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第08話『成長』


 「だぁもう! 全く当たる気がしねぇ!」

 

 今日の訓練が終わり汗だくのまま健司は駄々をこねるように言葉を吐き捨てて仰向けに倒れ込む。

 ボスは仕事があると言って今日はすぐに訓練所を出て行ってしまっていた。

 

 「俺たちの動きはだいぶ良くなってるんだけどな。これだけ体がイメージ通りに動くのはやっぱ悪魔の遺伝子が関係あるのかな?」

 「さぁな、俺は遥みたいにそういうことに関する頭はちと弱いからな」

 

 健司は横に座る遥を見て笑ってみせる。

 

 訓練が始まって三週間が経過した。

 毎日筋力トレーニングをした後にボスにクリーンヒットを当てるため何時間も追いかけ回しているが二人の攻撃は当たるどころかかすりもしない。

 

 「なぁ健司、俺たちは現状半分以上悪魔になってる訳だけどさ」

 「なんだ? 今更人間じゃなくなったことがショックだったのか?」

 

 健司の言葉に軽く吹き出して「まさか」と笑い飛ばして見せた。

 

 「見た目が変わってないのに半分以上悪魔になったなんて実感わかねぇよ」

 「それもそうだな。それで何を言おうとしたんだ? ボスに攻撃を当てる作戦か?」

 「近いと言えば近いな。この三週間である仮説を作ってみた」

 

 難しそうな内容を遥が話そうとした瞬間に健司の顔が嫌そうに変わる。しかし、遥はそんな健司の顔などお構い無しに続ける。

 

 「悪魔の遺伝子によって俺たちの身体能力は異常と言えるレベルになっているのは分かるよな?」

 「それはボスを追いかけ回している時になんとなく感じた。パワーはまだピンと来ないがスピードは一目瞭然だった」

 

 健司は横になっていた体を起こしストレッチをしながら遥の話を聞き続ける。

 

 「そして悪魔の遺伝子は多分だけど戦いに長けた遺伝子なんだと思う」

 「戦いに長けた遺伝子?」

 「そう、俺達がボスの動きに多少なりともついていけるのもそれが理由だと思うんだ」

 

 遥が熱弁しているところ健司はぽかんとした表情になっていた。それを見た遥は一度咳払いをし、落ち着いて説明を再開した。 

 

 「つまりだな。悪魔の遺伝子を持つことで脳のイメージ通りに体が動きやすくなっている。さらにそれは戦えば戦うほど良くなっていく」

 「ほうほう、それでボスに攻撃を当てる方法は一体なんなんだ?」

 

 遥は立ち上がりポーズをしてみせる。そのポーズはボスが訓練中に良く見せる構えだった。

 

 ボクシングのデトロイトスタイルによく似た右手を頬の近くにし左手のガードを下げ前に出した左足に体重を載せる構え。

 

 「これだ」

 「ボスの構えがどうしたんだよ」

 「ボスの動き全てを真似るんだよ。イメージ通りに動けるならボスの動きを真似るのが強くなる一番の近道だと思うんだ」

 

 ニヤリと笑う遥を見た健司もつられて笑みをこぼし、多少は体力の戻った体を立ち上がらせる。

 

 「だったらボスのモノマネを早速始めてみるか? いつもボスがやってるサンドバッグのやつ」

 「健司が乗り気になってくれて嬉しいよ」

 

 二人はサンドバッグの前に立つ。

 二人でサンドバッグを相手に拳や脚を打ち込み続けていたボスの姿を思い出す。

 ボスの流れるような足さばきを真似る。弾丸のように放たれる拳に似せる。刃物のように切れ味のいい蹴りを模倣する。

 

 それから毎日の訓練ではボスの動きを見続け、訓練が終わりそれを思い出し真似る。

 

 そんな生活を二ヶ月続けた。

 

 健司と遥はこの頃にはボスの動きを寸分狂わすわに真似ることができるようになった。

 そしてついに二人の攻撃がボスを追いつめ、健司の攻撃でバランスを崩したボスの頬にクリーンヒットとまではいかないが遥の攻撃が当たった。

 

 「……いま、当たったのか?」 

 「うん……たぶん……」

 

 二人が顔を見合わせながら動きを止める。

 

 「「よ、よ、よっしゃー!」」

 

 思いっきりガッツポーズをキメる。

 

 ボスは拳がかすった頬に触れ、健司と遥のこの二ヶ月の間での凄まじい成長速度に驚いていた。

 

 「私の予想を遥かに上回る成長速度……やはり楓華が見込んだだけのことはある二人だ。もう悪魔の遺伝子の特性を理解しているとはな」

 

 悪魔の遺伝子は遥が予測した通りで相手の動きを真似ることに長けていたり、イメージ通りに動きやすくなる。

 健司と遥はノリノリのまま再びボスに組手を挑もうとするがボスはそれを止める。

 

 「お前達に筋力トレーニングや組手に続いてもう一つ新しい訓練をしてもらう」

 「新しい特訓ですか? でも、俺達まだボスにちゃんと攻撃を当てれてませんし」

 

 健司はさっき攻撃をかすめるまでの動きを体が忘れる前に組手を始めたいのか少しソワソワしている。

 

 「いや、元々攻撃をかすめることが出来たら別も事もしようと考えていたんだ」

 「それで新しい訓練ってなんなんですか?」

 

 遥の質問と同時にボスの周囲に強大かつ高密度な魔力が放たれる。

 健司や遥がボスによって無理やり引き出された魔力とは天と地ほどの差があるのが一瞬でわかってしまう。

 

 「新しい訓練は、魔力操作だ」

第8話読んでいただきありがとうございます。

第9話は24時から25時までに投稿しますのでよろしくお願いします。

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