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第75話『蛇の魔導書』


 ピラミッドの呪いによりピラミッド内に入れば三十分程度で一日が終わってしまうため三ヶ月に一度の補給をあっという間に二度も済ませてからもう二ヶ月も経過していた。

 

 「もう八ヶ月も経過したのか……」

 「三十分間ピラミッド内を走り回る探索初めて約八ヶ月そこそこ内部の構造もわかってきたんとちゃいますか?」

 「ボス達が新たに場所をつきとめた魔導書はどうなったのかしらね」

 

 遥と圭斗が薬を作っている薫那と話しているとミンディとジャックか深刻そうな顔でボスからの通信から戻ってきた。

 

 「ボスからの報告はなんだったんですか?」

 「新たに見つけた魔導書の反応が突如消えたみたいだ。そして、そこでボスとビリーさんと増援を待っていた隊員六名が皆殺しにされた」

 「な……!? それってヴァサゴに魔導書を取られたってことですか?」

 「そういうことになるな」

 

 遥は大きなため息をつく。

 

 「六人も死んだんですか?」

 「はい」

 「誰が殺したかは分かりますか?」

 

 ジャックは無言で首を横に振る。

 

 「ただ分かってるのがこの二人の仕業じゃないってことだけだな」

 

 ミンディが二枚の写真を机の上に置いた。その写真には一枚は痩せこけた長髪の男、もう一枚は清潔でオシャレな紳士だった。

 

 「この二人は?」

 「ボスに頼まれ色々調べた時に撮った写真だ。ガリガリの男がグロウス、紳士のようなやつが獅郎、獅郎は健司が一度戦ったとボスから聞いてるが」

 「なぜこの二人じゃないと思ったんですか?」

 

 遥が写真を眺めながら尋ねる。

 

 「殺し方が違うんだよ」

 「殺し方なんかで確実に特定できるものですか? その時々で変わったりもするんじゃ」

 「確かにそうなんだが今回はあまりにも違いすぎるからな」

 「……いったいどんな殺し方だったんですか?」

 

 ミンディの表情が暗くなる。

 

 「溺死です。ジャングルの奥地にあって水場も多くない場所にも関わらず」

 

 なかなか言い出さないミンディの代わりにジャックが口を開いた。

 

 「水系の魔法ってことか」

 「多分そうでしょう。しかし、問題はそこではないんです」

 「問題ではないとは?」

 

 ジャックはゆっくりと話せるように全員分コーヒーを用意して席に座った。

 

 「対魔法の訓練を積んできた精鋭六人を溺死させるほどの水魔法。これは相手側に魔導書を使うことが出来る者がいると考えてもいいということです」

 「敵の中にヴァサゴ以外の悪魔がいるってことですか?」

 

 ジャックは難しい顔で頷く。

 その姿を見た遥は大きなため息をついて暑そうな太陽がジリジリと地面を温めているのを眺める。

 

 「薫那、薬はどれくらいで完成する?」

 「あと一週間ってところね」

 「一刻も早く魔導書を手に入れよう」

 

 魔導書を一冊手に入れるのに八ヶ月もかかっていることに焦りが見え始めていた。

 情報交換をしていた紫菀達ももうすぐ魔導書を回収することができるみたいたがこのペースが早いのか遅いのかは分からなかった。

 

 それから一週間がたち、ピラミッド内の時間の流れを狂わせる呪いに対抗するための薬が完成した。

 

 「この瓶に入っている液体を一人一本づつピラミッドに入る直前に飲んでください。半日は呪いは打ち消されるわ」

 

 薫那は完成した薬を小さな小瓶に入れ全員に渡した。青っぽい小瓶の中には明らかに黒ずんだ緑色の液体が入っている。

 

 「ただ、死ぬほどまずいわよ?」

 「あー、ちなみに何系の不味さだ?」

 

 恐る恐る聞く遥に薫那はニヤリと笑う。

 

 「さぁね、その人が一番不味いと感じる味になるわ。大体は苦いらしいけどね」

 「なんでそんな罰ゲームみたいな要素が追加されてんや。普通には作れんかったんか?」

 

 圭斗は眉をひそめながら小瓶を眺める。

 

 「本当は味を無味無臭にする方法があるのよ。でもそんな高等技術が私に出来るわけなじゃない、できるのなんてヒツギくらいよ」

 

 薫那の言葉に全員ため息をつく。しかし、いつまでもこんな所で止まっている訳にもいかない。

 

 ピラミッドの入口の前で全員は一度顔を見合わせ、びんの蓋を取り、中の液体を口の中へと流し込む。

 

 「あ〜ッ! んだよコレ! 滅茶苦茶にげぇ!」

 

 ミンディ、圭斗、薫那も遥と同様に死ぬほど苦かったらしく悶えているがジャックただ一人がプルプルと震えている。

 苦味に悶えていた四人が心配そうにジャックの様子を伺う。すると、ジャックの綺麗に剃られたスキンヘッドから大量の汗が吹き出てきた。

 

 「あ〜ッ! 舌が! 舌が焼ける! 辛い! 超辛い! 水水!」

 

 遥と薫那は慌ててジャックに水を渡し、ジャックは口内を濯ぐように水を飲み、ようやく一息ついた。一息つくまで悶えるジャックを見て遥と薫那とは違い圭斗とミンディは腹を抱えて大爆笑していた。

 

 「あぁ、まだビリビリする」

 「不思議なこともあるんですね。辛いって味覚じゃなくて痛覚なのに」

 

 少し感心するように薫那は呟く。

 

 「ま、まぁ……薬も飲んだことですしそろそろ中に入りましょうや」

 

 圭斗の言葉に全員軽く頷いてピラミッドの中へと入って行く。半年以上の月日をかけて捜索したこのピラミッドで迷うことなどあるはずもなく、魔導書の位置もほとんど特定出来ていたためどんどん進んでいく。

 

 「そういや魔導書を見つけたとしてそんな簡単に持ち出せるのか?」

 「ここまでの迷路と時間の流れが狂う呪い、これ以上は無いと思いますが」

 

 ミンディのボヤキにジャックは適当に答えたが遥は「それはありえませんよ」と間髪入れずに否定した。

 

 「なぜそう思うんですか?」

 「もしも、迷路で今の俺たちみたいに一切迷わずに魔導書までたどり着いたとしても一時間。この間に水分や食料をある程度補給していれば呆気なく魔導書を取られてしまいますから」

 

 話している途中に大きな扉が現れた。

 

 「だからこの中に魔導書を守る何かが必ずあると考えるべきです。それに呪いで死なれても持ち出された魔導書を回収する必要もありますから」

 

 そう言いながら遥は力いっぱい扉を押すと扉が至る所に擦れる地鳴りのような音が辺りに響く。

 

 扉の向こうは天井も高く広々としていた。この場所だけ見れば誰もこれがピラミッドの中とは思わないだろう。

 

 「よくもまぁこんな目立つ置き方してくれるわ。これじゃまるで取ってくれって言ってるみたいなもんやないか」

 

 部屋の真ん中にある台座の上に一冊の本が置かれている。それは予測通り蛇の絵が描かれた魔導書ネクロマンサーズだった。

 

 「取りますか?」

 

 ジャックに聞かれるが遥は即答できず唸りながら考える。それもそのはず、これほどまでに取ってくれと言わんばかりの配置の魔導書を見れば誰だって罠だと思う。

 

 「この状況で迷っていても仕方ないだろ? 何か起きたらその時に対処すればいい」

 

 ミンディに後押しされ遥は恐る恐る魔導書に近づき台座に置かれる魔導書を手に取った。

 全員が身構えて周囲を警戒する。しかし、何かが起こる気配は全くない。

 

 全員が安堵のため息を漏らす。

 

 「なんや、身構えて損したわ」

 

 圭斗がそうボヤいた次の瞬間、轟音が広い部屋に響き渡る。

 目の前に体長十メートルは超えているであろう巨大なゴーレムが目の前に現れた。

 

 「どうやらピクニック気分で終わらせてはくれないみたいだな」

 

 ミンディは皮肉な笑みを浮かべる。

第75話を読んでいただきありがとうございます。第76話『猿の魔導書』は8月24日に投稿するのでよろしくお願いします。

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