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第87話『願い、争い、理由』

 ゾアを健司に任せ駆け抜け、魔法で守られた研究所の中へと入る。入った先にあるのは地下へと続く長い階段。十年以上住み続け、嫌になるほど見た階段。

 下の方までしっかりと照らさているにもかかわらず、その階段は底が見えない暗闇のように感じた。


「実家に帰るのにこんなに緊張するなんて……」


 ヒツギはゆっくりと警戒しながら階段をおりていく。二分ほどおりるとようやく長い階段が終わりを告げた。


 いくつもの部屋へと繋がる廊下。昔は何人も住んでいてそれなりに賑やかだったが今はそんな面影もなくヒツギの歩く音だけが響く。


「静かなのはボクがここを出る前からか」


 そして、ヒツギはいちばん広い部屋に入る。観音開きの大きな扉を開け、その光景に懐かしさを感じる。壁の一面がうねる木々の根におおわれている。

 橋の方にある机に散らばるゾアの研究資料や魔神器の設計図などが積み上げられていた。

 この場所は元々ここに住んでいた多くの研究員たちが研究し開発した兵器や魔法を試す場所でヒツギとドラスの一番好きな場所だった。


「わざわざ自分からここに来るとは。手間が省けて助かった」


 広い部屋の端で簡素な椅子に座り本を読んでいたドラスが立ち上がる。


「ボクはドラスが何をしようとしているかを知るためにここまで来た。ドラスの目的は一体何なの?」

「目的だと?それはこの前言っただろう」

「その目的とボクをここに連れ戻すことが繋がるとはどうしても考えられない。一体何を企んでいるんだい?」


 ヒツギの毅然とした態度にドラスは面倒くさそうに溜息をつきながら杖から剣を引き抜く。


「どうせ死ぬお前が知る必要は無い」


 ドラスはヒツギとの距離を一気に詰め、剣を振り下ろす。ヒツギはそれを魔法で防ぎ魔法で作り出した剣を振るう。ドラスはそれを難なく避ける。


「ことによってはボクは協力できるかもしてないじゃないか!ヴァサゴがいる今、ボクとドラスは争ってる場合じゃないはずだ!」

「話したところで協力などできるわけがないだろう。それが出来るならこんな回りくどいことなどしない」

「ドラスはいつもそうだ!ボクをここに残して出て行った時もここにいた皆を殺した時も何一つ話してくれない!」


 ヒツギの周囲に複数の光の玉が出現しドラスを追尾するように放たれる。ドラスは避けるのを止め、光の玉を全て両断する。

 次の瞬間、半分になったいくつもの光の玉が強く発光し爆発を起こし、数秒間、視覚と聴覚の昨日を停止させる。

 爆煙が晴れる前にヒツギはドラスとの距離を一気に詰めて剣を振るう。しかし、視覚も聴覚も機能していないドラスにあっさりと止められてしまう。


「なっ!?」

「そろそろ視覚と聴覚が回復し始めたがまだ戦うか?お前に勝ち目はないぞ?」


 ヒツギは急いで距離を取った。


「周囲に魔力を放出してボクの場所を感知したのか……」


 ヒツギは魔法陣を展開する。


「我が肉体は音をも凌駕し、超越されし力は我の望むままに」


 魔法陣はヒツキギの体に張り付くようにまとわりつく。


「《身体強化エンチャント・ソニックブーム》!」


 ヒツギは音すら置き去りにしてしまうほどのスピードでドラスに接近しスピードを殺すことなく攻撃を続ける。

 ドラスも完壁にヒツギの攻撃を防ぐことは出来ず、致命傷にはならないものの小さな切り傷が体に出来始めた。

 圧倒的スピードで挑めば勝てる可能性が見えてきたことでヒツギはさらにスピードを上げ連撃を繰り返す。しかし、その動きは次の瞬間に止められた。


「速くなっただけで勝てるなんて思い上がるのも大概にするんだな」

「うそ……そんな、バカな……」

「何故慣れない近接戦闘ばかりで挑んでくる意味は知らんがどう足掻こうがヒツギは勝てない。なぜなら」

「うっ……くっ…」


 突如ヒツギの表情が歪み痛みを堪えるように膝をつく。ヒツギをドラスは上からじっと見下して眺める。


「お前の体は元々戦闘には向けに作られていない。身体強化魔術など使ったところで私を倒しきれるわけが無いだろ」

「そんなことくらい、知ってるさ……ボクが、戦うことに向いてないことなんて」


 顔を上げたヒツッギの右目から涙のように血が流れでていた。ヒツギはそれを拭うこともせずドラスの服を掴み立ち上がろうとする。


「ならなぜ逃げずに戦う?」


 ヒツギはドラスの胸ぐらをつかみ不敵に笑いながら脱みつける。


「戦う才能も魔休術の才能もあって一人でなんでもこなせるドラスには一生分からないよ!」

「はぁ、そうか」


 ドラスはヒツギの顔を鷲掴みにして背中を壁に叩きつける。ヒツギは飛びそうになる意識をなんとか保つ。全身に走る痛みを堪えドラスが振り下ろした剣をギリギリでかわす。しかし、更なる追撃がヒツギを襲う。


「我が身を守りし光の鎧。神撃をも拒絶せん! 《守護壁ガーディアン》!」


 早口の詠唱で刃を防ぐ。《守護壁ガーディアン》で発動した魔法陣をドラスの剣ごと壁に叩きつけ、魔法陣ごと剣を壁に貼り付ける。

 そのまま地面をころがるようにドラスと距離をとる。


「万物を飲み込む無の存在我に危害加える者を消滅さよ。せよ」


 《暗黒柱ダークマター》を砲撃型へ変化させた魔法陣を展開する。


「《暗黒柱ダークマター》!」


 黒い砲撃が放たれたがそれがドラスを捕えることはなく回避される。


「逃がさない!」


 放たれる砲撃をヒツギは無理やり薙ぎ払うように動かし、壁を破壊しながらドラスを追いかける。

 さすがに薙ぎ払うようにされるとは思っておらず少し驚きを見せるドラスだったが後ろを少しみて《守護壁ガーディアン》を使い受け止める。

 あまりの威力に砲撃が止まった時にドラスの両手は火傷を負い、耳から血が流れ、三メートル程押されてしまっていた。

 ヒツギもかなりの魔力を使い肩で息をしている。


「チッ、受け止めきれなかったか……」


 ヒツギが《暗黒柱ダークマター》で破壊した橋の部分から壁にヒビが入っていき壁が崩れ、明るい実験室のような部屋が現れた。


「え……なに、これ……?」


 ヒツギは実験室にフラリと近づく。その部屋には大量の魔道書と並べられた大量の薬品の数々。


「どう、いうこと……?」


 困惑を隠せないヒツギの目線の先には巨大な円柱状の水槽、そしてそこには薬液が充たされていた。


「なんで、ボクが……いるの?」


 水槽の中で大量のチューブに繋がれたヒツギが長い髪を薬液の中で漂わせながら眠っている。

第87話『願い、争い、理由』を読んで頂きありがとうございます。

第88話は2月8日に投稿予定なのでよろしくお願いします。

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