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第85話『旅の行方』


 雨が降る真夜中の誰もいない街を一台のバイクが走る。そのバイクはまだ壊れていない建物の前に止まり、それに乗っている二人は建物の中に入って行った。

 

 「全然壊れてない建物があってラッキーだったね。とは言ってもボクも健司もかなり濡れちゃったけど」

 「そうだな、ここが見つからなかったらずぶ濡れのまま寝る羽目になってたかもな。さて、俺は魚の準備をしておくからヒツギは火を起こしておいてくれ」

 「分かった」

 

 ヒツギは濡れて冷えた体を温めるために急いで火を起こす。何本かの積み重ね魔術を使い火をつける。

 

 「あ、健司。服乾かすからこっちきて」

 

 そう言われヒツギに近づく。ヒツギがパチンと指を鳴らすと濡れていた服が一瞬で乾いた。

 魚の準備をしながらしみじみと、魔術って便利だななどと考える健司。魚に塩を振り、串に刺して火にかける。

 

 「本部を出て今日で一週間か。ドラスのいる所までだいぶ近ずけたね」

 「ほんとにその場所にいる確信はあるのか?」

 「それは問題ない。ドラスはボクを元々いた場所に連れて帰ろうとしたんだからそこに行けばいるはずだよ」

 

 ヒツギは自信満々に魚をみながら答える。

 

 「それに鬼の力も使いこなせるようにならないとな。全く使えないんじゃ改造したレイジングブルも意味ないからな」

 

 健司はレイジングをホルスターから抜きクルクルと回す。

 

 「それで、一応聞いておくがヒツギはドラスに勝つための作戦とかはしっかりとあるのか?」

 「……」

 

 黙り込むヒツギに健司は頭を抱えて大きなため息をつく。普段作戦を考え指示を出していたヒツギがノープランというのも少し驚いたがそれでもほんの少しの策だけでも欲しかった。

 

 「あのヒツギが無策だとはな」

 「いや、全く作戦がないってわけじゃないんだよ? ただ……」

 「ただ、なんだよ?」

 「ぜーんぶボクが生きて帰ってこれる可能性が限りなくゼロに近くって」

 

 生きて帰ることを前提に考えていることが当たり前のことではあるが嬉しくて健司は笑ってしまった。

 

 「な、なんで笑うの!?」

 「いや、前のヒツギだったら自分が死んででもドラスを倒すとか言ってただろうから」

 「……確かにそうかもしれない」

 

 一瞬ヒツギはキョトンとした顔をしたがすぐに健司に釣られるように笑った。

 

 「もっと一緒に居たいって思っちゃったからね。もう命を粗末にするようなことはしないよ」

 「じゃあ、ドラスはどうするんだ? 殺すのか?」

 「できれば殺したくない。人とは敵対してるけどボクにとってはかけがえのない家族だから」

 

 ヒツギは健司の質問に恐る恐る俯きながら答えた。事実ドラスは健司を殺そうとした、と言うより健司に鬼の力がなかったら殺していた。

 そんなドラスを、これから確実に障害になるドラスを殺したくないなど言えばどんな反応をされるかヒツギは怖かった。

 

 「そうだな、家族だもんな」

 

 そんな素っ気ない返事だけ返して健司は焼けた魚にかぶりついて美味そうに食べる。

 

 「早く食べろよ。せっかくの魚が焦げちまうぞ」

 

 焼けた魚をヒツギに手渡す。

 

 「あ、うん……ありがと」

 「どうした? お前が飯にすぐに食べようとしないなんて調子が悪いのか?」

 「ち、違うよ! 食べる食べる!」

 

 ヒツギも健司と同じように魚にかぶりつく。

 

 「何も言わないのかい?」

 「なにが?」

 「ボクがドラスを殺したくないって言ったことだよ。だって健司はドラスに……」

 

 おずおずと聞いてくるヒツギに健司はため息をついた。食べきった魚の骨と串を日の中へ放り込み水で口を潤す。

 

 「なんで家族を殺すことを推奨するんだよ。むしろ家族を殺すなんて言うもんじゃない」

 「そう、だね」

 

 健司はコートを布団のようにしてヒツギに背を向ける形で寝転がる。

 

 「明日も何が起こるか分からんからな、早く寝て疲れを取れよ」

 「うん、わかってるよ」

 

 ヒツギも残った魚を食べきり、火の中へ放り込む。

 ヒツギもコートを布団のようにして健司の背中に自分のの背中が当たるように横になる。

 

 「おい……!」

 「たまにはいいじゃないか」

 

 そのまま寝息を立てるヒツギに健司は何も言えずそのまま眠りについた。

第85話『旅の行方』を読んで頂きありがとうございます。

第86話は1月11日に投稿するのでよろしくお願いします。

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