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第83話『英雄再び』


 車を走らせ合流ポイントまで急いだ。

 そして合流ポイントに到着したが輸送機はどこにも見当たらない。三人に少し焦りが生まれたがその焦りはすぐに消えた。

 輸送機が飛んでくるのが遠くの空に見えた。しかし、その輸送機は着陸しようとはせず、ハッチのみ開けた状態だった。

 まさかと思った次の瞬間、透明な糸によって車は括り付けられ宙に浮いた。そしてゆっくりと引き上げれ、輸送機内へ入った。

 

 「紫菀、助かったよ」

 

 遥は車から降りてお礼を言うと紫菀は手を振って返事をした。

 

 車が引き上げられた十数分前。

 

 「本当に懐かしいな。甘く見ていたお前のせいで負けたんだからな」

 「残念ながら俺はお前の思っているジャックじゃないぞ?」

 「あぁ、どうやらそのようだ」

 

 ヴァサゴはジャックの機械パーツが剥き出しになった腕を眺めなが納得する。

 

 「しかし、どうするつもりだ? さっき俺の一撃を止めた感じを見るとあれ以上のスペックは望めなさそうだが」

 「手段もなくここに残ったわけじゃないさ。一応お前を本気で殺すつもりで残った」

 

 ジャックは一本のインジェクターを取り出した。その中には青く光を放つ液体が入っている。

 

 「液体魔宝石だ」

 

 そのインジェクターを機械パーツがむき出しになった腕に差し込み中の液体を注入する。

 

 「レベルファースト……適合……」

 

 ジャックはサバイバルナイフを取りだしヴァサゴに斬り掛かる。その距離を詰める速度はさっきまでよりも格段に早くなっていた。

 

 「すこし速くなったな。 だが、まだまだ俺からすれば遅い。その程度の速さで俺を殺すつもりだったのか?」

 

 ジャックの初撃を受止めたヴァサゴが挑発的な笑みを浮かべ、横腹に蹴りを入れる。

 ジャックはその蹴りをギリギリのところでガードしたが受け止めきれず吹き飛び二回ほど地面でバウンドする。

 

 「まさか、これからが本番だ」

 

 ジャックはもう一本インジェクターを取りだし中の液体を再び注入する。

 

 「ぐっ……レベル、セカンド……適合……」

 

 さっきよりも確実に苦しそうな表情をする。しかし、その苦しそうな表情とは真逆でスピードはさらに上がった。

 

 「なるほどそのインジェクターはパワーアップってだけじゃなさそうだな。かなり苦しそうだ」

 

 ジャックのスピードはほとんど遥たちと変わらないレベルにまで達していた。

 

 「んー、俺を殺すにはまだまだ」

 

 元々戦闘技能が高く液体魔宝石によって全体のスペックを格段に上げたがそれでも埋めることの出来ない圧倒的な差をヴァサゴには感じた。

 繰り出す連撃は受け流されたまにヴァサゴが仕掛けてくる攻撃は防御の上からでもありえないほどのダメージを食らう。

 

 そして埋められないその差を埋めるためにジャックはインジェクターを取り出し注入する。

 

 「ぐ、ぐあぁぁぁあ!」

 

 ジャックの体に電気を流されるように機械の体に激痛が駆け巡る。

 

 「はぁ……はぁ……レ、レベル、サー……ド、適合……!」

 

 バチバチと火花を散らす体にムチを打つようにヴァサゴとの距離を詰め、ナイフを振るう。

 ジャックの振るったナイフはついにヴァサゴの頬を掠め、ヴァサゴの頬から少量の血が流れる。

 ここでようやくさっきまで余裕を見せていたヴァサゴの表情が変わった。ヴァサゴはジャックの残りの攻撃を避けてから距離をとる。

 頬を垂れる血を親指で拭う。

 

 「俺の力に追いついてきた……?」

 「ようやくそのニヤけた面を壊すことが出来たな」

 

 ジャックは再びヴァサゴとの距離を詰める。

 今度はヴァサゴのさっきまでのようにほとんど攻撃しないのではなく反撃をするようになった。ジャックが強くなったことにより互いにギリギリで避け合い、攻撃を読み合うほど互角の状態となった。

 

 そしてついにジャックの蹴りがヴァサゴの腹部を捕える。ヴァサゴの体がくの字に曲がり五メートルほど吹き飛ぶ。

 

 「なるほど、これはまずいな」

 「そろそろ終わらせる」

 

 ジャックはさらにもう一本インジェクターを取り出した。もう既に体は限界を迎えていて剥き出しになった機械パーツは所々配線がちぎれ火花が散っている。

 ジャックはインジェクターを体に押し付け、中の液体魔宝石を注入する。

 全身がひきちぎれる様な痛みがジャックを襲い、その場に膝をつく。それでもジャックは立ち上がる。

 

 「くっ……レベル、フォー……ス、適合……!」

 

 ジャックの姿が少しブレる。

 ヴァサゴがジャックの姿を確認できたのは目の前に来た時だった。

 ジャックの手に握られたナイフが何度もヴァサゴの体に突き刺さる。

 

 「バカな……俺よりも、強い、だと? ありえ、ない。こんなはずある訳が──」

 

 最後に首を掻き切りヴァサゴはその場に大量の血をまき散らしながら倒れた。

 

 「倒し、た……? は、はは……」

 

 ジャックはヴァサゴを倒したという事実を頭の中で処理できず数歩後ずさりし力なく尻もちをつく。

 

 「なんちゃって」

 

 嫌な声にジャックは飛び跳ねて声の発せられた方向から一目散に離れた。

 声のした方に立っていたのはヴァサゴだった。ジャックは一瞬何が起きているのか理解できなかったがその謎は目に入ったヴァサゴの死体で分かった。

 

 死体が全くの別人に変わっていた。

 

 「偽物だった……のか?」

 「いや、そこの死体も正真正銘ヴァサゴ、俺本人だ」

 

 ニヤリと笑うヴァサゴ。

 

 「俺は俺の魔力を持つ者の体なら乗り換えることが出来るんだ。ただ、適合率が悪いと力が弱まるんだがな」

 

 ヴァサゴは死体に近づき見下ろした。

 

 「こいつは人間の姿しか慣れないがそこそに適合率が良かったんだがそれでも負けたか。これでまともな体のストックはなくなったな」

 

 ベラベラと話すヴァサゴにさっきと同じ速さで攻撃を仕掛ける。しかし、さっきのようには攻撃が通らなかった。

 

 「まさか俺の人間の姿の時より強いとはな」

 

 ジャックの攻撃は悪魔じみた腕に変化した右腕に軽々と止められていた。

 

 「くっ!」

 

 止められたナイフは刃が握りつぶされ使いものにならなくなった。

 すぐさまにナイフを捨て、蹴りをヴァサゴに入れるがそれも安安と避けられ、放つ拳も止められる。

 

 ヴァサゴから離れようとするが拳を掴まれ動けない。そしてそのまま顔に三発、腹に四発、拳がめり込む。

 顔はほとんど機械パーツが露出し、腹からは無数の配線が赤茶色い液体を流しながら垂れ下がる。

 配線が切れた為かジャックの動きが急激に悪くなる。

 

 ジャックの拳を握りながらニヤリと笑いながらジャックの右脚を踏み潰す。

 

 「痛みなんてもう感じないくらいに壊れちまったか? それもと感覚センサーでも切ったか?」

 

 ジャックは音声の発することの出来なくなった口をパクパクと動かして何かを言おうとする。

 

 「そろそろ時間切れなんじゃないか?」

 

 ヴァサゴがそう言った瞬間にバチッと音がした。そして、ジャックは糸が切れたマリオネットのように倒れた。

 

 「あれだけ魔宝石を入れ込んでまともに機能し続けれるわけが無いな」

 

 ヴァサゴはジャックの拳から手を離し、帰ろうとしたその時、ぐんと何かに引っ張られた。

 振り返るとジャックがしがみついていた。

 

 「マタ……一矢報イテ、ヤッタ、ゼ……」

 「こいつ……!」

 

 ジャックはニヤリと残った人間の皮膚で笑う。そして核爆発クラスの大爆発が周囲を包む。

 凄まじい轟音が当たりを覆い、そしてその後に訪れる静けさは不気味なものだった。

 

 かなり離れた距離にいた遥達にまで衝撃が届いていた。そしてその衝撃で遥たちはジャックのことを悟った。

 

 「ん、ううん……」

 

 衝撃でさっきまで眠っていたミンディが目を覚ました。そして、急いで輸送機の窓にへばりついた。

 見えたのは大きなきのこ雲。

 

 「なんで……」

 

 ミンディの頬に涙がつたう。

 

 「なんで見殺しにしたんだ!」

 

 ミンディは遥の胸ぐらにつかみかかった。遥に言ったところで無駄なことくらいミンディも分かっていた。しかし、この怒りをぶつけるはけ口が欲しかった。

 

 「……すいません、俺が弱いばっかりに」

 

 遥の目には涙が溜まっていた。

 その顔を見てミンディはハッとした顔を見せ、悲痛な表情を浮かべる。

 

 「違うんだ、すまない。なんで……なんで……あたしじゃなくて……あたしの部下なんだ……なんであたしはこんなにも弱いんだ」

 

 ミンディはゆっくりと遥の胸ぐらを掴む手を緩め、ズルズルと膝をつく。

 嗚咽のみ聞こえる空間で音を立てないようにノエルが紫菀の裾を引っ張る。紫菀が振り返るとパソコンを見せてきていた。

 ビデオメッセージの通知が来ていた。宛先はジャックだった。

 

 「おい、ウジウジしてねぇーでとりあえずこれを見てみろ」

 

 紫菀はエンターキーを押す。

 

 『やぁ、これを見てるってことは私はもう破壊されたってことだと思う。なんてありきたりな始め方をしてみた』

 

 画面内のジャックが照れくさそうに笑う。

 

 『どうせ、ミンディさんや圭斗、隊長や薫那さんの事だから私が破壊されたら自分を責めるだろう。だからこのメッセージを残した』

 

 ジャックは自分の首にぶら下げたドッグタグを外し画面に近付けた。

 

 『どっちがが死ぬ時、ドッグタグを取る。圭斗がこの約束を覚えていたら私のドッグタグを持っているだろう?』

 「ああ、しっかりともろたで」

 

 画面内のジャックに圭斗は笑いかけ、首にかけたジャックのドッグタグに触れる。

 

 『そしてミンディさん、あなたは特に自分を責めるでしょう。だから気にするなとは言いません、代わりに世界をちゃんと生きて救ってください』

 

 ジャックは画面から一度離れなにか裏でゴソゴソと取りだしている。そしてもう一度席に着いた時、ハンドガンケースが握られていた。

 

 『これが私からミンディさんへのプレゼントです。見てください』

 「これじゃないかな?」

 

 マシロが少し重たそうにミンディの元まで運んできてくれた。

 中を開けるとジャックが肌身離さず持っていたハンドガンが入っていた。

 

 『このハンドガンは私の体内にあるエネルギー変換機能とチャージ機能が備わってます。ミンディさんの薬を使った力を吸い取り強力な弾丸が打て、薬の副作用も大幅にカットできるでしょう』

 

 ハンドガンケースを開け、中のハンドガンを取り出して手に取るとミンディの化け物とかした手足がおかしな模様は少し浮きでているが元に戻った。

 

 『おーい、ジャック! 早く行くぞ!』

 

 車の外からなのかミンディの声が入っていた。


 『あれ? 遅いと思ったらジャックそれ何してんねや?』

 『映像で記録を残してるんですか?』


 様子を見に来た圭斗と遥が不思議そうに画面を除く。


 『まぁ、そんなところです。すぐに向かうんで先に行っておいてください』


 圭斗と遥が外へ出るガチャンという扉が閉まる音がした。


 『隊長と薫那さんはきっと世界を救えます。あと、圭斗とミンディさんは無茶ばかりするので迷惑ばかりかけてしまうかもしれませんがよろしくお願いします』


 録画停止ボタンに触れる。


 『世界を救ってください』

 

 ここで映像は終わった。

 映像が終わると同時にミンディはハンドガンを抱きかかえ大きな声で泣きじゃくった。


 「ノエル、作戦報告書にはこう記載してくれ」

 「なんて書くの?」

 「魔導書はヴァサゴに奪われたがジャックの活躍により四名の命が助けられた。彼は再び英雄となった、てな」

第83話『英雄再び』を読んで頂きありがとうございます。

第84話は12月14日に投稿するのでよろしくお願いします。

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