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第09話「魔力訓練」


 ついに始まった魔力を使った訓練。

 ボスが言うには魔力操作に最も必要なのは全身に流れる魔力をイメージすることらしいが健司と遥はそれが全く理解できない。

 

 「全身に流れる魔力をイメージ……」

 「口に出しても意味ないと思うぞ?」

 「うっせぇーな、そう言う遥はどうなんだよ。少しは魔力操作出来るようになったのかよ」

 「うっ……」

 

 この魔力操作は見た目の地味さに反して中々の高難易度だった。

 

 「ぬぐぐぐぐぐ……!」

 「おい健司、そんなに力んだら……」

 「あ……めっちゃ鼻血出た。トイレで鼻かんでくるからボス来たら伝えといて」

 

 トイレへ向かう健司の抑える手の指の間から血が漏れている。

 

 「どんだけ力んでんだよあいつは……」

 

 呆れたため息をつく。

 

 「魔力操作、あの時は全身の血が沸騰するような感覚だったけど……」

 

 遥は必死に頭をひねる。

 

 ボスに魔力を流し込まれた時のことを鮮明に思い出そうとする。漲るような力、全身の血が沸騰したようなそんな感覚を思い出す。

 

 「全身の血、血管、魔力を全身にめぐらせる血管のようなものをイメージすればもしかしたら」

 

 遥は立ち上がりイメージする。

 全身に張り巡らされた血管を、そしてそこに流れる血液を。

 そこから更に血管を増やす、そしてそこに流れるのは血ではなく魔力。自分の意思で流れる速度を変え、今は素早く全身に魔力がめぐる。

 

 徐々に力が湧いてくる。

 徐々にあの時の感覚に似てくる。

 徐々にイメージが鮮明になる。

 

 「はーるーかー、今戻ったぞー」

 

 健司の声に集中が途切れその感覚やイメージは全て消える。

 

 「ああ……良いとこだったのに」

 

 遥はその場にへたり込む。

 

 「お、おい? どうしたんだよ」

 「魔力操作のコツを掴んだんだよ。それなのにお前にもう少しのところで邪魔された」

 

 普段は基本的に温厚な遥に凄まじい形相で睨まれ健司は三歩ほど後ろへ下がってしまった。

 

 「ご、ごめん」

 「まぁいいさ、声かけられたくらいで途切れるようじゃ使い物にならないからな」

 「そういやお前さっきコツを掴んだんだって言ったよな。俺にも教えてくれよ」

 

 遥は健司に懇切丁寧にさっき自分がイメージしたものを教える。そして二人で遥の説明通りイメージをすると二人ともある程度まで操作出来るようになったがボスのように操作することはまだまだ出来ない。

 

 「何が足りないんだ? 遥の言う通りにすれば確かに少しはあの時みたいにはなるけど」

 「ボスみたいに一瞬で、それもあんなに強大な魔力をどうやって全身に」

 「そりゃお前達はまだ魔力をぐるぐる回してるだけだからな」

 

 ボスが仕事を終え訓練所に来ていた。

 

 「それは一体どういう意味ですか?」

 「魔力は常に均一に体内をめぐっているものと魔力タンクに貯蔵されているものがある。つまりだな」

 

 ボスは水が半分まで入れられたコップを複数個と大量の水が入ったポットを用意した。

 コップは体の部位を表し、水は魔力を表す。

 それに加えポットとポットに入れられた水、これが魔力タンクとタンク内の魔力を表す。

 

 魔力操作とはこの魔力タンクを表すポット内の水を好きなコップの中に入れる。つまり防御や攻撃に使う体の場所に更に魔力を足すということらしい。

 

 「とまぁこれは魔力操作の基本。だが、私はこれをさらにこうする」

 

 ボスは水がたされていないコップの水を水が足されたコップのそばへ置いた。これは体のどこか一部分の魔力が完全になくし、その魔力を別の場所に足したことになる。

 

 「こうすることで魔力はさらに密度が増加するんだ。魔力タンクから体内に流せる魔力の量は多少は個人差はあれど限界があるからな」

 

 ボスの説明でざっくりだが健司と遥の中でイメージが完成した。

 二人は立ち上がり、深呼吸をしてから集中する。すると健司右脚には遥右腕にどんどん魔力があつまっていく。

 健司の右脚から、遥の右腕からあの時のボスに匹敵するレベルの魔力が放たれる。

 

 「そのまま集まった魔力は外に漏れている。それを漏れないように圧縮するんだ」

 

 言われたとおりイメージする。すると四方八方に散らばるように放たれていた魔力があの時のボスのように一点に集中した魔力。

 

 「うむ、上出来だ」

 

 その言葉を聞いて健司はニヤリと笑う。その笑いは喜びからの笑いとは少し違う、少し不気味な笑いだった。

 

 次の瞬間に健司の体がブレた。

 遥は何が起きたか分からなかったが何が起きたかは目の前を見ればすぐに理解出来た。

 

 「いくら魔力操作ができるようになったとしてもそれじゃ私にクリーンヒットを当てることは出来ないぞ?」

 

 健司の拳がボスの顔の目の前でとめられている。それはもちろんボスの手によって。

 

 「そうみたいですね。今回の不意打ちは魔力を使えばどれだけ動けるか試せたので良しとします」

 

 健司のズボンの裾の隙間から見える右脚に魔法陣をバラバラにしたような赤黒く光る模様が浮かび上がり、そして左目が紅く発光している。

 

 そしてその模様と目の紅い光はゆっくりと消えていった。

 

 「健司の足に変な模様が……」

 「模様?」

 

 健司がズボンの裾を上げるがそこに模様なんてものはない。

 

 「まさかこんな簡単に魔法を使われるとはな。健司が今使ったのが楓華の渡した悪魔の技、魔法だ」

 「俺が魔法を? 魔力操作をしただけのつもりだったんですが……」

 

 健司が驚きを隠せないでいると、

 

 「ちょちょちょ! 水水水!」

 

 遥の腕が燃えている。

 

 「ってあれ? 熱くない」

 「熱くないのかよ」

 「遥まで魔法を……」

 

 ボスは少し考えるように頭を抱えてから小さくため息をつく。

 

 「お前らに話していなかったことがあるんだ。それを今から話す」

第9話を読んでいただきありがとうございます。

第10話は12時から13時までに投稿しますのでよろしくお願いします。

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