいくつか答えてもらおうか?」

 

 遥は少年を見つけるやいなやデザートイーグルをホルスターから引き抜き、少年の頭に突きつける。

 

 「おいおい、勝手に入ってきておいて銃を突きつけるなんて失礼なやつもいたもんだ」

 

 後頭部に銃を突きつけられた少年は振り返らずに言う。その口調には余裕があり、その様子には油断が無かった。

 

 「それに質問するのはオイラの方だ」

 「なに?」

 「遥! 動くな!」

 

 紫菀が叫ぶ。

 その声に反応して少し頭が動いてしまった。するとチクリとした感覚がうなじにあった。青龍刀が遥の首ギリギリの距離で浮遊している。

 

 「エイボンは来てないのか?」

 

 少年が振り返りながら聞いてくる。その見た目は十歳前後ほどだった。

 

 「魔導書エイボンなら俺の仲間の一人が探しに行ってる。祖先が魔導書エイボンの契約者だったんだ」

 「そうか、もしかしたら久しぶりに話せると思ったんだが残念だな」

 

 少年は少ししょんぼりとする。

 

 「まぁいいか、とりあえずお互いに武器を下ろそうか? 座って話そう」

 

 そう言うと少年は真っ先に青龍刀を消した。遥もそれを確認してからホルスターにデザートイーグルを入れる。

 

 「魔導書ゴエティアはどこにある」

 

 腰掛けた遥に近づきながら割ってはいるように紫菀が少年に質問した。

 

 「オイラだよ、オイラが魔導書ゴエティアさ。周りからはティエって呼ばれてたからそう呼んでくれてもいいぜ?」

 

 少年はニカッと笑う。

 

 「まさか! 魔導書はエイボン以外全て意思のないただの本に戻ってしまったはずじゃ。それに人間の姿をしてるなんて」

 「魔法や魔術があるんだ。これくらいの奇跡があったって差し支えないだろ?」

 

 驚く薫那にゴエティアを名乗る少年は肩をすくめておどけてみせる。

 

 「それでお前が魔導書ゴエティアだって言うなら話は早い、俺たちについてきて協力してくれ」

 「ヴァサゴ関係の事だろ?」

 

 

 ゴエティアは紫菀に皆まで言うなと言わんばかりの目線を送る。

 

 「魔導書は好きに持って行ってくれて構わない」

 

 ゴエティアは魔導書を取り出し予想以上にすんなりと遥に手渡した。

 

 「ただ残念ながら、オイラ自身はもう手助けすることは出来ないな」

 「どういう事だ?」

 

 ゴエティアは履いていた靴を脱いでみせた。驚くことに足が透けていて、ポロポロとこぼれるように足から光の粒が出ていた。

 

 「二代目マスターからの魔力供給が無くなってもうかなりの月日がたった。オイラの体もそろそろ限界だ」

 「だったら俺と契約すれば良いだろ? 俺じゃなくて紫菀や薫那でも──」

 

 ゴエティアはそこまで言った遥に対して首を横に振った。

 

 「魔導書は渡した。これでようやく安心して眠れるんだ」

 

 遥はそれ以上何も言えなかった。

 

 「ここを出て旅をしてここに帰ってきてあとは託して眠るだけ、大切なヤツらがあの世で待ってるからさ」

 

 ゴエティアは笑う。

 

 「さぁ、帰った帰った。おいらのあと数日の余生を邪魔しないでくれ」

 

 しっしっとジェスチャーをする。そんなゴエティアを見てみんなが微妙な雰囲気になっている。

 

 『紫菀くん! 早くこっちに戻ってきて!』

 

 突然インカム先でノエルが叫ぶ。

 

 「どうした?!」

 『ヴァサゴが乗り込んできた!』

 「なっ?!」

 『ヘリを送るから早く戻ってき──』

 

 ブチッと通信が切れる。

 全員の顔が焦りで一色に染る。

 

 「大変みたいだな。早く表に出な。オイラが手助けしてやろう、ヘリを運転出来るやつはいるか?」

 「あたしは運転出来るけど」

 「なら問題ないだろう」

 

 ゴエティアはそのまま遺跡の外へと出ていった。

 

 「さぁ、オイラの真骨頂を見せてやろう」

 

 大きな魔法陣が足元に現れる。

 そしてその魔法陣から蛍のように無数の光が集まりヘリを形作っていく。そしてものの数秒で減りが出来上がった。

 

 「さぁ、早く行きな」

 「あ、ああ! 恩に着る」

 

 全員がヘリに乗り込み急いで向かう。

 

 「オイラの仕事はこれで終わりだな」

 

 そう呟いて遺跡の中へと入っていく。

第91話『魔導書ゴエティア』を読んで頂きありがとうございました。

第92話は4月4日に投稿するのでよろしくお願いします。

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