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第82話『復活』


 ミンディの前に立つ頼もしい四人の背中。最愛の友、最愛の隊長、最愛の弟子、ミンディは込み上げてくる熱いものをぐっと飲み込みこらえた。

 

 「さっきまでよりかなり数が増えてる気がするんやけど気のせいか?」

 「いえ、気のせいじゃないでしょうね」

 

 少しばかり面倒くさそうに呟いた圭斗に遥は律儀に答える。

 

 「師匠はサポートに徹してください」

 

 薫那がそう言うとミンディは鼻で笑った。

 

 「おいおい、弟子が師匠の前に立って戦うなんて随分と偉くなったものだな。あたしは修復されて無傷なんだよ」

 

 遥たちの横に立つミンディ。

 

 「でも、その手と足が……」

 「何ちょっとしたパワーアップだ。元々覚悟は出来ていたからどうって事ない」

 

 ミンディは化け物じみた禍々しい左腕を眺める。覚悟は出来ていたと言ってもその表情は少し悲しげだった。

 

 「それに戦闘ならこっちの方が強いぞ?」

 

 ミンディがそう言った次の瞬間、近ずいてきていたアンデッドが飛びかかってきた。

 ミンディは左手でアンデッドの顔面をつかみ握りつぶした。指の隙間から飛び散る肉片に遥たちは唖然とした。

 

 「な? クリーチャーに近づいてきてるだけあってなかなか強いだろ?」

 「分かりました……でも、絶対に無茶はしないでください。それとあの薬もこれから先二度と使わないでください」

 「はぁ、分かったよ」

 

 釘を刺す遥にミンディは少し面倒くさそうにしながら適当な返事を返す。

 

 「ざっと三〇〇程度いますね」

 

 ジャックが呟く。

 

 「確かに多いかもしれへんけどこの五人ならなんの問題もあらへんわ」

 「そうそう、圭斗の言うとうりだ」

 「それじゃあ、アンデッドの殲滅を開始する!」

 

 遥の掛け声を合図に銃を構えるジャックと圭斗と薫那。遥とミンディはアンデッドとの距離を詰める。

 

 三人で背中合わせになりながら死角をなくしアンデッドの眉間に穴を開けていくジャックと圭斗と薫那。

 遥は剣を振り、炎で身を焼く。ミンディは禍々しく変化した左腕と右脚を使い一撃でアンデッドの体を破壊する。

 

 「だいぶ順調やな!」

 「圭斗! まだ油断するな!」

 

 戦闘を開始して十数分で既にアンデッドの数は三分の一程にまで減っていた。

 

 「二人とも私が魔術を使うから一箇所にアンデッドを集めてくれない? 一気に数を減らしたい」

 「分かった。任しとき!」

 

 圭斗の軽快な返事と一緒にジャックも頷く。

 薫那は魔導書を開き詠唱を始める。接近することを止めないアンデッドの群れの足元に巨大な魔法陣が展開される。

 

 圭斗とジャックは移動しながらアンデッドを撃ち続け一箇所に集めていく。

 魔法陣の中に三〇を超えるアンデッドが入ったタイミングで薫那は掲げた手を下ろした。

 

 魔法陣からは無数の黒い腕が飛び出しアンデッドたちに絡みつきアンデッドの体を引き裂いた。

 

 「かなり数は減ってきたな」

 

 一度、薫那と圭斗とジャックと合流した遥が肩で息をしながら呟く。

 既にアンデッドの数は一〇〇を下回っていた。

 遥が残りのアンデッドを焼き払おうとした時、謎の飛行物体が空から飛んできて地面にいるアンデッドを蹴散らしながら着地した。

 

 立ち込める砂埃で姿が見えない。砂埃の中で揺らめく人影が遥に一瞬で急接近。

 砂埃の中からは一人の男が姿を現し遥をじっくりと眺める。

 

 「久しぶりだな、遥にとっては初めましてか? だが、この顔に見覚えはあるんじゃないのか?」

 「拓……哉……!」

 

 目の前に現れた拓哉。つまり、ヴァサゴが目の前にいるということになる。

 

 「嘘……まだ出てこれるまで時間があったはずなのに……どうして……?」

 「簡単な話だ。楓華が予測していたよりも俺が強かったってわけだ」

 

 驚きの声を漏らした薫那にグイッと顔を寄せてニヤリと笑いながらヴァサゴは魔導書に手を伸ばし手に取った。

 

 「こいつは頂くな」

 

 ヴァサゴは遥達に背を向けて歩き出す。

 

 「ま、待て!」

 

 ここでようやく遥はハッとして声を出す。

 

 「あ、そうだ。邪魔な奴らにはもう死んでおいてもらおうか」

 

 振り返ったヴァサゴは魔法陣を展開し、砲撃を放つ。紫の禍々しい光を放つ砲撃は一直線に進む。

 しかし、当たる直前にその砲撃は遥でもなく、薫那でもなく、ミンディでもなく、ジャックによって防がれた。

 

 両手で砲撃を受け止めるジャック。両腕の皮膚は一瞬で焼け溶け、骨が露出する。

 

 「ジャック! 何をしてるや! 死んでまうぞ!」

 

 圭斗が叫ぶがジャックは聞く耳を持たない。雄叫びをあげるジャック。すると、受け止めるジャックの腕に砲撃がどんどん吸収されていく。

 そして砲撃は止まった。そしてその吸収した砲撃をエネルギーに変換しヴァサゴに拘束魔法を使い、動きを止めた。

 

 「ジャックさん……その腕……」

 

 ジャックの腕は人間の腕と皮膚が熔けた顔の一部は人間ではなく機械で作られたものだった。

 

 「すみません……説明している時間はあまりないんです。早くここから逃げてください」

 「なんやその言い方、ジャックは一緒に逃げへんのか? そんな許すと思ってんのか?」

 「そうだ、そんなの私も許さない」

 

 ミンディと圭斗は怒りを顕にしながらジャックに詰寄る。

 

 「ここにいる全員で戦っても勝てる相手じゃない! だが、こんな所であなた達のような希望を失う訳にはいかない!」

 

 いつも落ち着いていたジャックが珍しく声を荒らげ、ミンディと圭斗は少したじろいでしまった。

 

 「隊長、生きてください」

 

 ジャックは遥を見て微笑みながら言う。

 

 「ダメだ……俺たちは誰も見捨てない。全員で生きて世界を救うんだ……」

 「それは出来ません。この戦いはそんなに甘くありません。それに私は機械です、仲間ではなく道具です」

 「そんなの……割り切れるわけないじゃないですか」

 

 涙を流す遥。

 

 「ただの道具ならなんでさっきは俺の指示を待たずにミンディさんを助けに行ったんですか」

 

 ジャックは車を戻した時、遥がミンディを助けにくるを戻すよう指示する前に車を戻していた。一度助けられないと判断していたにもかかわらず。

 

 「それはミンディさんは死ぬべきでないと再判断したためです」

 「俺は──」

 

 なにか言おうとした遥を止めたのは圭斗だった。遥は悲痛な顔をし、言葉を失う。

 

 「後にも先にもお前ほどの親友はいないよ」

 

 そう言って圭斗はジャックの付けたドッグタグを取り、首にかけた。

 

 「……じゃあな、親友」

 

 圭斗は涙をこらえて別れを告げる。

 

 「私は嫌だ……」

 

 俯いたままミンディは消えそうな声を出す。

 

 「ミンディさん……ここに来てわがまま言わないでください。何が最善かわかってるはずです」

 「うるさい! あたしは圭斗とジャックのリーダーだ! リーダーの言うことは聞け!」

 

 駄々をこねる子供のように声を荒らげる。

 

 「今の隊長は遥です」

 「言うことを聞け……仲間を失うのは嫌なんだ……頼む、お願いだ……」

 

 額をジャックの胸に当て懇願する。

 

 「随分と感動的だなぁ」

 

 拘束を剥がしたヴァサゴがニヤニヤと笑いながらゆっくりと近づいてきた。

 

 「クソ、もう拘束を解いたのか。あとはお願いします、隊長」

 

 ジャックは走り出す。

 

 「待て! ジャック! ふざけるな! あたしの話はまだ終わってないぞ!」

 「ミンディさん!」

 「師匠!」

 

 ミンディを遥と薫那が押さえつける。

 

 「圭斗さん! 車を!」

 「薫那! 遥! 離せ! ジャックを見捨てるのか! ジャック! 戻ってこい! ジャック!」

 

 暴れるミンディを無理やり車に乗せる。車の中でも暴れ続けるミンディ。

 

 「薬を渡せ、遥!」

 

 薫那を振り払い遥に飛びかかり薬ビンを奪おうをする。遥はミンディの左腕を抑えるの精一杯の状態。しかし、突然ミンディの力が無くなり遥に向かって倒れ込む。

 

 そこには運転していたはずの圭斗が注射器を持ってたっていた。

 

 「戦場で大怪我した時に使う強力な睡眠薬や。ミンディさんはそのまま寝かしてやってくれ」

 

 そう言うと圭斗は一度停めた車を再び走らせた。

 

 走り去って行く車を見てジャックはふっと息を漏らす。そして、覚悟を決めてヴァサゴを見る。

 

 「あーあー、可哀想に機械の道具は見捨てられて当然ってか?」

 「いや、私がお前を華やかに倒すための舞台作り協力してもらっただけだ」

 

 ヴァサゴの挑発的な質問にニヤリと笑いながら答える。

 

 「ジャック、とか言ったな。その目……どこかで見た気がするんだがなぁ」

 

 オーバーな身振り手振りをつけて喋るヴァサゴ、じっとジャックの顔を見てはっとした表情をする。

 

 「思い出した! 久しぶりじゃないか。また俺と一緒に爆発するか? ジャック·クラーク」

第82話『復活』を読んでいただきありがとうございます。

第83話は11月30日に投稿するのでよろしくお願いします。

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